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第23回 健やか親子21推進本部総会

概要

日時:令和5年11月8日(水)13時30分から15時30分
オンライン開催

議事

  1. 開会
  2. 議題
    (1)こども家庭庁における健やか親子21の推進について
    (2)「令和5年度健やか親子21内閣府特命担当大臣表彰」受賞者による発表
    (3)意見交換等
  3. 閉会

資料

議事録

健やか親子21事務局:配信をご覧の皆さま、本日は、お忙しい中、ご出席いただき誠にありがとうございます。定刻となりましたので、ただ今より、「第23回健やか親子21推進本部総会」を開催させていただきます。

本日の司会をつとめさせていただきます、健やか親子21事務局の長尾と申します。よろしくお願い申し上げます。

本日は、健やか親子21推進本部57団体の皆様にご出席いただく予定となっております。健やか親子21推進本部規約第6条に「総会は、過半数の出席により成立」とされており、本会が成立していることをご報告いたします。

それではさっそく進めさせていただきます。はじめに、こども家庭庁成育局母子保健課吉川推進官よりご挨拶いただきます。吉川推進官、よろしくお願いいたします。

こども家庭庁成育局母子保健課 吉川推進官:健やか親子21推進本部総会の開会に当たりまして、一言御挨拶を申し上げます。本日ご出席の皆様におかれましては、日頃から健やか親子21の推進に御尽力いただきまして、誠にありがとうございます。本年4月にこども施策を社会全体で総合的かつ強力に推進していくための包括的な基本法として、こども基本法が施行され、こども政策の司令塔としてこども家庭庁が発足いたしました。

こどもまんなか社会の実現に向けて、こども家庭庁においては、こどもの視点に立った政策を進めていくとともに、すべてのこどもが保健、医療、福祉、教育など、より幅広い関係分野との相互連携を図りつつ、取組を推進していくことが必要と考えております。

こども家庭庁では、11月を秋のこどもまんなか月間とし、こども・子育てにやさしい社会づくりのための各種取組を行っております。明日、栃木県にて開催されます「健やか親子21全国大会」につきましても、こうしたこどもまんなか月間の取組の一つでございます。

健やか親子21全国大会におきまして、成育医療等基本方針に基づく国民運動の一環として、成育過程にある者の心身の健やかな成育や、妊産婦の方々の健康の保持増進に寄与する取組を推進することに御尽力くださっている個人、団体、自治体、企業の方々を表彰することとしており、本日の総会におきましては、健やか親子表彰の受賞者の方々より受賞取組を発表いただくこととしております。

本日の総会におきまして、関係者の有意義な協議・交流の場となることを期待するとともに、健やか親子21の推進におきまして、皆様には今後一層のご支援、ご協力を賜りますようお願い申し上げて、私の御挨拶とさせていただきます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

健やか親子21事務局:吉川推進官、ありがとうございました。

続きまして健やか親子21推進本部会長 岡 明会長にご挨拶いただきます。

岡会長、よろしくお願いいたします。

健やか親子21推進本部会長 岡会長:ただいまご紹介いただきました、健やか21推進本部会長を務めさせていただいております、岡でございます。一言御挨拶を申し上げたいと思います。

健やか親子21は、母子保健の向上を進めるために関係するすべての人々、関係機関・団体が一体となって取組む国民運動としてスタートいたしました。平成27年度より第2次に入っておりますが、平成30年に成育本法が成立して国としての取組が強化され、健やか親子21も成育基本法の基本方針に基づく国民運動としてさらに発展しているところとなります。この国民運動を通じて、皆様とともに、こどもの健やかな成長を見守り育む地域づくりを目指し、幅広い活動を社会全体で推進できればと思っております。

さて、健やか親子21では、母子保健分野の優れた取組の表彰を行ってまいりました。昨年までは厚生労働省の「健康寿命をのばそう!アワード」の一環として表彰を行っておりましたが、今年度からはこども家庭庁に移管しております。名称も「健やか親子21内閣府特命担当大臣表彰」となっております。
本表彰は、成育医療等基本方針の趣旨にのっとりまして、こどもたちの心身の健やかな成育や妊産婦の方々の健康の保持増進に寄与する取組をされている団体・自治体・企業に応募いただき、選考をさせていただき、表彰をするものです。

本日、受賞される皆様方、誠におめでとうございます。これからその内容をご紹介いただけるものと思いますが、皆様方の先駆的な取組は成育過程のこどもたちと妊産婦の皆様の健康の増進に多大に寄与をされてきたものと思っております。

本日はよろしくお願いいたします。

健やか親子21事務局:岡会長、ありがとうございました。続きまして、次第1「こども家庭庁における健やか親子21の推進について」、こども家庭庁成育局母子保健課係長の岡本係長より、発表いただきます。岡本係長、よろしくお願いいたします。

こども家庭庁成育局母子保健課 岡本係長:こども家庭庁における健やか親子21の推進につきまして、ご説明させていただきます。
(資料1 P1)

まずこども基本法でございます。こども基本法は次代の社会を担う全てのこどもが生涯にわたる人格形成の基礎を築き、自立した個人として等しく健やかに成長することができ、権利の擁護が図られ、将来に渡って幸福な生活を送ることができる社会の実現を目指して、こども施策を総合的に推進する基盤として設定されたものでございます。基本理念といたしましては、全てのこどもが個人として尊重され、基本的人権が保証され、適切に養育されることとしております。また、こども大綱の策定につきましても規定されており、内閣総理大臣を会長とするこども政策推進会議においてその案を作成することとされております。その際には施策に対するこども、子育て当事者等の意見を十分に聞いて、反映させることも盛り込まれております。
(資料1 P2)

こども家庭庁の概要でございます。こども家庭庁は、こどもまんなか社会の実現に向けて常にこどもの視点に立ってこども政策を強力かつ専一に取り組む独立した行政組織として、こども政策に関する政府の司令塔機能を担う役割の組織として創設されたものでございます。こどもの福祉、保健等を目的とするものにつきましては、主に厚生労働省等から移管されておりますが、文科省、厚労省をはじめ関係省庁とも連携して対応することとされており、新規の政策課題にも取り組むこととされております。組織につきましては、司令塔部門の企画立案・総合調整部門、成育部門、支援部門の3部門体制として成り立っております。
(資料1 P3)

こども家庭庁の組織図でございます。こども家庭長官をトップに、長官官房、成育局、支援局の一官房二局体制でございます。母子保健課につきましては、成育局に設置されております。
(資料1 P4)

成育医療等基本方針の概要でございます。成育基本法第11条第7項に基づき、令和5年3月22日に成育医療等基本方針の変更を閣議決定いたしました。主な変更点といたしましては、こども家庭庁設置を踏まえこどもの意見を尊重することや、PDCAサイクルに基づく取組を推進するため、施策の実施状況等の評価をするための指標を作成したところでございます。詳細な改定事項につきましては、資料のスライド5、スライド6をご参照ください。
(資料1 P7)

健やか親子21につきましては、成育医療等基本方針に基づく国民運動として位置づけられ、こどもの成長や発達に関して、子育ての当事者である親や身近な養育者が正しい知識を持つことに加え、学校や企業等も含めた社会全体で、親やこどもの多様性を尊重し、見守り子育てに協力していくことができるよう、国民全体の理解を深めるための普及啓発を促進することとしております。
(資料1 P8)

成育医療等基本方針につきましては、令和5年度から令和10年度までの6年程度をひとつの目安として策定することとしております。成育医療等基本方針を踏まえた計画の策定期間につきましては、医療計画と同様の期間とすることが望ましいと示しております。
(資料1 P9-10)

成育医療等基本方針に基づき、施策の実施状況等を客観的に検討評価し、必要な見直しに繋げるPDCAサイクルに基づく取組を適切に実施するための評価指標を作成致しました。令和5年3月31日に通知にてお示しさせていただいております。成育医療等基本方針に基づく計画策定指針につきましては、各地方公共団体において、成育医療等に関する計画を策定する際の参考となるよう手引きとして示しております。成育医療等基本方針に基づく評価指標参照にしながら、計画を策定いただくこととしております。評価指標につきましては、スライドをご参照ください。
(資料1 P11)

健やか親子21の今後の方向性として、昨年度の健やか親子21推進本部総会にてご説明させていただきましたとおり、令和5年度以降の方向性として成育医療等基本方針に基づく取組の推進を図る観点から、母子保健家族計画事業功労者表彰や健康寿命をのばそうアワード等の位置づけを見直すことといたしました。
(資料1 P12)

明日、明後日栃木県にて開催されます健やか親子21全国大会において、成育過程にある者の心身の健やかな成育や妊産婦の健康の保持増進に寄与する取組を推進している個人、団体等を表彰するとともに、こうした取組の講演やシンポジウムを実施することとしております。また、健やか親子21内閣府特命担当大臣表彰につきましては、功労者表彰として、成育過程にある者の心身の健やかな成育並びに妊産婦の健康の保持及び増進に寄与する取組に長年携わり、地域づくりに貢献している個人及び団体を表彰するものとしております。また、健やか親子表彰につきましては、先駆的な取組により、成育過程にある者の心身の健やかな成育並びに妊産婦の健康の保持及び増進に寄与する自治体・団体・企業を表彰するものとさせていただきました。
(資料1 P13)

こども家庭庁では先ほど申し上げましたとおり、11月を秋のこどもまんなか月間として、現在、こども・子育てに優しい社会づくりのための各種取組を行っているところであり、健やか親子21全国大会もその取組の一つでございます。詳細につきましては、こども家庭庁のホームページをご覧ください。以上です。

健やか親子21事務局:岡本係長、ありがとうございました。

続きまして、次第2「令和5年度 第1回健やか親子21内閣府特命担当大臣表彰」受賞者による発表に移らせていただきます。

はじめに本表彰についてご説明させていただきます。

成育医療等基本方針に基づく国民運動として位置付けられている健やか親子21では、こどもの健やかな成長を見守り育む地域づくりの観点から、成育医療等基本方針に基づく医療、保健、教育、福祉等の幅広い取組を社会全体で推進することとしています。

成育医療等基本方針に基づく国民運動の一環として、成育過程にある者の心身の健やかな成育並びに妊産婦の健康の保持及び増進に寄与する取組を推進している個人・団体・自治体・企業を表彰しております。

健やか親子表彰では、国及び地方公共団体が講ずる成育医療等の提供に関する施策に協力し、先駆的な取組により、成育過程にある者の心身の健やかな成育並びに妊産婦の健康の保持及び増進に寄与する自治体・団体・企業を表彰いたします。

功労者表彰では、成育過程にある者の心身の健やかな成育並びに妊産婦の健康の保持及び増進に寄与する取組に長年携わり、地域社会全体でこどもの健やかな成長を見守り育む地域づくりに貢献している個人及び団体を表彰いたします。

健やか親子表彰では、3部門合わせて96件のご応募をいただき、健やか親子21推進本部幹事会での選考を経て決定いたしました。本日は健やか親子表彰の受賞者の方々に取組について、発表いただきます。

功労者表彰の受賞取組につきましては、参考資料4をご参照ください。また、健やか親子21公式ウェブサイト内にも本日の資料が公開されております。

また、本日は、受賞者による発表後に、意見交換のお時間を予定しております。受賞者の取組に関するご質問等ございましたら、Zoom上のQ&Aから受付いたします。ご質問される方は、所属団体とお名前と合わせてご質問内容をご入力ください。時間の関係上、全てのご質問に対して回答することが難しい場合がありますことを、あらかじめご了承いただきますようお願いいたします。

それでは、はじめに、自治体部門優秀賞を受賞された、高知県立特別支援学校・高知県子育て支援課の『SVS(スポットビジョンスクリーナー)を用いた特別支援学校の眼科健診』について、安岡恵子様より発表いただきます。それでは、安岡様、よろしくお願いいたします。

高知県立特別支援学校・高知県子育て支援課:私共が5年間行ってきたスポットビジネスクリーナーを用いた特別支援学校における眼科健診の取組と成果を発表します。演者は20年以上前から高知県特別支援学校の眼科校医をしております。年に1度、各施設に赴き眼科健診をするのですが、高知県立高知若草特別支援学校子鹿園分校、高知県立高知ろう学校、高知県立高知若草特別支援学校、3校の生徒は、直像鏡や眼底検査機械の様な眼科検査器械を持参しても、診察協力に応じない生徒が多く、また知的障害や発達不良を伴う児童の場合、視力検査が出来ず、弱視など、視力発育異常を評価出来ないなど、健診の精度が非常に悪いことに苦慮しておりました。

弱視とは、年齢相当の視力発育をしていないために、メガネやコンタクトレンズなどを使用しても見えない状態を言います。弱視は早期に発見し、適切な治療をおこなえば、多くの場合改善されます。しかし、視力発達の完成する6歳頃を過ぎてしまうと、治療効果は無く、自力で外出が出来ないなどの日常生活の制限や、就学先や運転免許取得に支障がでる等の社会的なハンディキャップを生涯背負うことになります。また強い弱視は、物を見ようとしなくなり、目線がズレる斜視を起こすことも多く、両目を使う事で可能となる立体感覚や奥行き感覚が発達しません。弱視が起こるこれらの原因のうち、早期発見が困難な屈折異常について説明します。

屈折異常は、聞きなれない言葉ですが、近視、遠視、乱視に分類される総称で、目の前の映像が、目の奥の網膜という神経膜より焦点の位置がズレる状態を意味します。網膜に焦点が合っている正視では、遠くも近くのものも良く見えています。屈折異常のうち、近視は焦点が網膜より近くにズレて遠くが見えませんが、近くは見えています。それに対して、焦点が網膜より遠くにズレている遠視や2箇所に焦点がズレている乱視の様な屈折異常があると、どの距離の物も良く見えません。

屈折異常は、我々の日常生活にこの様な不自由が起こりますが、老眼鏡を含むメガネやコンタクトレンズを使用すれば、網膜の焦点ずれを補正しピントが合いますので、どの距離の物も見ることが出来ます。弱視は、視力そのものが発育していないので、メガネなどの矯正道具を使っても、見えない重大な目の障害であり、近視や老眼とは全く異なります。

生まれたての新生児はほとんど目が見えていませんので、1歳までの視力発育に必要な視覚刺激は、授乳や顔を近づけてあやしたりする時に、人の黒目を見つめることで起こるといわれています。したがって、学童期には、「黒板の字が見えにくい、目が悪い」と一般的に表現され親御さんが心配する近視ですが、乳幼児期においては、間近にあるものが見えているため 視力発育異常が起こり難いです。それに対して遠視や乱視が有ると、ボケた映像しか脳に届かず、十分に視覚刺激を受けません。結果、視力発達が遅れ弱視の原因になります。特に左右の目に差がある場合は、こどもは片目だけを使って、行動をするため周りが気付きにくく、治療の要になる早期発見が遅れます。

視力発育に深くかかわっている視覚刺激に対する感受性は、3ヵ月から1歳半の乳幼児期までにピークがあり、3歳位まで続きますが6歳頃には低下します。これに対して正常の視力発達は、1歳~2歳で少数視力0.2~0.4ですが、3歳にかけて急速に発達し6歳でほぼ大人と同じ視力になります。従って、視力検査が可能な就学前後の健診で、弱視が発見されても、既に視力発育のピークは過ぎており、治療効果が出ません。

また、見る力は片目ずつの視力数字だけではなく、先程述べた両目を使う立体感覚などの「健全な見える生活」に重要な両眼視機能の発育にも、影響します。以上の理由から、視機能発達を阻害する遠視や乱視などの屈折異常は、視力検査の未だ出来ない3歳~4歳までに発見する必要があります。

スポットビジョンスクリーナー(以下、SVS)は、フォトスクリーナーの一種で、国内で2015年に販売以来、視力検査が出来ない時期の屈折異常や斜視の早期発見に大変有用な測定器械として認知されるようになりました。

検査方法は、こどもの前に目線の高さで器械を向け、鳥の鳴き声と一緒に点滅する光を見るように声掛けします。終わると自動で測定結果が表示されます。プラスで遠視度数、マイナスで近視度数、隣の枠に乱視の度数が表示されます。SVSはスマートフォンのカメラ撮影の簡単さで、体重測定の様に、目の発育異常を起こす焦点のズレを数値化して計測することが出来ます。

フォトスクリーナーは、3歳児健診に導入され「弱視見逃し」抑制に大きな成果をあげました。令和4年度より3歳児健診の器械購入への補助金が承認された背景を受けて、導入率は急速に加速しています。高知県は、3歳児健診への導入率100%を達成している先進県であります。

その様な状況下で、校医である演者は校医健診にも、SVSによる視覚検査は有用であると確信し、2019年に高知県健康対策課に交渉をして器械を借り出して、肢体不自由児特別支援学校2校とろう学校に持ち込み屈折検査を試行したところ、それまで不明だった屈折異常が原因と思われる視力障害がある生徒が多数発見されました。

その結果より、校医健診へのSVS導入の継続と定着を目標に取組を開始しました。対象は2019年から2023年までの5年間における、年齢3歳~18歳の約90人、延べ人数は450人です。方法は初年度と2年目は眼科校医が、その後は各施設で健診前に各校の養護教諭が、高知県下の福祉保健所から空いているSVSを借り出して検査をおこない、校医が健診当日に検査データを参照し健診をしております。

SVS検査成功率は肢体不自由児特別支援学校で55%、ろう学校では94%で、どの施設においても視力検査の成功率より高い結果となりました。

健診で眼科精密検査を必要とした生徒数は、SVS導入前の4人から導入後は14人に増加しましたが、注目するべきは、その内訳でした。SVS導入前は、弱視の原因となる遠視、乱視などの屈折関連の病気の件数が導入前の0人から、導入後は14人中12人、86%となった事です。

5年間の結果です。屈折が原因の弱視疑いがメガネ装用や弱視治療を開始し矯正視力1.0以上になった生徒が3名、矯正視力が改善した生徒が数名おりました。2022年よりレンズメーターを眼科健診に持ち込み、使用メガネのレンズ度数を計測し、成長期でサイズや近視が進みメガネ度数が合ってない場合には、メガネの再作をご家庭に連絡したり、より快適な学校活動の支援に取り組んでおります。

親御さんの許可を得ておりますので、弱視発見以外にも非常に印象の強かった症例を紹介します。

2020年に染色体疾患をもつ多動のある10代男子が、校医健診で5.0を超える高度の遠視性乱視を認め、毎年眼科受診を勧告していました。3年目の2022年、演者の勤務する眼科に初診しました。SVSの検査値から推定した生活場面の見え方は、色は識別できるが、物の輪郭がボヤけて見えないレベルと思われました。会話が出来ないため、SVSの値のメガネを試し掛けすると、直ちに物を見ようとする反応、視反応を認めましたので、メガネを作成し装用を開始しました。その後、授業を着席して受講することが増え、学校活動における行動様式が激変したと担当教諭から報告がありました。同年の校医健診では、保健室に自分から入室し、診察後はドアノブを自分で開けて退室したので、私自身も別人かと思うほどでした。今年の眼科定期診察時で、視力検査に成功し矯正視力が1.0であることが確認できました。「現在、自宅ではメガネを掛けてTVを見たり、タブレットでゲームやインターネットを楽しむ生活を送っている」と保護者から報告を受けました。その際「他県の同じ様な境遇のお子さんにも、チャンスが来ることを願っています」とのコメントをいただきました。この生徒は長い間、耳からも目からも情報が乏しい世界で、もがいて多動になっていた可能性もあります。幸い弱視ではなかったので、メガネさえかけさせてあげれば、もっと早く辛い世界から救えていたのにと、自責の念に陥りました。同時に、同じ様な環境で辛い思いをしている学童が何処かにいると思いました。

私はSVS検査が、これらの無限大の視覚向上のチャンスを与えるきっかけになると確信しております。特に聴覚障害の生徒は、約8割と言われている視覚の情報比率が高くなるため重要性が増すと考えております。

今後の導入をご検討いただく際の、参考になるために苦労したことを3点お話します。

開始初年度と2年目は、SVSを所管する健康対策課(現、高知県子育て支援課)から、各特別支援学校への直接の貸し借りは規定により許可がおりませんでした。そのため、SVS使用申請手続と福祉保健所からの持ち出し返却を眼科校医が直接行い、実行しました。開業医としての診療を主業務とする演者には困難を極め、今後の継続は不可能だと思われました。しかしながら健康対策課と高知県教育委員会が協議を重ねた結果、2021年より直接の貸し借りが可能となり、健診効率が格段に向上しました。また、現在高知県が保有しているSVSは5台に増えており、新たな購入資金を必要とせずに、屈折検査の導入と継続が可能な状態となっています。

2点目は、初年度は、SVS検査に対して養護教諭の躊躇いが見られましたが、測定方法を指導すると直ぐに習得されました。また、検査の重要性の啓発には、この様な日本眼科学会発行の資料が役立ちました。

3点目は、SVS導入の確立のため,有用性についてエビデンスになるデータの公表と全国展開が期待できそうな、ありとあらゆるすべての手段に取り組みました。この様なエビデンスになるデータの公表や全国展開への考えられる全ての手段に取り組みました。苦労という表現は適切では有りませんが、心が折れそうな時は、携わってくれた生徒の笑顔を思い出して自らを奮い立たせてきました。

今後の目標は、高知県で達成した目標を、全国レベルに展開させて、1人でも多くの児の視覚向上に救いの手を差し伸べることであります。その実現のためには、全国の眼科校医、学校保健関係者、行政との連携協力への働きかけが、不可欠であると考えております。この度、この様な栄誉ある賞をいただいたことは、目標実現への大きな前進に繋がると喜びを噛みしめております。審査をしていただいた省庁関係者の皆様へ心からの感謝を申しあげます。

最後に、全国のどこかでこの様な治療を待っている声を上げられないこども達がいることを、この発表を通じて皆様に知っていただき広まっていくことを願い、本発表を終わらせていただきます。

ご清聴いただきまして、誠に有り難うございました。

健やか親子21事務局:安岡様、ありがとうございました。安岡様は、お時間のご都合によりご退出されるため、ご説明発表に関するご質問がありましたら、Zoom上のQ&Aに入力ください。

現在、質問を入力いただいている最中かと存じますので、安岡様と一緒に取組を行われた高知県子育て支援課の皆様からもお一言頂戴できればと存じます。他部署との連携や子育て支援課様の中で苦労された点等について、可能でしたらお話しいただきたいと思います。いかがでしょうか。

高知県子育て支援課:高知県子育て支援課の矢野と申します。本日はどうもありがとうございました。先生からのお話もありましたけれども、SVSは3歳児健診用に用意しておりまして、高知県には福祉保健所が5ヶ所ありますが、そちらに置いて市町村に貸し出すという流れをとっておりました。先生に提案された時にはまだ市町村の方たちへの貸し出しのみを想定しておりましたので、それ以外の学校へ貸し出すといった点は、当県における貸し出し体制が整備されておりませんでした。そのため1年目2年目は、校医の先生に福祉保健所に取りに行っていただく体制となっておりました。その間に教育委員会と話をしまして、直接学校へ貸し出しができるような流れを整え、2021年からは直接学校の先生に申請していただいて、使用後、返却いただくという流れになりました。以上でございます。

健やか親子21事務局:高知県子育て支援課様ありがとうございました。

質問をいただいておりますので読み上げます。「このスポットビジョンスクリーナーは、医師以外が使用することに問題はないでしょうか?」という質問です。ご回答をお願いいたします。

高知県立特別支援学校・高知県子育て支援課:校医の安岡です。高知県の3歳児健診では、SVS検査は保健師さん看護師が主体でしておりますが、実施施設に一任されております。2023年10月現在は、健康保険請求が「屈折検査」で認められており、眼科診療所でSVSを所有している施設も増えております。眼科病院施設では視力検査と同じく眼科検査員、視能訓練士が検査をおこない、眼科医が検査をすることは稀です。本取組においては、養護教諭が検査をしました。従って検査資格については、問題はないと考えております。

健やか親子21事務局:ありがとうございます。他にご質問等はございませんでしょうか?

質問等他になければ、お時間になりましたので、高知県立特別支援学校・高知県子育て支援課様の発表を終了とさせていただければと思います。安岡様、ありがとうございました。

続きまして、団体部門優秀賞を受賞された、一般社団法人シュフレ協会の『ママのがん検診応援プロジェクト』について、一般社団法人シュフレ協会の武次直美様より発表いただきます。

武次様、よろしくお願いいたします。

一般社団法人シュフレ協会:一般社団法人シュフレ協会の武次でございます。この度は輝かしい賞をいただきまして、誠に光栄に思っております。ありがとうございます。この活動に関わっていただいている全ての方々と共に受賞した賞だと思っております。この場を借りて、深く御礼申し上げます。そして本日は私たちの活動を多くの方に知っていただける発表の場も設けていただきありがとうございます。ママのがん検診に関わってくださっているプロジェクトメンバーを代表して活動のご紹介をさせていただきます。

私たちは、ママの笑顔から、こどもたちの健やかな成長を伴走支援するために2009年より活動しております。こどももママも楽しい時間を作ることを大切にして、コロナ禍前は写真のように様々な活動を行ってきました。写真の左側から、おばあちゃん先生から昔の知恵を伝授いただくおばあちゃんの家。その隣はお弁当屋さんからお弁当のいろはを学ぶ講座などを開催しておりました。テーマはいつもママの困りごとを解決するだけではなくて、地域のお店とつなげるという目的も同時に行っておりました。その他、キッズパークの運営サポートやコロナ禍で家にばかりいるこどもたちの発達を心配したママたちの声から、理学療法士の先生たちと一緒におうちで出来る体幹遊びや、保育士の先生方と一緒に家の中でも楽しめる五感遊びなど、その時その時のママたちの困りごとを解決することを行ってまいりました。

そんな私たちでしたが、ある日、医療従事者の方からこんなお声を聞くことになりました。この話を聞いた時に私は、20年以上前にはなりますが、今も思い出すと胸が締め付けられてしまうような記憶がよみがえりました。それは36歳で幼い3人の子供を残して、この世を去ってしまった親友のことです。30代だった私たちは、30代で病気になるなんて全く考えてなくて、体に不調があっても、30代になると治りが遅いよねといった感じで、その体からのサインをスルーし続けて、半年後に病院に行った時には、もう手遅れの状態になっていました。そんな経験から私はその後、ママたちに2つのことを伝えるようになりました。

1つ目は、あなた方が思い描いている未来は、今の行動の先にあるということ。こどもの成長をずっとそばで見ていたいならば、自分の体を大切にしないと、それも叶わなくなってしまう可能性があるということをずっと伝え続けてきました。

そして2つ目は、体からのサインを見逃さないように、病の正しい知識を持とうね、と言うことを伝えてきました。実は、その亡くなった親友の体にも、思い返せば数々のサインがありましたが、全くもって無知だったためにそれをすべてスルーしてしまい、悲しい結果になってしまいました。医療者からこのままでは数年後コロナで苦しむ人よりも、病が進行してしまって、本来ならば助けられたはずの命を助けられなくなってしまう可能性が出てきてしまうということを聞いた時に、彼女の顔が浮んで、あのような思いをする人を絶対に出したくないなということで、今のママのがん検診応援プロジェクトをスタート致しました。

最初に始めたことは、まず、ママ達にどうして検診行かないの?ということを徹底的に調査したいなと思い、簡易的なアンケート行いました。こどもの預け先がないから、費用が高いから、必要性を感じていないからというようなよく聞く回答が返ってきました。では、保育がついていたら行くか、無料だったら行くか、とママたちの出てきた意見に対してこうだったらどうだろうかと聞いてみましたが、最終的にママたちはそれでも「やっぱり行かない」という回答でした。このようなやりとりから、どうやらママたちが検診に行かない理由には、もっと違う理由があるということで、そこをもう少し深掘りして聞いていったところ、ママたちが検診に行かない理由の大きな1つに、自分の都合にこどもを付き合わせることに罪悪感を抱く、という回答がありました。そのような罪悪感を抱いてしまうことから検診に行かないということがわかりましたので、ここを改善して検診に行けるような形にすればいいなと考えながら、次に健康意識の低いママたちに足を運んでもらうにはどうしたらいいのかなと、自分が健康でいることがこどもの幸せにつながることだということを、どうやったらわかってもらえるかなと、頭だけではなく、継続的に行動に移してもらうにはどうしたらいいのかな?ということを考えながら、色々とプログラムを考えてきました。

その結果、「こどもを楽しませにおいでよ」ということを前面に出すことにしました。これで自分の用事でなく、こどもを楽しませるためという理由付けができたので、ママたちも罪悪感を持たないで足を運んでもらえるようになりました。さらには自分の健康に目を向けていないママたちの多くは、こどもの事には手をかけている方が多いということに気づきました。なので、健康意識の低いママにも現在はたくさん来てもらっています。そしてこどもたちが遊んでいる間に、ママは自分の健康状態を調べて、病のサインを見逃さないような知識を知って、どうして検診が大切なのかということを理解してもらう40分のプログラムを導入しました。ママたちにはたくさん伝えたいことはありますが、まずは子育て期に罹患リスクが上昇して発見が遅れることで、命の危険がある2つのがんに焦点を当てて活動しています。

1つは乳房スクリーニング検査で、いわゆる乳がん検診ですけれども、キッズパークの個室にドクターをお呼びして、病院で使うようなしっかりした超音波機器を持ってきていただいて、検査を実施しています。2021年より545名の方に検診を届けてきました。どんな方に来ていただいているのかというと、半数以上が過去に検診を受けたことがない初めての方。それから過去に乳がん検診を受けたことがある方の中でも約25%の方がこどもを産んでからは3年以上検診を受けてない、いわゆる検診から足が遠のいている方々に来ていただいています。この結果から当初、私が先ほど申し上げました健康意識の低いママにこそ来てもらいたいというような最初の目的は達成できているかなと考えています。

もう1つは子宮頸がんの啓発予防啓発です。こちらは乳がん検診から1年遅れた2022年からスタートしました。子宮頸がんの検査は皆様もご存知だと思いますが、診察台で足を開いて検査することから恥ずかしいという気持ちが先立って、なかなか検診に結びつかないことから、私たちはその病気の原因になるヒトパピローマウイルス、HPV検査キットを活用した啓発運動を行っています。乳がん検診よりどうして1年遅れての実施となったのかというと、このHPV検査キットというものがどういうものか、私共もわからなかったので、その検査精度はどうなのかや、お医者様が採取するのと素人のママたちが自分で採取することの精度の差はどのぐらいなのだろうか等、また、事故など危険はないのか、そういったことを調べるのに、1年弱ぐらい時間を要してしまいました。結果はとても信頼できる検査キット会社さんと出会うことができ、今はそれを使って開催しています。

子宮頸がんにつきましては、まだ100名にも満たない実施人数ですが、HPVウイルスの陽性者が見つかり、現在、細胞の変化などを病院に行って調べてもらっています。また、子宮頸がんにつきましては、病の性質から誤った認識をしている方がとても多く、罹患者の声が表に出て来にくい状況から、ほとんどのかたが病に関する正しい知識を持っていないことがわかりました。

妊娠した時の検査ですでに高度異形成というような診断を受けているにもかかわらず、それがどういうものなのかを知らずに、自己判断で通院をやめていた方が2名ほどおりました。この取組をやっていくうちに、実は乳がんよりも子宮頸がん啓発の方がママ達の情報があまり入らない分、急務ではないかなと感じている方が多いことがわかったため、2024年度からは子宮頸がん啓発にも力を入れて行きたいと考えています。そして最初の目標として、先ほども話させていただきましたが、この取組を一過性にせずに、しっかりと継続的な行動に移してもらうために考えたプログラムが功を奏しまして、こちらのイベントに参加していただいたあと1年半を経過した方々に行動変容調査を行ないました。例えば、ブレストアウェアネスの実施と、その当日のプログラムで、自宅でも自分の乳部を意識してみてねとお伝えしたことを、継続してやっていますか?とお尋ねしたところ、約8割の方が「継続してやっています」とご回答いただいたり、右のグラフ(資料3 P8)ですけれども、1年半経過した方々に、翌年以降も自発的に検診を受診していますか?とお電話での調査をしたところ、受診した方や、ちょうど予約を取ろうとしていますとか、準備をしていますという方が約9割いらっしゃいました。この結果を受けて、まだまだ少ない人数ではありますが、私たちが実施しているプログラムの内容は目的に即した内容になっているということで、今後もやりっぱなしではなくて、この行動変容調査が重要だと思いますので、定期的に参加した方々がどうなっているのかを調査して参りたいと思います。

活動について、かいつまんでご紹介をさせていただきましたが、最後に、皆様にママの声をお伝えして終わりにさせていただきたいと思います。私たちの活動はママたちを応援してくださっている、この取組にご賛同いただいている企業様からの応援金で成り立っています。多くの方々の応援によってママのがん検診が実施できていることをママたちにも毎回伝えております。そして、自分たちを応援してくれる人たちが居るというのは、子育てをして行く上で、大きな勇気にもつながっています。ママのがん検診プログラムをすべて終えた後に、ママたちは応援してくださっている企業様へ向けて、お手紙を書いてもらっています。皆さん、本当に真剣に、時にはイラストなんかもつけて丁寧に書いていただいているお手紙の中から、本日は3つほど読ませていただいて終わりにしたいと思います。

1つ目です。「いつも子育てで忙しく、自分のことは後回し。体もボロボロで余裕のない日々を送っていました。こちらのイベントの案内を見て、暫く乳がん検診を受けていなかったことを思い出しました。とてもいい機会をいただいて感謝しています。こどももたくさん遊べて大喜びです。もうすぐ40歳になるので、マンモグラフィーも怖いけど、思い切って受診してみようと思います。ありがとうございました。」ということで、30歳から検診を受けられていると、40歳になってから本当に乳がんの罹患リスクがグンと上がる時期にも継続的に検診に行っていただくということで、マンモグラフィーの検査などにも繋がっております。

そして2人目です。「本日はありがとうございました。検診を受けてみたいと思いつつ、こどもの預け先がなかったので、ずっと先延ばしにしていました。このような機会に恵まれて本当に良かったです。自分のこと後回しにせず、こどもの為にもこれから積極的に検診を受けていきたいと思います。ありがとうございました。」ということで、検診の大切さが分かっていただけた方です。

そして最後に、「本日はありがとうございました。検診を受けないと、といつも頭の中にはあるのですが、いつも遠回しになってしまい、気付けば10年近く何もしていませんでした。今日はとてもいい機会になりました。これを機にほかの部分も調べたいと思いました。」ということで、皆さんこのイベントに参加してくださったあとは、乳がんだけでなく、今は若い方にも大腸癌などが多くなってきているよということをお話させていただいているので、ほかの部位も病院に行って調べてみるということに繋がっています。

検診に行きたいけれど、なかなか行けずに現状に不安を抱えているようなママだったり、まだ自分には検診は関係ないと思っていたママ、そういったママが自分事に病のことを捉えてくれたり、身近に乳がんや子宮頸がんになったママがいて、不安になっていてもすぐに検診にいけない環境のママがいること、そんなママたちが大勢いるということを、この機会に皆様に知っていただけたらいいなと思い、手紙を読ませていただきました。

最後に私たちと共にママの健康と親子の願いを守ってくださる方を、各地で私たちは募集しております。この取組のもう1つの目標は、地域のママを地域の企業が守っていくというような、取組にして行きたいと考えています。単に資金の援助だけではなくて、運営にも関わっていただくことで地域の企業様とママたちの良い循環が生まれて、ママたちも自分たちを応援してくださる人が地域にたくさんいるということを知れるのは、とても大きな勇気につながると思っています。来年は神奈川県のほか、検診受診率の低い山口県や関西地方、北海道にも行く準備を進めております。是非、その地域に住むママとこどもの健康を守っていけるような体制づくり、皆様からご協力いただけたらなと思います。私たちの活動をお聞きいただき、ありがとうございました。病の発見が遅れたことによって、一緒にいられなくなる親子がなくなるように願いを込めて終わりにしたいと思います。ありがとうございました。

健やか親子21事務局:武次様、ありがとうございました。

続きまして、全部門の中から最優秀賞を受賞された、岡山県産婦人科医会の『「妊娠中からの気になる母子支援」連絡システム(岡山モデル)による虐待防止』について、岡山県産婦人科医会の中塚幹也様より発表いただきます。

中塚様、よろしくお願いいたします。

岡山県産婦人科医会:岡山大学の中塚と申します。岡山大学の保健学域に所属しておりますが、2006年から産婦人科医会の母子担当の理事をしておりまして、産婦人科医会の中でもその分野がこのモデルを開発し実施しています。岡山県の方は後でお示ししますけど、保健師に家庭訪問に行ってもらうことなど行っております。そして、おかやま妊娠・出産サポートセンターは、妊娠SOSを含めて困っている人たちの対応をしているセンターで、岡山大学が、県からの受託事業でやっています。また、大学ではリサーチや、社会実装に向けてどのように取り組むのかを検討していますので、産婦人科医会だけではなく、岡山県、岡山大学との、三者で行っている事業になります。

今日ここに参加されている方はよくご存知のことと思いますが、児童虐待相談対応件数は全国でどんどん増えており、コロナ禍で横ばいになったかと思われていましたが、やはり増加の状況が続いています。そして、産婦人科医として、また助産師さんも気にされているかもしれませんが、生まれて直ぐから1か月健診までは産婦人科の領域と思ってやっておりますが、月齢1か月、あるいは0歳児の最初のあたりで虐待死亡事例が多いことは、昔から知られています。そこをなんとか切れ目なく、そういう事例をなくして行きたいというのが我々の願いです。ですから、子育て支援といっても産後からでは遅いということで、妊娠中から切れ目なく子育て支援を行うこと、愛着形成から含めて虐待を防止していこうというのが我々の思いです。

岡山県で始まった岡山モデルがどういうものかというと、2007年頃から少しずつ医療スタッフの意識を変えてもらおうと、取り組んできました。産科のスタッフはどうしても、「血圧がどうなの?」「蛋白尿出てないの?」等、妊産婦さんの医学的な事には注意を払いますが、そのお母さんが家でどのような様子なのか、上のお子さんにネグレクト等の虐待が起きてないかなど、そういった視点で妊婦さんを見ていることは、あまりありませんでした。しかし、社会的に母子ともにいろいろなことが起きてくることが分かっていますので、そこの意識を変えてもらう、医学的な知識以外の知識も蓄えてもらおうということから始めました。

具体的にはこのようなパンフレットを岡山大学で作りました。(資料4 P7)妊婦さんはDVを受けるの?と、皆さん思うかもしれません。普通に考えるとこどもができて妊娠していて、産婦人科にも来ているからDVじゃないだろうと思うかもしれませんが、その奥に隠れていることがあります。このパンフレットを女性用のトイレ等に置いておくと、該当する方が取って行き、自分の状況がわかるということもあり、このようなパンフレットを作成しました。他にも、産後うつに関するもの(資料4 P8)、若年でお子さんを産んだ方向けのもの(資料4 P9)の3種類を作成し、県内の妊婦さんが来るような施設に無料配布しております。妊婦さんのためのものでもありますが、これを渡す助産師さんがこれを見て、こんなこともあるのかと勉強しながら、配っていただいております。

そうすると少しずつ、そういうことが気になり出す助産師さん、産婦人科医が増えてきましたが、実際にそれを自分で調べて、担当の部署に連絡できるかというとなかなかハードルが高いことがあります。ですから、連絡ハードルをいかにして下げるかということで、岡山モデルが始まりました。

以前から「ハイリスク妊産婦連絡票」が各県にあり、実施していない県もあったようですが、岡山県は前から実施しておりまして、今も続けております。(資料4 P12~14)ただ、たくさん書く項目があり、県もこれを送ってくれたら何千円か出すことにして提出数を増やそうとしていますが、この連絡票には個人情報である名前を書かないといけないことや、診断名の記入箇所もあるので、どちらかというと、病気を主体に考えている連絡票となっております。こちらでは手間がかかることや、本人の同意が取りにくいこともありました。また、虐待が診断名かと記入する際に悩むこともあり、なかなか上手く行ってないだろうということを感じていました。2011年から我々が始めたのが、「妊娠中からの気になる母子支援連絡票」です。作成時には法務省と県の方でもいろいろと話をしていただいて、個人情報が含まれずに丸をつけるだけ、というものになります。忙しい産科スタッフの方たちにできるだけ負担がないように進めていこうと作成されました。それに加えて、この前の年からシンポジウムを開き、こういう人たちにリスクがある、ということを伝えてきました。岡山モデルというのは、どちらかというとこのシステム自体や、連絡票のことが取り上げられますが、もう1つの軸となる、研修などで知識を持ってもらう、医療スタッフの意識を変えるというその両輪がなければ、継続につながりません。

岡山大学で2011年より前に何年かかけて、飛び込み分娩の人の背景の調査や、DVを受けた妊婦さんの背景の調査など、いろいろな状況の調査をしておりますが、一つ一つチェックしてもらうには手間がありましたので、この中でも多いものを含めて作成しています。こちらは最初に作ったものですが(資料4 P17)、具体的には、この項目の中で当てはまるものがあれば丸をつけて送ってもらうだけです。個人情報が入りませんが、病院がわかるため保健師さんからその病院に連絡し、そこから連絡を取っていくシステムになっています。細かいことは本にも載っていますので、もしご興味がある方は岡山モデルの内容も含まれる「妊産婦メンタルヘルスケアマニュアル~産後ケアへの切れ目のない支援に向けて~」をご購入いただければと思います。(資料4 P20)

次に、皆さんも気になる点かと思いますが、本当に効果があるのかというところです。こちらのデータをご覧ください(資料4 P22)。うなぎ登りになっている赤の点線が全国の児童虐待相談対応件数のデータです。さきほどの「ハイリスク妊産婦連絡票」は2003年から運用が始まりましたが、なかなか効果が見られていないことがわかります。岡山モデルを始めた2011年から棒グラフの赤側で示しているのが、私たちのシステムに連絡があった件数で、下の青側が従来のハイリスク妊産婦連絡票の件数です。2011年の数字で言えば、従来の連絡票にくらべて倍ほどに連絡が増えていますし、特に赤側の方の連絡には、社会的なリスクが入っていました。2~3年続けると、岡山県は全国と違って県の児童相談所への件数、市町村の相談件数ともに少し抑制されている傾向になっています。

そしてもう1つの効果としては、今まで埋もれていた青側の報告件数が増えていることです。やはりシステムだけではなくて、我々が検証して行くことからも意識が変わり、結果両方が増えたということではないかと思っているところです。

また、もう1つの良いことは、こういったデータを我々が解析して県や各産婦人科の施設にも提供していますので、フィードバックや、何か政策を組もうという時に、とても大事なデータになっている点です。実際に見てみると(資料4 P24)最初の8年間で4600件ほど連絡がきています。連絡を受けたら我々のところから保健師さんに連絡して、妊娠中や産後の早い時期から対応してもらうということになります。

連絡された事例の背景・内容について、一番多いものが未婚です。未婚だから、ということを診断名として書くこともできずに連絡がこなかったということがわかりました。そして、精神科の支援が必要である、などの医療的な要因も入っています。

このメンタルケアは医療に関係します。メンタルケアが必要な妊婦さんの比率を、それぞれ社会的なハイリスクの妊婦さんの中で見てみると、「予期しない(望まない)妊娠」をされた方たちは、10代の妊婦さんや、未婚の方等が多いことは従来から知られているところですが、予期しない妊娠をされた方のうち、2割ぐらいは精神科的な支援が必要な方が含まれています。ですから、このあたりも少し注目されるところかと思います。次に「助産制度」、経済的に苦しい方がどういう方かというと、やはり10代の妊婦さん等になりますが、こちらも14%ぐらいは精神的な支援が必要な方が含まれています。それから、「DV被害妊婦」の場合ですが、夫と家族の支援不足は、夫がDVの加害者になっている場合もあるため、当然ここの数字は増えますが、精神的な支援が必要な方は2番目に多いという結果になっています。このように、解析をしているうちに明らかになりましたが、「妊婦健診回数が少ない妊婦・飛び込み分娩」、「胎児・新生児への愛着が弱い」、「こどもへの虐待」のいずれのケースもやはり3割ぐらいが精神的な要因が関係しています。これらは2018年に解析していますが、その2、3年前からそういう傾向ではないかとみていたので、2018年に一度とりまとめ、県とも相談し、新たな段階へ入ってもいいのではないかということで、メンタル面の支援を強化した連絡票に変えました。全国的にも産後2週間健診、EPDSが取り入れられた、妊産婦の産後うつの問診票です。連絡票にも精神支援についての項目を加えたのが特徴です。そしてもう1点、実際に産科で該当の方を見つけた時に、どこに相談していいのかということです。精神科では、妊婦さんへは薬が出しにくいなどのいろいろな理由があることから、妊婦さんを少し苦手にされている先生が多いため、診てもらえないことがあると産科の方から報告が出てきました。こちらも県に協力をいただいて、このような冊子(資料4 P40)を作成しました。ここでは県の施設の例をお見せします。岡山県精神科医療センターの施設は即時の入院もでき、24時間診れます等、その施設で対応可能な内容を示すマークがついています。個人病院の場合は少し違う内容のマークになるなど、いろいろなパターンがあります。このような冊子を作り、配布は産科だけにしていますが、もしそういう患者さんがいた時には、その方の近くで対応できるところがどこかを探すときに使用しています。

そして、このようなシステムが、コロナ禍でも効果的であったことは明らかになっています。2019年に加えて2020年、コロナが始まった時期には、精神的に支援が必要な妊産婦さんが増えている、社会的にハイリスクな妊産婦さんが増えてきていることが明らかに分かっています。8年間をまとめて解析するだけではなく、解析は月ごとに行っていますので、少しでも早く見つけることが、県や自治体が施策を出す事に役立つのではないかと思っています。詳しい事を知りたい方は、中塚研究室のHPにデータがありますので、ダウンロードしていただければと思います。

さて、2018年からどうなったかというところは、今年、解析をしたところです。さきほどの結果でリスク因子は主に未婚の方でしたが、精神的な支援が必要な方の方が増えてきている状況です。メンタル面の支援のために変更した点もあるので当然といえば当然かもしれませんが、産後は特に精神的な支援が必要であるという結果が出ています。妊娠中はいろいろなリスクが発見されるのでリスク因子は少しバラけますが、産後で言うと、精神的な支援が必要という方がかなり多い状況になっています。今後どうなっていくかについてはあと何年か見ないといけないところですが、残念ながらどんどん減っていくかというと、そうではないことが予想されます。しかし全国平均に比べると岡山県は落ち着いていて、抑制がずっとかかっている状態になっています。ただ、なかなか減っていかないところは、やはり産後だけではなく、こどもが大きくなってからの虐待のケースや、思春期のこどもが妊娠するという課題があります。産後からの子育てはもちろんですが、思春期から妊娠のところも、切れ目ない支援が必要です。ですから、妊娠したい時に妊娠すること、妊娠したら困る時には妊娠しないようにすることを、産婦人科医が性教育を通して伝えていくことで、さらに減らすことに協力できるのではないかと感じているところです。

今後は、精神科との支援を進めようというところですが、並行して研修会も定期的に開いております。これは我々の大学院生が作成したもので(資料4 P54)、「精神疾患既往があり36歳でうつ病を患っている。本人からも不安であるという発言があり、EPDSが高い人」についての対応を検証するためのデータ例です。こういう方は緊急性があると思うため精神科にすぐ診てほしいと思うか?と聞くと、産科スタッフや保健師はすぐ診てほしいとする方が多いのですが、この例だけで見ると、精神科のスタッフは3割程度で、そこまでの緊急性はないと思っているようです。このように、実際に送ろうとする産科スタッフや保健師側と、送ってもらった精神科側で認識のすり合わせができないと、妊婦さんがどうなるかということが懸念されます。妊婦さんは突然自殺したりすることもあるため、こういったところをすり合わせることがとても大事になります。この部分は研修がまだまだ必要で、今後の課題になると思っています。

精神科との協同と合わせて、小児科との支援も進めています。小児科にお母さんがこども連れてきた時にお母さんの状態がどうかを見ていただき、もうし大きいこどもへの支援を、小児科医会と協力してやろうとしているところです。また、全国から岡山大学に来ていただいて、一年間でいろいろなことを学んでいただくという「妊娠中からの母子支援」即戦力育成プログラムを10年以上毎年行っており、人材の育成と、全国展開を進めています。

岡山県産婦人科医会では以上のような活動をしております。今回賞をいただいたということで、我々も改めてもっと頑張らないといけないなというふうに思いました。以上です。ありがとうございました。

健やか親子21事務局:中塚様、ありがとうございました。

続きまして、次第3「意見交換等」に移らせていただきます。

はじめに「健やか親子21内閣府特命担当大臣表彰」の審査をお務めいただきました推進本部幹事会構成員の方々より、評価をされたポイントなどについてコメントをいただき、最後に岡会長からの講評とさせていただきます。その後、ご出席の皆さまから、先ほど発表された取組について質疑応答の時間を設けさせていただきたいと存じます。

それでは、ご発表いただく前に、改めて、幹事会構成員の皆さまをご紹介申し上げます。

健やか親子21推進本部会長をお務めいただいております埼玉県立小児医療センターの岡 明会長です。

健やか親子21推進本部副会長をお務めいただいております、順天堂大学大学院 医学研究科 産婦人科学の牧野真太郎委員です。

国立保健医療科学院 疫学・統計研究部の上原里程委員です。

栃木県下都賀郡壬生町立壬生中学校の大森和枝委員です。

KODOMOLOGY株式会社の岡田優子委員です。

NPO法人 子育てひろば全国連絡協議会理事長の奥山千鶴子員です。

成城木下病院の落合直美委員です。

日本労働組合総連合会総合政策推進局生活福祉局長の小林司委員です。

実践女子大学生活科学部食生活科学科の佐々木渓円委員です。

埼玉医科大学の高橋幸子委員です。

岐阜県健康福祉部 子ども・女性局子育て支援課の丹羽由香里委員です。

山梨大学大学院総合研究部医学域疫学・環境医学講座の堀内清華委員です。

NPO法人 せたがや子育てネットの松田妙子委員です。

北海道医療大学の柳生一自委員です。

委員の皆さま、よろしくお願いいたします。

それでは幹事会構成員の皆さまに、評価されたポイント等についてお伺いします。

牧野副会長からお願いいたします。

健やか親子21推進本部副会長 牧野副会長:外来のため途中から参加させていただきました。すべての発表に間に合わず、申し訳ありません。最後の発表を聞かせていただきました。今回、政策含めていろいろな動きがある中で、特に国民への適切なフィードバックと有益な情報であるかというところに主眼をおいて評価をいたしました。

皆様、素晴らしい研究だと思います。おめでとうございます。

健やか親子21事務局:牧野副会長、ありがとうございました。続きまして、高橋様お願いいたします。

健やか親子21推進本部幹事 高橋委員:高橋です。15時から外来診療に行かなければいけないため、早い順番に回していただきました。よろしくお願いいたします。皆様の取組は、どれも全国に広げて欲しいと思う取組ばかりで、これが広がることで、たくさんの人が救われるんだなと感じました。ですので、今回受賞されたことによって、より多くの人にアイディアが広がっていけば、本当に素晴らしいことだと思いました。シュフレ協会さんの取組では、ママの目線で、自分が検診を受けに行く時間がこどものことを考えるともったいないと思ってしまう、という点に着目されたのは本当に素晴らしいと思いました。一人でも多くの人が子育てを楽しめるような社会になって行くといいなと思いました。ほかの発表も本当に素晴らしく、少しずつ全部からつまんで自分のものにして、周りの人に還元して行きたいと思いました。どうもありがとうございました。

健やか親子21事務局:高橋様、ありがとうございました。続きまして上原様、お願いいたします。

健やか親子21推進本部幹事 上原委員:上原です。よろしくお願いいたします。まずは受賞された皆様方、本当におめでとうございました。

岡山県産婦人科医会の皆様は、岡山モデルによる虐待防止について、本当に長年の取組をなさっていて、心から敬意を表したいと思います。妊娠期からの切れ目のない支援や虐待防止に関して、産科スタッフの皆様に共通認識を持ってもらうように粘り強く関わっておられたこと、それを続けられた事が、この取組が長く続いているひとつの理由なのかなと感じました。また、多くの関係機関でその情報共有の仕組みを工夫されている点がやはり素晴らしいと感じております。今後、精神科、小児科といった医療関係者との連携や、県内の自治体との連携などより深めていただいて、工夫についてまたご報告いただけたらと思います。

次に、高知県立特別支援学校・高知県子育て支援課の皆様、本当におめでとうございます。SVSを用いた特別支援学校の眼科健診で、これまで充分に把握できていなかった障がい児の視力の状況を明らかにし、視力向上が図られたというのは、本当に素晴らしいと思いました。行政内で別々の組織と連携をすることができた点が、この取組を確実なものにしていけた理由のひとつではないかと思っております。今後、他の地域に取組が広がることを願っております。

最後に、一般社団法人シュフレ協会の皆様、本当におめでとうございました。子育てに忙しいママたちが、自分の健康に目を向ける仕掛けをし、検診に足を運びやすい工夫をされたのは素晴らしいと思いました。検診を担当してくれる医療機関等の確保が大変かと思いますが、検診を受けてくださったママたちの感想などをもとに、理解が広がることを願っております。以上です。ありがとうございました。

健やか親子21事務局:上原様、ありがとうございました。続きまして大森様、お願いいたします。

健やか親子21推進本部幹事 大森委員:大森です。受賞された皆様、本当におめでとうございます。わたくしからは感想で申し訳ないのですが、コメントさせていただきます。

岡山県産婦人科医会さんの取組ですが、保護者と学校の教職員というのはパートナーシップをもって、こどもたちの健康や、笑顔のために働いております。その中で、将来的に虐待を防止できるというこのシステムは、ぜひ、ほかの県にも普及してほしいと感じました。また、高知県立特別支援学校・高知県子育て支援課さんの取組について、最近では学校の教育はICT教育が主になっております。そういった視点では、こどもたちの目の健康にわたくしも養護教諭として興味があるところです。ぜひSVSをほかの県にも波及していただいて、目の健康から少しでも多くのこどもたちの学習意欲の向上の手助けや、日常生活の困難さを解決できたらと考えております。最後に、シュフレ協会さんの、ママたちのがん検診応援プロジェクトの取組ですが、学校においては、がん教育を行っております。外部講師指導による教育ですが、その中の感想に「ぜひ家族にがん検診を受けてもらいたい」「検診を受けるように言いたい」というこどもたちの感想が多く見られます。保護者の健康はこどもたちの笑顔や、そういった願いにも繋がっていると感じておりますので、ぜひこちらの取組も幅広く広がっていけばと考えております。本日、わたくしも大変勉強になりました。ありがとうございます。以上です。

健やか親子21事務局:大森様、ありがとうございました。

お時間の関係で順番を前後させていただきます。堀内様お願いいたします。

健やか親子21推進本部幹事 堀内委員:ありがとうございます。時間の都合で、先にさせていただきました、堀内です。

今回受賞された皆様、本当におめでとうございます。本日発表を聞かせていただいて、どれも非常に素晴らしい活動で、これをきっかけに今後全国に展開していけばいいなと思いました。

高知県立特別支援学校・高知県子育て支援課さんの取組に関して他の方も言われておりましたが、すでにその地域にあるもので、連携を改善するだけで実施が可能になった点は、目の付けどころが本当に素晴らしいと思いました。ほかの地域でも充分に展開できるポテンシャルがあると思います。発表の中でも、今後全国展開を、とおっしゃっておりましたので、ぜひ広めていただければと思います。

シュフレ協会さんに関しても、お母さんが受診を控える理由に焦点を当てた点が非常に素晴らしいと思いました。また、啓発をするだけではなくて、知識だけではどうにもならない受診の環境整えるという部分を強化しているところが、非常に評価できると思います。地域で子育てを支える環境が今後ますます整っていくことを願っています。

最後に、岡山県産婦人科医会さんですが、データに基づいて活動の評価や、次の取組を決めている部分が素晴らしいと思いました。長年続けてこられて精神科との連携も改善されていくということで、今後の活動についても、ご報告を受けることを楽しみにしています。以上になります。どうもありがとうございました。

健やか親子21事務局:堀内様、ありがとうございました。続きまして岡田様よろしくお願いいたします。

健やか親子21推進本部幹事 岡田委員:KODOMOLOGYの岡田です。よろしくお願いします。本日は受賞者の皆様おめでとうございます。

候補の皆様の色々なケースを読ませていただいて、どなたも本当に素晴らしい志を持って活動されているのですが、特に今回受賞された3団体に共通して感じたのは、マーケティング力です。対象者となる方々のインサイトを見つめて、対応策を丁寧に考えられていると思ったことと、もう一つ共通して、連携力がすごいなと思いました。素晴らしい志を持っていても、やはりできることに限りがあると思うので、その分野で力を生かせる方々と連携して、実現されていることが素晴らしいと思いました。本日は、ありがとうございました。

健やか親子21事務局:岡田様、ありがとうございました。続きまして奥山様、お願いいたします。

健やか親子21推進本部幹事 奥山委員:受賞者の皆様、おめでとうございます。子育てひろば全国連絡協議会の奥山です。普段は幼稚園・保育園等に行く前の親子の交流の場を運営している全国組織になります。今回、本当に皆さんの現場の力といいますか、こどもと家族に関わる立場からもっとできることがあるのではないか、自分たちが成功したことを、他都市にも他県にも広げていきたい、そういう強い思いを感じることができました。

高知県立特別支援学校・高知県子育て支援課さんは、自分たちが発見したことが、こんなにこども達とその家庭にとってプラスになるのであればもっとこの活動を広げたい、という思いで活動をしていらっしゃいますが、福祉と教育の壁を越えて連携させることはとても難しいことです。その連携に成功し、それをまた普及活動していこうという点が、素晴らしいと思いました。

次にシュフレ協会さんですが、活動の準備ができたところから全国を回られているということで、私も神奈川県の横浜で活動していますが、どこかで連携させていただけると嬉しいなと思っています。「お母さん達はどうして検診に行かないんだろう。」そこを突き詰めてこの形に到達したということが、お話を聞いてよくわかりました。本当におめでとうございます。

最後に、岡山県産婦人科医会の皆様、ご発表にもありましたが、子育て支援は産後からでは遅いというのは本当にその通りだと思います。私たちも子育て支援を、妊娠期からの切れ目ない支援の中に混ぜていただきたいという思いで、両親教室を保健師さん、助産師さんと一緒にさせていただいたりしています。ここをぜひ重層的に深めていくことがとても大事だと思いましたので、ぜひ今後ともよろしくお願いいたします。おめでとうございました。

健やか親子21事務局:奥山様、ありがとうございました。続きまして、落合様お願いいたします。

健やか親子21推進本部幹事 落合委員:成城木下病院で助産師をしております、落合と申します。よろしくお願いします。今回皆様から応募された取組は、いずれもこどもたちのために、そして家族のために母子保健分野で努力されている内容で、正直選ぶことがとても難しい状況でした。その中でそれぞれの部門ごとに取り組んでいる内容を皆さんで話し合い受賞の取組を考えさせていただきましたが、日頃の気づきをどのようにすれば良い方に改善していけるのかということを、皆さんで取り組んで連携し、改善して積み重ねていくというところをすごく感じました。全国の方々にとても参考になるような内容だと思いますので、これからも、努力を続けていきつつ、この取組が皆さんにどんどん波及して、こどもたちが、そして家族の人たちが笑顔になるような社会実現に貢献していければと思っております。今回はありがとうございました。

健やか親子21事務局:落合様、ありがとうございました。続きまして、小林様お願いいたします。

健やか親子21推進本部幹事 小林委員:労働組合、連合で社会保障分野を担当しております小林と申します。皆さんのお話を聞いて、制度の谷間に陥って困っている人、あるいは困っていることに気づいていない人など、そこに光を当てて取組など地域で展開されていることに、心から敬意を表したいと思います。それと同時に、女性ばかりでなく、やはり男性の側にも意識を高めていかなければと気づかされた次第です。もしそういった困っている人のそばに居るパートナーの方が仕事ばかりが中心というような状況だとすれば、意識を高めていくのはもちろんですが、職場段階で私たちにできることがたくさんあると再認識した次第です。そのあたりを頑張って参りたいと思いますし、皆さまの取組との相乗効果で、こどもまんなか社会を医療の方面からも実現していければと思います。今後もぜひ宜しくお願い致します。ありがとうございました。

健やか親子21事務局:小林様、ありがとうございました。続きまして佐々木様お願いいたします。

健やか親子21推進本部幹事 佐々木委員:本日は受賞された皆様おめでとうございます。各委員の先生方も話されたところと重複する点はございますが、シュフレ協会さんのお母様のがん検診に関して、無関心層に対するアプローチはヘルスプロモーションの中で非常に難しいと考えられている所ですが、そこに対して、どうしたら動くのかということをきちんと考えてアプローチをしている点が非常に素晴らしいと考えました。

高知県立特別支援学校・高知県子育て支援課さんのSVSを使った取組について、これは障がいがある人とない人が同じスタートラインに立つことを目指すという、障がい者に関する福祉の基本的な部分に直結した内容で、全国に展開すべき取組だと考えました。最後に岡山モデルの虐待に対する取組ですが、こちらは成育基本法に基づく取組にも関係してきますけれど、我が国における健康危機という形で虐待に対しては対応しなければいけない中で、きちんとデータを見た中で他機関と連携するという点が非常に素晴らしい内容だと考えました。以上でございます。

健やか親子21事務局:佐々木様ありがとうございました。続きまして丹羽様お願いいたします。

健やか親子21推進本部幹事 丹羽委員:受賞者の皆様おめでとうございます。

まず高知県立特別支援学校・高知県子育て支援課様の取組ですが、当県においても3歳児健診におけるSVSは導入しておりまして、市町村の購入、あるいは県からの貸与を含め、全41市町村で実施しています。そのため、SVSの検査効果については大変手応えを感じているところでございます。その中で、視力の発達は6歳までというものの、検査がしにくいお子さんに対して視力を正しく測って矯正につなげるという着眼点がとてもよかったと思います。視力を得ることによって活動や学びの幅が広がり、児童生徒にとって大きな利益となっている事がよかったと思います。また、県の立場から考えますと、県教委・学校・子育て支援課が一体となった点が素晴らしいと思います。当県でもぜひ参考にさせていただきたいと思っております。

シュフレ協会様の取組ですが、コロナ禍においてがん検診は確かに受診率が下がっている状況でございます。なかでも、乳がんや子宮がんは30代から40代という若い方の罹患が多いがんであり、女性には必ず受けていただきたいと思っているところでございますが、小さなこどもを育てているときはどうしても自分よりもこどもに意識が向いてしまう、他にもこどもを預ける場所がないなど、そういった壁を越えてイベントを企画し実施されている点が、そのままの心と行動に寄り添っており、大変優れた取組だと思いました。

また、岡山県産婦人科医会様の岡山モデルについて、妊娠から出産・子育て期まで切れ目のない支援体制ということで、今は伴走型相談支援として全国で展開されているところですが、これを2011年から、産科・大学・県が一体となって10年以上も前から開始されている点について大変感服いたしました。その効果が社会的ハイリスク妊婦と虐待への支援、そして多職種連携による研修会などの展開につながっているのだと考えます。また、これら豊富な経験と多職種の力をもって、ご支援のスタッフのためのリカレント教育にまでに発展されているところが大変素晴らしいと思いますし、当県でもぜひ目指したいと思っております。ありがとうございました。

健やか親子21事務局:丹羽様ありがとうございました。続きまして松田様お願いいたします。

健やか親子21推進本部幹事 松田委員:皆さま、受賞本当におめでとうございます。私は世田谷区という地域の子育て支援の活動者ですので、皆様の取組と連携したいという気持ちを持ってお話を伺いました。どうしても、見えない人や見えにくい人はなかったことにされやすい、ということをいつも思っておりますので、そういった方々のところに注目してくださった取組ではないかなと思います。声が出せなかったり、表現がしにくかったり、自分が困っていることに気付いていない、気付けていない方々に近づいていくことは本当に難しいです。そこに果敢にチャレンジされたと思います。また、障害や虐待などと名づけられると、専門性の高いところには手厚く近づくけれども、逆に、地域からは遠のいてしまい辺境化されるということを日頃感じています。そういったところを今度は連携という形でカバーされている点も素晴らしいと思います。私たちはフードパントリーをやっていますが、交通費も出せない方でもこどもにはご飯を食べさせたい、だから自分のケアはおろそかになっているという方もいて、検診についても同じ状況になっています。今日は中学校の家庭科の授業に赤ちゃんを連れて行く活動をしていましたが、虐待に繋がらないように、ティーンエイジャーのときから地域で取り組んでいるところとつながっていただきたいなと思ったり、いろいろな思いを持って拝見させていただきました。本当どうもありがとうございました。

健やか親子21事務局:松田様ありがとうございました。続きまして柳生様お願いいたします。

健やか親子21推進本部幹事 柳生委員:北海道医療大学心理科学部の柳生と申します。小児科と児童精神科医をしております。いろいろコメントを考えておりましたが、順番が最後のため他の先生方と同じような事しか申し上げられないのですが、コメントいたします。私の立場で感じておりましたのは、高知県立特別支援学校・高知県子育て支援課様の取組で、重症の障がい児の方は目が悪くてもなかなか発見できずにいて、それが行動・問題につながっていること、これは聴覚も同じですが、そういったところは見逃されやすいことがありますので、とても良い活動だと思いました。シュフレ協会様のがん検診の取組も、なかなかそういう事にアクセスできなかったり、我慢している状況にある方々に手を差し伸べる素晴らしい活動だと思いました。岡山県産婦人科医会様の虐待防止の取組について、私は非常に感銘を受けました。虐待を受けたお子さんや、虐待をしてしまう親御さんを私も診療で診たりすることがありますが、そういった時に援助に繋がるかどうか、児童精神科医の所までつながる方は、ある意味すごく限られておりますので、そういう意味では、産婦人科の先生方がそういった観点でネットワークを作ってくださるのは、素晴らしいことだと思いました。どの取組も横の連携をとても上手にされているなという印象を受けました。また、援助を求めにくい方々に、援助が受けやすい状況を作ってくださっている活動だと思いましたので、ぜひこの受賞を機に、さらに活動を発展させていただければと思いました。よろしくお願いいたします。本日はおめでとうございました。

健やか親子21事務局:柳生様、ありがとうございました。委員の皆様、コメントいただきましてありがとうございました。

それでは最後に推進本部会長の岡会長より、本賞についての総評をいただければと思います。岡会長よろしくお願いします。

健やか親子21推進本部会長 岡会長:皆様のご発表ありがとうございました。まず、受賞された関係者の皆様に心よりお祝い申し上げます。

選考の過程を少しご説明させていただきますと、皆様から応募いただいた多数の取組の中から選ばせていただきました。応募資料を全部読ませていただくと、全国の様々な場面で実に多くの真摯な取組をしていただいており、大変に心強く、ありがたいことだと感じながら拝見させていただきました。こどもたちの心身の健やかな成育や妊産婦の方々の健康の保持増進を願う取組というものは、本来、順位をつけたりする様なものではないとは思いますが、応募してくださった皆様に差し上げるというわけにも参りませんので、僭越ながら成育基本法の視点から審査をさせていただきました。選考は本年も難航いたしましたが、委員の皆様からいろいろな視点、お立場からご意見をいただき議論をして、選考をさせていただきました。

しかしながら、本日ご発表いただいた3つの内容については、資料で私が読み取った以上の内容があり、本当に改めて関係者の方々の熱意を、資料以上に感じることができたと思います。

最初に発表いただいた高知県立特別支援学校・高知県子育て支援課様は、課題のあるお子さんたちの視力をどのように工夫したら測定でき生活の向上につなげられるかということで、ご発表いただいた安岡先生が学校保健の枠を超えて取り組んでいただいた本当に素晴らしい取組だと思います。他の委員の先生方からも、選考会の時にこうした取組は全国に広がるといいですね、というご意見もいただいたところです。

2番目に発表いただいた一般社団法人シュフレ協会様は、委員の先生方からもお話があったように、どうしても子育てに追われるお母さんたちはご自分の健康を後回しにされがちです。そこにスポット当てて支援された点、特に、スライドの中でもありましたが、こどもも楽しいという点に注目していただくことで、お母さんたちがそれに応えていただいたのかなと思いました。また、その機会だけではなくて、その後のお母さんたちの検診受診、あるいは健康意識につながっているという意味で、本当に皆様の努力がご成果を上げられているのではないかと感じました。

最後に、中塚先生にご説明いただきました岡山県産婦人科医会様の取組は、本当に長年にわたって地域が連携し、気になる母子を支援していこうというもので、地域が一体となってどのこどもも家庭も取り残されない取組をされていることに、本当に感銘を受けました。こうした活動において、ネットワークを作ると言うのは簡単ですが、中塚先生も個人情報のことについても触れていらしたように、進めていくと難しいことが往々にしてあります。そうした中でも地域の皆様が熱意を持って、こうしたネットワークを作っていただいて、そしてまたそれを数値化するという点が素晴らしく、また、特に嬉しいと思いましたのは、岡山県では虐待の件数が抑制されているかもしれないという点です。そのアウトプットも出されていることが大変心強いと思うと同時に、非常に感銘を受けました。本当にありがとうございました。

改めて本日皆様のご発表を伺いまして、受賞するにふさわしい活動ばかりであったと再認識をさせていただきました。本日は誠にありがとうございました。

健やか親子21事務局:岡会長、ありがとうございました。

では最後にご出席の皆様からの質問に移らせていただきます。

現在質問がないようですが、質問がございましたら、所属団体とお名前を合わせてご質問内容をZoom上のQ&Aからお送りください。よろしくお願いいたします。

特段ご質問がないようですので、このあたりで終了とさせていただければと思います。ご出席の皆様におかれましては、ご参加いただきまして、誠にありがとうございました。

最後に事務局より、健やか親子21取組のデータベースについてご連絡申し上げます。詳細はチャットにてお送りいたしますので、ご一読いただければと思います。

本日はZoomの入室にてご不便をおかけし、開始時間も遅れましたこと、大変申し訳ございませんでした。回の途中からご参加された方もいらっしゃるかと思いますので、前半についてなど含めた今回の総会の議事録につきましては、早めにご共有させていただきますので、そちらでご確認いただければと思います。

以上をもちまして、令和5年度第23回健やか親子21推進本部総会を閉会いたします。

本日、ご出席、並びにご視聴いただいた皆様、誠にありがとうございました。今後とも、健やか親子21の普及啓発にご支援の程、よろしくお願いいたします。
(了)