「要保護児童対策地域協議会(子どもを守る地域ネットワーク)スタートアップマニュアル」の公表について
平成19年5月18日
(照 会 先)
厚生労働省雇用均等・児童家庭局
総務課虐待防止対策室
室長補佐 川鍋 慎一(内7797)
調整係長 小島 裕司(7797)
代 表 03-5253-1111
直 通 03-3595-2166
「要保護児童対策地域協議会(子どもを守る地域ネットワーク)
スタートアップマニュアル」の公表について
平成16年の児童福祉法の改正により、虐待を受けた児童などに対する市町村の体制強化を固めるため、関係機関が連携を図り児童虐待等への対応を行う「要保護児童対策地域協議会(子どもを守る地域ネットワーク)」(以下「地域協議会」という。)の設置を進めています。
その結果、地域協議会等のネットワークの設置は急速に進み、本年3月末で約85%の市町村に設置されたところです。
しかしながら、「地域協議会の具体的な運営方法がわからない」といった戸惑いの声も見られるため、今般、厚生労働科学研究「市町村及び民間団体の虐待対応ネットワークに関する研究」(*)において、新たに地域協議会をスタートしようとする自治体の関係者を念頭に、地域協議会の設置によって何が変わるのか、どのように運営していけばよいのかなど、地域協議会の設置・運営に当たり、まず必要となる知識、ノウハウなどをとりまとめたマニュアルが作成されました。
つきましては、厚生労働省としまして、地域協議会の設置促進及び機能強化を図るため、地方自治体に対し、本マニュアルを周知してまいります。
* 厚生労働科学研究「市町村及び民間団体の虐待対応ネットワークに関する研究」は、研究者:加藤曜子(流通科学大学教授)、研究協力者:安部計彦(西南学院大学准教授)らによって実施。
「要保護児童対策地域協議会(子どもを守る地域ネットワーク)スタートアップマニュアル」
1~12ページPDF(PDF/250KB)、 13~16ページPDF(PDF/495KB)、 17~32ページPDF(PDF/473KB)、
33~49ページPDF(PDF/497KB)、 50~64ページPDF(PDF/485KB)、 65~80ページPDF(PDF/503KB)、
81~87ページPDF(PDF/289KB)、 全体版PDF(PDF/2,989KB)
(マニュアルの概要)
- 「地域協議会」の設置によって、何が変わるのか。
- どういう手順で「設立」し、「運営」していけばよいのか。
(1)設立まで
(2)設立後当初
(3)1年目
(4)2年目
(5)3年目以降
要保護児童対策地域協議会(子どもを守る地域ネットワーク)
スタートアップマニュアル
本マニュアルは、厚生労働科学研究「市町村及び民間団体の虐待対応ネットワークに関する研究」(※)において、新たに「要保護児童対策地域協議会(子どもを守る地域ネットワーク)」(以下「地域協議会」という。)をスタートしようとする自治体の関係者を念頭に、地域協議会の設置によって何が変わるのか、どのように運営していけばよいのかなど、地域協議会の設置・運営に当たり、まずは必要となる知識、ノウハウなどをとりまとめたものである。
なお、この地域協議会は、児童虐待への対応の最前線に立つ市町村の中核となる組織であり、その運営の在り方次第で、地域における子どもたちの安全と幸せが大きく左右されることが考えられる。
このため、本マニュアルが、これから地域協議会を立ち上げようとする自治体、どのように運営すればよいのか戸惑っている自治体等の関係者の方々にとって、参考となれば幸いである。
* 厚生労働科学研究「市町村及び民間団体の虐待対応ネットワークに関する研究」は、研究者:加藤曜子(流通科学大学教授)、研究協力者:安部計彦(西南学院大学准教授)らによって実施。
地域協議会の設置によって、何が変わるのか。
地域協議会が設置され、機能することによって、次のような変化が期待される。
(1)早期発見・早期対応
- 子育て支援にかかわる機関連携が向上することで、学齢期前(新生児・乳児期・幼児期)など早期の段階での児童虐待の発見が増える。
- 子どもの安全への認識が深まり、予防的対応がとりやすくなる。
- 地域協議会に関する事務を総括する「要保護児童対策調整機関」(以下「調整機関」という。)に児童虐待等の情報が集約されるため、関係機関の連携した対応がスムーズになるとともに、ケースのたらい回しや放置がなくなる。
- 関係者が定期的に顔を合わせることでお互いの機能を知り、「気になるレベル」でケースを紹介しあうことで、虐待が深刻化する前に関係者間で対応が図られる。
(2)関係機関の連携
- 関係機関のメンバー同士が顔見知りになり、相互理解が図られることで、ケースの押し付け合いがなくなり、役割分担を決めつつ、協力しながら支援を行うことができる。
- 関係機関が連携することで、「『別の機関に紹介したから大丈夫、相手機関が動いているはず』など、思い込みや期待で安心し、事実を確認しないまま結局どの機関もかかわっていなかった」といった事態を防ぐことができる。
- 同じ事例を複数の機関が個別に対応していたのでは、情報の共有や連携を図りながらの対応は難しい。しかし、各機関は、子どもの安全を願う目的が同じであるため、地域協議会を通じてつながりが強化され、連携の取れた対応を図ることができる。
- 関係機関が集まって情報交換することで、多方面からの情報を基に、多角的・総合的にケースの理解や援助方針が検討できるようになり、適切な支援が可能となる。
- 他の機関と連携することで子どもや家庭の状況の把握や理解が深まり、援助の質をあげることができる。
- 子どもが施設に入所中であっても、地域の関係機関に児童相談所から情報を伝えることで、帰省中の見守りが行われたり、家庭引き取りに向けての地域の体制づくりや家族への援助を行うことができる。
(3)担当者の意識変化
- 担当者一人だけがケースを抱え込むという危険性や過重な負担が生じるといったことがなくなり、関係する機関全体で問題を共有することができるようになる。
- 他の機関と協働して同じケースにかかわることで担当者の不安や孤立感が減り、「仲間」としての連帯感が生じる。
- 児童虐待等の要保護児童に対する認識が高まり、児童虐待等への対応の温度差がなくなり、重症度、危険度が高いケースへの対応が早くなる。
- 地域協議会の実務者会議等のメンバーは、多様なケースとその対応を検討することによって能力が高まり、それぞれの所属機関においての虐待対応の指導的役割を担う意識が生まれ、各機関における児童虐待への対応力が高まる。
- 援助を行うケースが多くなると、経験の積み重ねや各機関の役割がわかり、相談への対応力が向上する。
- 長期的な支援が必要なケースについて、以前は児童相談所での 対応や施設入所等での解決を望むことが多かったが、関係機関 が連携して対応することにより、地域(市町村)レベルで支援 可能なケースが増加する。
どういう手順で設立し、運営していけばよいか。
(設立まで → 設立後当初 → 1年目 → 2年目以降)
1.『設立』まで
1) 「虐待防止ネットワーク」が存在せず、直接、新たに「地域協議会」を立ち上げる市町村
(1) 調整機関及び構成メンバーを決定する
- 市町村内部において、児童相談所や関係する機関から児童虐待等の対応についての意見・考え方を聞くなどして、児童虐待等の現状認識を深めるとともに、地域協議会の設置の必要性と動機付けを高める。特に保健部門と福祉部門との足並みをそろえることが重要である。
- 調整機関となることが予定されている組織は、市町村の教育、福祉、保健担当部局のほか、関連する部局や児童相談所の参加により設置検討会議を開催し、地域協議会設立への理解を得るとともに、市町村内部の関係部局や児童相談所と継続的に連携が図られるような体制づくりを目指す。
- 調整機関の職員については、関係機関相互のコーディネートを行うことから、常勤の専任職員の配置が望ましい。また、児童相談所OBなど児童福祉司の資格を有する者のほか、保健師、保育士の専門職や家庭相談員などを専任職員として相談部門に配置すると同時に、予算獲得や事業の企画、庁舎内の調整、広報、研修会開催などの業務を担当する行政職の両方を配置することが望ましい。
- 教育や警察との連携強化を図るため、人事交流等を活用し、調整機関に教育委員会の指導主事などの職員を配置することも考えられる。
(2) 調整機関内で、運営のあり方について検討を行う
- 地域協議会で取扱う対象範囲については、児童虐待のほか、非行、配偶者からの暴力(DV)なども想定される。設立当初は、児童虐待から始めるとしても、地域協議会の展開状況等を見極めながら、その対象範囲の拡大も検討する。
- すでに立ち上がった他の自治体の要綱を取り寄せるなど、幅広く地域協議会の設立や運営についての資料を収集するとともに、活動方法や効果についても調べる。
(3) 関係機関に参加の呼びかけを行う
- 選定された関係機関には、まず、各機関の代表者に調整機関の担当主管課(室)長と担当者で共に出向き、地域協議会の意義、役割などの説明を行い、地域協議会への理解を得ながら参加の要請を行う。
なお、特に実務者会議メンバーにおいては、事例の検討、ケース管理等も行うため、児童虐待等の対応に関する知識や経験があり、かつ、積極的に取り組んでいただける方の参加が望ましい。 - 関係機関の参加の呼びかけに際し、地域協議会の守秘義務等の説明を行い、地域協議会への理解を図るとともに、地域協議会への情報提供の協力についても要請を行う(医療機関関係者や保健師など)。
(4) 要綱を作成し、公示する
- 「要保護児童対策地域協議会設置・運営指針」に基づき、関係機関と協議、調整を行い、設立運営要綱等を文書化、制度化しておく。また、地域協議会を設立した時は、必ず公示を行う。
(5) 都道府県(児童相談所)との連携を図る
- 都道府県から、すでに立ち上がっている他の市町村の要綱等の資料提供を受けるとともに、積極的に地域協議会の設立や運営方法に対する助言・指導を受ける。
- 都道府県が実施する研修に積極的に参加するとともに、都道府県が作成したマニュアル等を活用する。
- 児童相談所から専門家の派遣・配置などを受け、各会議の運営や具体的な事例の見立て等について助言・指導を受けて、地域協議会のレベルアップを図る。
(6) 運営に関し、関係機関への周知徹底を図る
- 児童虐待等の事例が発生した場合、「これぐらいの案件なら、私の機関だけで大丈夫」と判断せず、地域協議会の調整機関に連絡(通告)し、情報を共有しながら協力して対応することの意義を徹底する。
- 地域協議会の守秘義務等を説明し、児童虐待等の事例について、「どこまで話をしていいのか」という不安を解消する。逆に、守秘義務に違反した場合の罰則等についても説明しておく。
- 実務者会議メンバーにおいては、事例の検討、ケース管理等も行 うため、児童虐待等の対応に関する知識や経験があり、かつ、積 極的に取り組んでいただける方の参加が望ましい。
- 個別ケース検討会議メンバーにおいては、ケースの事情がよく分かっている担当者と、判断にある程度責任が持てる人(係長レベル)の参加が望ましい。
- 地域協議会の意義、役割、業務等について、各機関の構成員のすべてに周知してもらい、個別ケース検討会議への参加を要請された場合には、すぐに個別ケース検討会議へ参加できるようにしておく。
(7) 開催方法、頻度を決める
- メンバーの勤務状況等を考慮しながら、開催日を決定することが望ましい。特に、実務者会議においては、地域協議会設立時に開催日時を決めておく方法が良い。(例えば、毎月1回、第4水曜日・15時~など)
- 代表者会議
- 参加人数が多い一方で、開催頻度が少なく、代表者が替わる可能性も高いため、毎回開催前に参加依頼を兼ねて調整機関の担当者が出向き必要な説明を行うなどにより、積極的な参加を求める。
- 代表者会議を有意義な会議とするために、例えば、参加各機関の取り組みを各機関ごとに説明していただくことにより、参加機関相互の理解を進めることができる。
- 例えば、他地域で発生した重大事例と同様の事例が当該地域で発生した場合を想定し、その対応策の検討などを議題に加えることにより、代表者にも当事者意識を持たせることができる。
- 実務者会議でまとめられた政策提言などについて審議するほか、あらかじめどういったことを議題としたいのかなどのアンケートをとり、それを協議事項としたり、各機関の困っている点や要望などを話し合うことも一案である。
- 実務者会議
- 月一回程度、関係機関が出席しやすい時間を設定することが望ましい。場所については、保健センター会議室、福祉事務所会議室などが想定される。
- 対象ケース数が少ない地域では、実務者会議と個別ケース検討会議を一括し、実務者会議において全てのケース を検討しても差し支えない。
- 毎月開催する実務者会議は、新規事例と「見守りケース」などを中心に、経過の確認が主な目的である。
- 実務者会議では、児童相談所の積極的な関わりが必要である。特に、児童相談所と市町村の調整機関等が、定期的に(例えば3か月に1度程度)、この実務者会議等を利用して、ケースの進行状況の突合を行うなど、連携を密にした対応が必要である。
- 人口が10万人を超える市では、実務者会議は、人口5~8万人を目安に地域ごとに会議を分けて開催することが望ましい。
- 個別ケース検討会議
- ケースごとに所要時間は異なるが、新規ケースは十分な時間が必要である。場所は、放課後の学校の会議室、保健センター、病院、子育て支援センターなどが想定される。
- 調整機関は、関係機関の出席調整、当日の記録、役割分担の確認、記録の整理と配布(役割分担を明示)、定期的な見守りや援助状況の確認、統計処理などを担当するほか、個別ケース検討会議の円滑な進行のためのコーディネート力(調整力)が求められる。
- 代表者会議
2) すでに「虐待防止ネットワーク」(以下、「ネットワーク」という。)が立ち上がっている市町村における「地域協議会」の立ち上げ
*地域協議会への移行のポイントのみ記載。基本は、1)の「地域協議会」の立ち上げと同様である。
(1)「ネットワーク」から「地域協議会」への移行の動機付けを行う
- 市町村内部部局や関係機関が地域協議会の意義(特に守秘義務の重要性)を理解することにより、移行に向けた動機付けを高める。
なお、移行を果たした他の自治体の勉強会や視察なども参考になる。 - 関係機関の実務担当者の意見を集約し、関係機関の代表者で会議を行い、新たに参加を求める機関はないか、移行に際し、運営上見直した方が良いと思いわれる点はないかなど、地域協議会の構成機関やシステムについて検討を行う。
- (ネットワークのままでいいという機関に対して)ネットワークと地域協議会の法的な違いを説明し、地域協議会では、必要に応じ関係機関に対し資料又は情報の提供等を求めることができることや守秘義務について法律上明確化されたことで、ネットワークに比べると情報交換が行いやすくなり、必要な情報交換により適切な支援ができることを理解していただく。
(2) 地域協議会構成機関を決定し、打診する
- 新規に加入し、構成機関となる組織に対しては、調整機関の担当者のみならず、担当主管課(室)長などが出向き、地域協議会の意義、役割などの説明を行い、地域協議会への理解を得ながら参加の要請を行う。
2.『設立後当初』の運営
(1)関係機関のメンバー同士が顔の見える関係になる
ポイント
- 今ある連携(つながり)を広げ、関係機関すべてに広げる。
- 会議の開催やその後の交流会等により、関係者が顔見知りになり、「本音」の連携を可能とする。
方法
- 代表者会議、実務者会議、個別ケース検討会議の会議終了後において、お互いを知り、連携を図るための意見交換会、交流会などを開催する。
(2) 児童虐待等への対応の基本をつかむ
ポイント
- 児童虐待の基本的知識、事例の見立て方、対応方法の基本、各機関の特性等を知る。(まだどのように動けばいいかが手探りの状態なので、基礎的なことから始める。)
- 地域協議会に参加する機関にとってメリットを感じやすいように、成果が見込める事例からケース検討を始めるなど、運営上工夫する。
- 児童虐待対応の実務に関わる者から研修・指導を受ける。
方法
- 事例(仮想事例でも、これまで経験した事例でもよい。)を用いて、児童虐待等への対応について理解する。なお、必要に応じ、児童相談所OB職員等の専門家から助言・指導を受けることも効果的である。
- 成果が見込める事例からケース会議を行う。このことにより、関係機関が一緒になってケースに関わり良い方向に改善が見られると、参加者にとって意欲が高まり、関係機関間の連携が非常によくなる。
- 地域協議会への理解、児童虐待への理解、子どもや家庭の理解を図るため、児童虐待対応の実務に関わる児童相談所の児童福祉司、学識経験者(アドバイザー)、弁護士、医師、保健師、学校教員、保育士、民生・児童委員、他の地域協議会の調整機関担当者などから研修・指導を受ける。
3.『1年目』の運営
(1) 関係機関同士の連携を強化する
ポイント
- 何でも話せる人間関係を作る。
- 安心して、気兼ねなく話せる雰囲気づくりを通じて、参加者の受容感や信頼感を高める。
- 過去の事例への対応などで各機関が批判しあうなど感情的になることも想定されるため、「意見は述べるが、批判はしない」というルールをつくるなど配慮を行う。
方法
- ある機関の講習会等に、他の機関のメンバーを招待するなどして、相互に交流を深める。関係機関への見学会を行うことも一考である。
- 関係機関同士で、児童虐待の個別の研究会や勉強会、意見交換会等を開催する。また、先進自治体の取組を学ぶ機会も設ける。
(2) 児童虐待等への対応力をつける
ポイント
- 具体的な事例を用いて、その事例のどこに問題があるのかなどの見立て方、対応方法、どの機関にどのような援助を求めたら良いのかの認識を共通化する。
- 関係機関の間における児童虐待等への対応の温度差(緊急性の判断など)を修正していく。
- 自分の機関、また他の関係機関の特性を活かした効果的な対応が行えるように検討していく。
- アセスメントシートの共通化等ケースの把握、進行管理等が適切に行えるようにする。
- 児童虐待対応の実務に関わる者から研修・指導を受ける。(回数を重ねるごとに内容のレベルアップを図り、児童虐待等への対応力をつけていく。)
方法
- 具体的な事例を用いて、事例の見立て方、対応方法を知るとともに、関係機関の間における児童虐待等への対応の温度差(緊急性の判断など)を修正していく。なお、必要に応じ、児童相談所OB職員等の専門家から助言・指導を受けることも効果的である。
- 各機関それぞれが具体的な事例(例えば、連携が取れずに対応できなかった事例、連携が図られ対応ができた事例など)を出して、連携の取れた対応について検討を重ねる。その際、自分の機関または他の機関ではどういう対応ができるかを知り、それぞれの関係機関の役割や可能性などの特性について理解する。
- 機関ごとにアセスメントシートなどの様式が違う場合は、関係機関が話し合って様式の共通化を図る。
- 引き続き、地域協議会への理解、児童虐待への理解、子どもや家庭の理解を図るため、児童虐待対応の実務に関わる児童相談所の児童福祉司、学識経験者(アドバイザー)、弁護士、医師、保健師、学校教員、保育士、民生・児童委員、他の地域協議会の調整機関担当者などから研修・指導を受ける。(回数を重ねるごとに、研修や指導内容のレベルアップを図っていく。)
4.『2年目』の運営
少し先が読め、成功事例も出てきて参加者の意欲も増してくる。その反面、次々と新しい事例が出てきて、戸惑いも生じてくる。このため、成功事例を振り返りながら、先進自治体の情報を取得したり、研修を充実させることにより、レベルアップを図る。
(1)児童虐待等への対応について、総合力を付ける
ポイント
- 分野別の具体的な事例を用いて、さまざまな虐待への対応の検討を行い、対応について総合力を付ける。
- 参加者はケースの重症度をアセスメントする能力を高める。
また、アセスメントからニーズを見出し、再発防止にむけた援助の方法を検討する。 - 課題解決に向けて、専門家から研修・指導を受けるなど、専門性の向上などレベルアップを図る。
方法
- 年齢別事例(新生児・乳児期、学齢期前、小学校など)、種類別事例(身体的虐待、ネグレクトなど)、養育環境別事例(精神不安定の母親、ひとり親家庭など)を用いて検討を重ねていく。なお、必要に応じ、児童相談所OB職員等の専門家から助言・指導を受けることも効果的である。
- 専門家(児童相談所の児童福祉司、児童相談所OB職員、学識経験者(アドバイザー)弁護士、医師、保健師など)を招いて研修会・講習会を開催し、児童虐待への対応の専門性を高める。
(2) 地域としての新たな課題を設定し、専門性を高める
ポイント
- 地域協議会運営の実績を踏まえ、地域協議会あるいは地域としての新たな課題を設定する。
方法
- これまでの運営実績を踏まえ、必要に応じ運営面の見直しを行うとともに、新しい課題に対応できるようにする。
- 実務者会議等のメンバーが、所属機関において児童虐待等の対応の指導的役割を担い、各機関の対応力を向上させる。
5.『3年目以降』の運営
- 行政内部の異動で実務者会議のメンバーが変わるなど、援助の質、取り組みの姿勢、チームワーク(信頼感)の維持向上が課題となる。
- 新しいメンバーに今までのやり方を理解していただくと同時に、新たな気持ちで運営方法などを振り返り、適宜改善する。
- 年に2回程度(予算の関係で夏と年度末など)、各市町村の現状と課題、今後のプランを実務者会議参加者で考える。また、年間計画をプランする。
例えば- 地域の関係者の理解を高めるための講演会
- 中核メンバーの対応力を高める専門継続研修
- マニュアル作り
- 援助事例集の作成
- 社会資源名簿(社会資源集)作り
このマニュアルは
(1)これから、要保護児童対策地域協議会を立ち上げようとしている自治体
(2)どのように運営すればいいのか、とまどっている自治体
(3)虐待防止ネットワークからの移行が進んでいない自治体など
の関係者向けに作成しました。
これらの方々の
参考になれば幸いです。
「地域協議会」を設置することによって何が変わるんでしょうか?
地域協議会が創設され、機能することにより、次のような変化が期待されています。
(1)早期発見・対応
- 児童虐待等の情報が調整機関に一元化
- 関係機関等の連携した対応
- 気になるレベルでのケース紹介
- たらい回しや放置ケース
が減少
↓
深刻化する前に対応
(2)関係機関の連携
- 関係機関等のメンバーが顔見知りに!
- 相互理解の推進
- 多様な視点からの情報入手が可能
↓
- ケースの理解・援助方針を多角的・総合的に検討可能
- ケースの押しつけ合いが解消
- 関係機関等の特色を生かした多様な援助が可能に
(3)担当者の意識変化
- 「仲間」としての連帯感向上
- 関係者全員で問題を共有
↓ - 認識・対応の温度差解消
- 援助の質の向上
- 地域での対応が可能となるケース
「虐待防止ネットワーク」があるのに「地域協議会」が必要ですか?
子どもの虐待防止だけでなく、支援を要するすべての子どもを視野に入れた地域協議会が必要です。
(1) 守秘義務が課されることで、民間団体等も参加した幅広い関係機関での情報共有化が図れる。
(2) 調整機関が設置されることで、相談・援助等の情報が集約されるため、的確な援助方針の策定や役割分担、援助の進行管理ができる。
(3) 各関係機関等が、各々の特色を活かしながら、責任を持って要保護児童とその家族を生活圏で援助できる。
(4) 身近なところに設置されることで住民の理解が進み、要保護児童等の通報もしやすくなるため、早期発見・早期対応が容易になる。
どういう手順で地域協議会を設立するのでしょうか?
ここでは、(1)設立まで、(2)設立後当初、(3)設立1年目、(4)設立2年目、(5)3年目以降と、順を追って説明します。
設立まで
新たに地域協議会を立ち上げる場合
(1)調整機関及び構成メンバーの決定
(2)調整機関内で、運営のあり方を検討
(3)関係機関への参加の呼びかけ
(4)要綱の作成、地域協議会設立の公示
(5)都道府県(児童相談所)との連携
(6)関係機関への周知徹底
(7)開催方法・頻度
虐待防止ネットから地域協議会へ
(1)関係者・関係機関への動機づけ
(2)地域協議会構成機関の決定と参加要請
地域協議会設立に消極的な機関には‥
ネットと協議会の法的・制度的違いや利点を説明し理解を求める。
設立後、最初にすることは何ですか?
設立後当初
(1) 関係機関のメンバー同士が顔の見える関係になる。
- 今ある連携(つながり)を関係機関すべてに拡大
- 「本音」の連携を目指し、会議の開催に加え、その後に交流会を持つなど、関係者が顔見知りになるよう工夫
(2) 児童虐待等への対応の基本をつかむ。
- 児童虐待の基本的知識、事例の見立て方や対応方法等の基本を習得
- 参加する機関にとってもメリットを感じやすいように、成果が見込める事例からスタート
- 児童福祉司・学識経験者(アドバイザー)などからの研修・指導
設立1年目です。運営を軌道にのせるためには、どんな取り組みが必要ですか??
設立1年目
(1) 関係機関どうしの連携を強化する。
- ある機関の講習会等に、他機関のメンバーを招待するなど、交流の促進
(関係機関への見学会を行うこともよい。) - 「関係機関同士で、児童虐待の個別の研究会や勉強会、意見交換会の開催
(先進地の取組みを視察することもよい。)
留意点 : 事例への対応について「意見は述べるが、批判はしない」というルールつくりが重要
(2) 児童虐待等への対応の基本をつかむ。
- 具体的な事例を用いて、見立て方、対応方法等を習得
- 関係機関の特性を理解
- 関係機関相互の対応の温度差を修正
- 児童福祉司・学識経験者(アドバイザー)などからの研修・指導
- 機関ごとにアセスメントシートなどの様式が違う場合は、関係機関が話し合って様式を共通化
2年目を迎え、少し先が見えるようになってきました。
今後気をつけることは何ですか。
設立2年目
(1) 児童虐待への対応について、総合力をつける。
- 年齢別(新生児・乳児期・学齢期前・小学校など)、種類別(身体的虐待、ネグレクト等)、
養育環境別(精神不安定の母親、ひとり親家庭など)といったさまざまな事例を用いた
検討による総合力の向上 - ケースの重症度などアセスメント力の向上
- 再発防止に向けた援助方法の検討
- 課題解決に向けて専門家の研修・指導を受けるなどにより、専門性を向上
(2) 地域としての新たな課題を設定し、専門性を高める。
- 地域協議会(又は地域)として、新たな課題を設定
- 実務者会議等のメンバーが、所属機関で虐待対応の指導的役割を担い、各機関の対応力を向上
3年目になり、メンバーの入替もありました。今後心がけることを教えてください。
設立3年目以降
- 人事異動などにより、実務者会議のメンバーが変わるなど、援助の質、取り組みの姿勢、チームワーク(信頼感)の維持向上が課題
↓ - 新メンバーに今までのやり方を理解していただくと同時に、新たな気持ちで運営方法などを振り返り、適宜改善
- 年2回程度(夏と年度末など)、各市町村の現状と課題、今後の取組を実務者会議参加者で検討
参考になる市町村の実践事例を教えてください。
要保護児童対策地域協議会について(子どもを守る地域ネットワーク)
果たすべき機能
要保護児童の早期発見や適切な保護を図るためには、
- 関係機関が当該児童等に関する情報や考え方を共有し、
- 適切な連携の下で対応していくことが重要であり、市町村(場合によっては都道府県)が、要保護児童対策地域協議会を設置し、
(1)関係機関相互の連携や役割分担の調整を行う機関を明確にするなどの責任体制を明確化するとともに、
(2)個人情報保護の要請と関係機関における情報共有の在り方を明確化することが必要
要保護児童対策地域協議会(子どもを守る地域ネットワーク)の運営のイメージ
協議事項や地域の実情に応じて会議を設定し、効果的な情報交換、意見交換を進める。
代表者会議
協議会の構成員の代表者による会議であり、実際の担当者で構成される実務者会議が円滑に運営されるための環境整備を目的として、年に1~2回程度開催される。
(1) 要保護児童等の支援に関するシステム全体の検討
(2) 実務者会議からの協議会の活動状況の報告と評価
実務者会議
実際に活動する実務者から構成される会議であり、会議における協議事項としては例えば次のようなものが考えられる。
(1) 定例的な情報交換や、個別ケース検討会議で課題となった点の更なる検討
(2) 定期的に(例えば3か月に1度)、全ての虐待ケースについての状況確認、主担当機関の確認、援助方針の見直し等を実施
(3) 要保護児童対策を推進するための啓発活動
(4) 協議会の年間活動方針の策定、代表者会議への報告
個別ケース検討会議
※個別の要保護児童について、その子どもに直接関わりを有している担当者や今後関わりを有する可能性がある関係機関等の担当者により、その子どもに対する具体的な支援の内容等を検討するために適時開催される。
※会議における協議事項としては次のようなものが考えられる。
(1) 要保護児童の状況の把握や問題点の確認(危険度や緊急度の判断)
(2) 援助方針の確立と役割分担の決定及びその認識の共有
(3) ケースの主担当機関とキーパーソン(主たる援助者)の決定
(4) 実際の援助、介入方法(支援計画)の検討
※各関係機関の役割分担や次回会議の日程等、個別ケース検討会議で決定した事項については、記録するとともに、その内容を関係機関等で共有することが重要
※協議会は、関係機関等に対し、資料又は情報の提供、意見の開陳その他必要な協力を求めることができる。
※この協力要請は、協議会の構成員以外の関係機関等に対して行うことも可能。
市町村における児童家庭相談体制の状況(都道府県別)
要保護児童対策地域協議会又は虐待防止ネットワークの都道府県別設置状況
協議会(ネットワーク)設置済み市町村の割合 | |
---|---|
100% | 16(34.1%) |
80%~99% | 15(31.9%) |
60%~79% | 15(31.9%) |
40%~59% | 1(2.1%) |
20%~39% | 0(0.0%) |
0%~19% | 0(0.0%) |
平成19年3月31日 現在(見込み) | 平成18年4月1日 現在 | |
---|---|---|
北海道 | 86.10% | 83.90% |
青森県 | 69.80% | 37.50% |
岩手県 | 100.00% | 60.00% |
宮城県 | 97.20% | 86.10% |
秋田県 | 64.00% | 32.00% |
山形県 | 100.00% | 100.00% |
福島県 | 75.00% | 26.20% |
茨城県 | 90.90% | 56.80% |
栃木県 | 96.80% | 54.50% |
群馬県 | 68.40% | 56.40% |
埼玉県 | 100.00% | 95.80% |
千葉県 | 100.00% | 73.20% |
東京都 | 77.40% | 69.40% |
神奈川県 | 100.00% | 100.00% |
新潟県 | 68.60% | 60.00% |
富山県 | 86.70% | 86.70% |
石川県 | 100.00% | 84.20% |
福井県 | 100.00% | 100.00% |
山梨県 | 96.40% | 75.90% |
長野県 | 64.20% | 40.70% |
岐阜県 | 100.00% | 100.00% |
静岡県 | 95.20% | 92.90% |
愛知県 | 100.00% | 87.30% |
三重県 | 100.00% | 62.10% |
滋賀県 | 100.00% | 100.00% |
京都府 | 76.90% | 57.10% |
大阪府 | 100.00% | 100.00% |
兵庫県 | 100.00% | 85.40% |
奈良県 | 64.10% | 59.00% |
和歌山県 | 73.30% | 60.00% |
鳥取県 | 94.70% | 84.20% |
島根県 | 100.00% | 81.00% |
岡山県 | 92.00% | 65.50% |
広島県 | 100.00% | 65.20% |
山口県 | 81.80% | 77.30% |
徳島県 | 95.80% | 91.70% |
香川県 | 88.20% | 76.50% |
愛媛県 | 90.00% | 40.00% |
高知県 | 65.70% | 54.30% |
福岡県 | 58.50% | 39.10% |
佐賀県 | 65.20% | 52.20% |
長崎県 | 91.30% | 60.90% |
熊本県 | 95.80% | 77.10% |
大分県 | 100.00% | 72.20% |
宮崎県 | 67.70% | 45.20% |
鹿児島県 | 63.30% | 49.00% |
沖縄県 | 65.90% | 43.90% |
全国 | 85.10% | 69.00% |