本文へ移動

幼児期までのこどもの育ち部会(第5回)

概要

日時:令和5年7月28日(金)16時00分から18時00分
場所:オンライン

【オンライン配信URL】
URL:https://youtube.com/live/kKUm0aCapdI

議事

  1. 団体ヒアリング
  2. 委員ヒアリング
  3. その他

資料

議事録

秋田部会長: 皆様、こんにちは。ただいまより、第5回「幼児期までのこどもの育ち部会」を開催いたします。

今回もオンラインでの開催となっております。

御多用の中、お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

初めに、事務局から委員の皆様の本日の御出席状況と議事の確認をお願いいたします。

高木課長、お願いいたします。

高木課長: 本日の委員の皆様の出席状況でございます。御欠席の御連絡をいただいております委員は、稲葉委員になります。他の委員におかれましては、オンラインにおいて御参加いただいています。

本日の議事は、議事次第に記載のとおり、2つになります。

1つ目は団体ヒアリングでして、全国児童発達支援協議会、日本知的障害者福祉協会、日本発達障害ネットワーク、家庭的保育全国連絡協議会、全国病児保育協議会の5団体から発表いただくことになります。

2つ目の議題であります委員ヒアリングに関しましては、都竹委員、秋山委員の2名から御発表いただくことになっております。

議題1の団体ヒアリングにつきましては、初めに3団体の御発表をいただきまして、後にまとめて質疑の時間を取らせていただきます。その後、残り2団体の御発表、まとめて質疑という形で進めてまいります。

ヒアリングに御出席いただく各団体には、3月に取りまとめていただきました有識者懇談会の論点整理と資料1-1をお送りさせていただいているところでございます。

また、前回の各委員の主な御意見については、資料1-2でまとめているところでございます。

本日もどうぞよろしくお願いいたします。

秋田部会長: どうもありがとうございます。

それでは、議事1へ移らせていただきます。

議題1、団体ヒアリングでございますが、各団体から10分以内で御発表いただきます。

初めに、全国児童発達支援協議会、松本様、水流様、どうぞよろしくお願いいたします。

松本氏: よろしくお願いします。

それでは、全国児童発達支援協議会、通称CDS-JAPANです。

今回はこのような機会をいただき、感謝申し上げます。

本日は理事の松本と水流で報告させていただきます。

では、スライドを次に移してください。

CDSは、障害児通所支援事業所等、全国520か所が加盟している団体です。現場の声を大事に調査・研修したり、国の調査研究や検討会にも参加させていただき、障害があってもなくても同じこどもである視点に立ち、私たちのこどももまんなかの社会を実現することを願い、活動している団体です。

では、次のスライドをお願いします。

まず、新生児期からの支援の流れでございます。新生児期から医療機関、退院後にかけての支援の流れを示しています。ここでは主に脳性麻痺や身体疾患を持つことになるこどもが中心となります。全てのこどもは生まれてすぐから何らかの支援が必要不可欠です。特に小さく生まれたり、仮死状態で生まれたり、病気を持って生まれたりした場合には、医療機関での集中的な治療が必要となります。周産期医療機関を退院後、全てのこどもを対象にこんにちは赤ちゃん事業や、特定のこどもへは新生児訪問指導が行われますが、退院時にこどもに何らかの障害の可能性が想定された場合には退院前のカンファレンスは重要で、それを経て医療機関、訪問看護ステーション、児童発達支援事業所などに引き継がれ、地域での支援を受けるようになります。退院時に障害の可能性を想定しない場合でも、しばらくの間は周産期医療機関でのフォローアップを受け、その経過の中で障害の可能性が出てきた段階で地域の支援に移行するという丁寧な見守りや相談、対応できる資源や機関があることがとても重要になってくると考えています。

次のスライドをお願いいたします。

次は健診後の流れです。

ある政令市の状況です。この政令市では1歳半健診での発見と対応に重点を置いており、気になる段階から発達支援広場での支援が始まります。一方で、支援につながらないケースのフォローも重要となり、保健師さんの訪問、相談等の伴走をベースに、在宅ケースでは地域子育て支援拠点事業の発達支援プログラムを活用したり、保育園等の在園児には巡回事業や保健師の園訪問から始まり、保育現場の保育士さんたちと一緒にこどもの理解や関わり方への助言や、児童発達支援につなげるなど、センターや事業所も関わっていくという流れになっています。

次のスライドをお願いします。

こどもたちの状況によって様々な支援の流れがあるわけですけれども、課題となることは、やはり多様な支援の流れの中で、親の不安や葛藤にどう寄り添いながら、安心できる応援ネットワークとつながる出会いができるかということがとても大事と考えます。

家族の暮らし方を大事にしながら、バリエーション豊かに選択できる支援や環境がつくられていくつながり、また大変な家族を振り回さない支援も大事な視点と考えております。

家族支援は本当にマスト課題と考えます。ケアニードが高ければ高いほど専門性は求められます。目の前のこどもの行動の意味をともに考え、その子に合った関わりをクリエーティブにつくっていく。それも大事ですし、それを家族としての自己肯定感へつなげる支援も大事と考えます。

次のスライドをお願いします。

こどもの関わる制度、仕組みが大分いろいろ見直され、新しくなっていくのが現状です。ただ、これまでの縦割り行政の中で、その支援の中身というのが分かりにくくなっていると感じています。障害など多様なケアニードがあるこどもの現状把握、それも全体把握を行い、仕組みの中でこの子たちが弾き飛ばされず、その内容になっているか、吟味、検討をぜひ進めていっていただきたいと考えております。

次は水流より発表いたします。

水流さん、お願いします。

水流氏: 鹿児島の水流です。よろしくお願いいたします。

次のスライドをお願いいたします。

次に、こどもの育ちを支える児童発達支援センターの役割について説明をします。

まず、未就学児童通所に関わる説明を一部行います。未就学の児童発達支援を提供する事業所としては、児童福祉施設として地域の中核となり、地域拠点として、専門性を発揮する児童発達支援センターと、こどもたちの身近な地域で通所しやすいよう、設置基準のハードルが低くなっている児童発達支援事業所があります。就学を迎えたこどもで継続した支援が必要なこどもは、放課後等デイサービスにつながっていきます。

平成24年より制度化された保育所等訪問支援は、こどもの並行通園先の幼稚園や学校等へ訪問員が出向き、こどもの支援の統一に向けたやり取りを行います。

児童発達支援を利用するこどもの経緯や通所してくるこどもの状態像、家族支援、関係機関との連携については、資料を御参照ください。

次をお願いします。

この図は、児童発達支援センターの役割と関係機関との連携について現わしたものです。児童発達支援センター、児童発達支援事業所、どちらも共通して未就学のお子さんの発達支援、家族支援、地域支援、就学を見据えた移行支援を行いますが、さらに児童発達支援センターは地域の拠点となり、行政機関、教育機関、医療機関、福祉機関とより連携を図りながらこどもや家族を支えます。また、近隣の児童発達支援事業所、放課後等デイサービスの療育の質の向上、スーパーバイズの役割も求められています。

次をお願いします。

こちらは肢体不自由のあるこどもの事例を用い、制度のはざまにいるこども、より特殊性があり、専門的な支援が必要なこどもについても細やかな対応が必要であることをお伝えします。

近年、医療的ケアが必要なこどもとその家族への周知度が増し、様々な制度上での仕組みづくりがなされつつあります。医療的ケアは日常的に必要ではなくとも、多くの配慮が必要であったり、制度のはざまに陥りやすかったりする肢体不自由のこどもや、専門的な知識や技術が支援者に求められる視覚障害、聴覚障害があるこどもたちなども、一人一人に合った支援が必要です。一元化の中でも、それぞれの障害に特化し、また、それぞれの障害の文化も引き継ぎながら、誰一人取り残されることなく、個々のこどもに合った支援が受けられる体制づくりが望まれます。家族が孤立しないためにも、保護者同士のつながりや情報共有機会の確保、ピアな関係を提供することも大切です。

スライドでは、事例として、肢体不自由のあるこどもが出生後3か月で在宅生活に移行し、生後12か月までを想定して通所支援で提供されるべき育ちの支援について提示しました。こどもの障害特性により、このような支援プロセスが多様に準備されることが求められます。

最後です。お願いします。

まとめに入ります。こどもを授かり、定型発達が進んでいるという認識の中で子育てを行っている家族と、何かしらの不安要因を抱えながら子育てを行っている家族であっても、全てのこどもには育ちの保障として育成支援が必要となります。

共通支援機関としては、出産から就学前までの全てのこどもが関わるであろう機関を上段に記載しています。

保護者の状態では、家族の感情の変化を「悲哀の仕事」を参考に、何らかの発達上の課題や障害の疑いから、告知を受け、受容を進める過程を左から右側に家族の状態として示してあります。様々な葛藤を乗り越える中で、どこの段階で障害児相談支援専門員とつながれるかも重要であると考えます。

特別支援機関としては、子育てに悩んだり、つまずいたりする家族の中には、児童相談所や要保護児童対策地域協議会の中でフォローされるケースも出てきます。多くのこどもや家族の困りごとが、地域のこども部会などを通して自立支援協議会で議論されることも制度としては整っています。

この図は、私たちが関わるこどもが、一般子育て支援の家庭から告知を境に特別なニーズがあるこどもとして移行していくことを表現しています。いきなり障害児支援となるわけではないのです。「すべてのこども」として広くカバーされながらも、障害がある、またはあるかもしれないというこどもについては、より手厚く関係機関と連携を図ることが重要です。児童発達支援につながってきたこどもを決して抱え込むことなく、こども本人を中心に専門的な療育を行いながらも、こどもたちの本来の居場所である幼稚園、保育所等の一般児童施策へとつなぎ、後方支援を行うことがインクルーシブの芽生えにもつながると考えます。

児童発達支援センターには、こどものよりよい育ちを支え、障害があってもなくても全てのこどもたちが「生まれてきてよかった」と思える人生が歩めるよう、将来を見据えた支援が求められていると考えます。

以上です。

秋田部会長: どうもありがとうございます。松本様、水流様、ありがとうございました。

それでは、続きまして、日本知的障害者福祉協会、北川様、どうぞよろしくお願いいたします。

北川氏: こんにちは。このたびはこのような機会をありがとうございました。

それでは、「障害のあるこどもと家族を支える」ということで、日本知的障害者福祉協会の北川が発表いたします。

資料を今出します。

日本知的障害福祉協会ですが、昭和9年に創立して、来年で90年の歴史がある団体です。

現在は、こどもから大人まで知的障害に関わる事業所6,500か所余りの事業所が会員になっております。

全ての命が大切に育まれるために、障害があってもなくても、こどもはみんな社会の宝物であるというミッションで私たちは歩んでまいりました。

児童発達支援センターですけれども、発達支援、家族支援、地域への支援を行っていますが、先ほど健診からの流れや具体的に発達支援の在り方についてCDS-JAPANのほうで報告していただきましたので、私のほうでは時期における障害児支援の位置づけ、家族支援、インクルーシブの在り方などをお話ししていきたいと思います。

発達支援は適切に配慮された子育てです。障害児と告げられると、自閉症、知的障害、ダウン症ということで、特別な子、特別な対応というふうになると思うのですけれども、そうではなくて、障害のあるこどもは他のこどもと異なったニーズを持った特別なこどもと考えるのではなく、通常のこどもの持つニーズを満たすのに特別なニーズ・工夫が必要な普通のこどもということ、鳥取県の総合医療センターの北原先生がおっしゃっていた言葉です。ここの特別なニーズ・工夫が必要というところが発達支援であります。

この部会でも大切にされていることだと思いますけれども、アタッチメントは障害児も同じです。乳幼児期のこどもの育ちは人格形成の基礎となりますので、いろいろと不安を受け止められて安心となって、自己肯定感につながります。こどもは養育者の心をたどって物事を知っていきますので、お母さん、お父さん、おじいちゃん、おばあちゃん、保育園の先生、児童発達の先生などに安心の輪が広がること、アロマザリングがとても大切になってくると思います。

不安や恐怖を受け止められる大人がいないと、障害のある子もやはり健康な心が阻害されたり、後から中学生ぐらいになって私たちのところに来るのですけれども、本人も周りも困り感が高くなってきます。

なので、全てのこどもは大人との愛着関係が必要だということは変わりありません。特に障害特性があるこどもは、時間がかかって難しいこともありますが、安心感、信頼感は一生の土台となります。

そして、障害児支援というと訓練とかトレーニングとかと思われる方もいらっしゃると思うのですけれども、そうではなく、楽しい日々の積み重ね、障害のあるこども、その子に合ったわくわくするような楽しい遊びが大切です。そして、楽しい遊びには脳が覚醒されていないと駄目なので、睡眠、それから、生活の安定なども必要です。睡眠などがかなり難しいこどもは医療と連携しながら支えていきます。

そして、やはりセンシティブなこどもが多いので、ちょっとしたことで自尊心の低下とか傷つきやすいとか、大人になったとき、思春期を見据えて、やはりこの安心感というのがとても大事になってくると考えています。

このように朝の会、ダウン症のこどもと自閉タイプのこどもがここで参加しています。

それから、山に登ったり、給食を食べたり、行事をしたりして、こういう毎日のこどもたちの日々の積み重ねが育ちにつながります。

障害のあるこどもは一人一人違いますので、トータルな、そして、複数の視点からのアセスメントが大切です。そして、チームで支援します。

楽しい遊びや行事を通して、こどもはできるできないとかではなく、お父さん、お母さんや先生方にいっぱい励ましてもらって、自分の世界を広げていきます。

「お母さん、家族を支える。」です。フィンランドのネウボラを見学したときに、保健師さんがこどもを救うには家族が救われなければならないということをストレートにおっしゃっておりました。

多くの障害のある子を持つお母さんは、最初は戸惑ったり、不安があったり、葛藤があります。これはお母さんの手記です。「つらかった。何度も死のうと思った。育てていかなければならないという思いと、この子がいなかったらという思いが交互に来た。夢であってほしい、朝目覚めたらお医者さんが来て何かの間違いだったと言ってくれるはずだ。何で私なのつらい。どうやって生きていけばいいの。生きていけない。でもかわいい。幸せ感じるはずだったのに。私の人生も終わった。両親にも悲しい思いをさせてしまった。」こどもは悪くないですけれども、お母さんがこのような思いを持つことはごく当たり前のことです。ですから、ここにはサポートが必要です。

そのサポートですが、むぎのこ発達クリニックの木村先生が、研究の中では、やはり自己肯定感をお母さんたちが高めるためには、医療・福祉・教育の支援も大事だけれども、やはり当事者同士の力が必要ということをおっしゃっておりました。そして、障害のある子の親としての誇りやプライドを形成したり、育んだりして、自分たちのアイデンティティーの力になるのだと思います。

また、最近のお母さんの中には、こどもの障害とお母さん自身のケアニーズがある場合がありますので、虐待等のリスクが高まることもあります。

そこで、心理支援や生活支援が必要です。このように心理支援、サポートは、グループカウンセリングなどでは、自分の悩みは自分だけではなかったのだということで、子育ての大変さや喜びを語り合ったり、自分の悩みなどが話されます。ここでは強さで自慢し合う子育てというよりは、自分の辛さとか弱さでつながる場になっています。

また、心理支援だけではなく、具体的な生活支援も必要です。ヘルパーさんやレスパイトのためのショートステイも大切になってきます。

障害児だけではなくて、全てのこどもは社会が温かく包むことが大切だと思います。そして、障害のあるこどもや家族にはさらに手厚い子育て支援、家族支援が必要です。

いずれにしろ、これからはこどもと子育て当事者を真ん中に置いて、お父さんお母さんだけで頑張るとか、自己責任というより地域みんなで支え合って子育てしていくということが大切だと思います。

これは有識者の懇談会の中の基本指針の中にあった理念で、「すべてのこどもが一人ひとり個人として、その多様性が尊重され、差別されず、権利の保障がされる」と書かれてありました。

そのため、今後インクルーシブが必要だと思いますが、ただ、本当にいろいろ叫ばれていますけれども、障害のあるこどもが一緒の場にいることが少ない日本では、理解し合うのが難しかったり、出生前診断で障害が分かるとまだ、90%が妊娠を中断してしまう現状があります。

そして、最近行ったイタリアでは99%以上インクルーシブでした。そして、学校の考え方が共に生きることを学ぶことが最も大切ということで、学校は学習のための前に社会的な場であって、学校というのは教育共同体である。したがって、全てのこどもが自分自身のアイデンティティーの重要な側面を障害があってもなくてもつくり上げることができなければならないということでした。

本当に学校という場が、学力や知識を身につける以前に、異なるアイデンティティーを持つこどもたちが関係性を築きながら共に学ぶということを中心に教育が行われていました。具体的には、1クラス20人の先生にクラスの先生と障害のある子にサポートの先生がついて、ここまではいろいろな国であるのですけれども、日本でも行われていると思うのですが、イタリアでは保健機構から先生が障害のあるこどもとないこどもがお互い理解できるような人間関係や環境の調整を行っている先生がいました。こども同士を理解し合うような先生の存在でした。障害があるということはマイナスではなくて、個人の因子と環境の因子の総合作用でつくられたものですので、生活モデルが具現化した内容でした。そして、特別支援や発達支援とインクルーシブは対立するものではなくて、全てのこどもに有用であり、多様性を尊重するためにあるという考え方でした。

そして、いろいろな支援は、本当に境があってできてきたと思うのですけれども、それは安心の場を提供してくれる。今まではそうだったと思いますが、しかし、ある程度日本でもいろいろ特別支援や発達支援が進んだ段階では、その引かれている境や壁を問い直して越えていく、新しく引き直すということが、このこども家庭庁ができた大切な役割になるのかなと思います。ぜひ就学前の指針を考えるときに、これらの新しいやり方を協働の取組として障害児支援の側と一般こども施策の側と論理的に考えて実践していかなければならないと思います。

こどもたちが本当に生まれてきてよかったと思える、この世は生きるのに値すると思える多様性が尊重される社会のために、私たち障害児支援も皆さんと手をつないでいきたいと思っております。

御清聴ありがとうございました。

秋田部会長: 北川様、どうもありがとうございました。

続きまして、日本発達障害ネットワークの内山様、どうぞよろしくお願いいたします。

内山氏: お願いします。

では、資料をお願いします。

日本発達障害ネットワークの内山です。

今日はこんな機会を与えていただいて、ありがとうございました。

日本発達障害ネットワークは、ここに書いているような発達障害に関係のある団体、専門家、親の会、当事者会等が集まってつくっている団体です。

次をお願いします。

今日のテーマは多様性ということをお話ししたいのですけれども、いろいろ医学の進歩によって、20世紀は健常児と障害者と結構分かれて論じられていました。ただ、現在は発達障害の定型発達の間に重なりが大きいということがだんだん分かってきて、特に最近10年間はneurodivergent、神経学的多様性ということがうたわれています。つまり、発達障害のある子もない子も重なる部分が非常に大きい。発達障害のない子もそういう特性を少しは持っていますし、発達障害のある子ももちろん定型と同じような特性を持っているということです。まさにバイオの進歩によってこういうことが分かってきています。

次をお願いします。

こどもまんなかのアセスメントですけれども、我々はこどもの支援をするときに、やはりこどものアセスメントは当然必要です。同時に、社会のほうですね。保護者とか家庭、地域環境、あるいは支援する団体である保育所とか幼稚園等のアセスメントも必要であろうと考えています。そのアセスメントとは、単に評価ではなくて、個々のこどもの個性とかニーズ、個々の親御さんの個性やニーズの把握がアセスメントと考えています。

では、次をお願いします。

身体・こころ・社会、バイオサイコソーシャルの考えですけれども、例えば発達特性は脳の機能が基盤にあるため、これは身体と我々は考えます。社会、いろいろな支援者が社会です。こころ、発達障害のある子もない子もこどもの心は同じように持っています。発達特性自体は変わらないので、社会を変えていく。社会がどういうふうにサポートするかを変えて、こどもの心の発達を促す。それが本来の支援だと考えています。

次をお願いします。

次に、こどもの幸福を考えたいのですけれども、ウエルビーイングと言ってもいいと思います。こどもの何が幸福かというときに、どうも日本には、将来のために今頑張るんだ。親に対してもこどもに対してもそのような言い方がされることが多いと感じています。大事なことは、こどもの今、現在が幸福であること。こどもの心が今がハッピー、幸福と考えていること、それが一番大事だと思います。

個々のこども、それぞれが幸福であること。これが一番の目標になります。特別支援教育という言葉が日本であります。Special educationを訳したものですが、specialは特別ではない。特に分けるという意味ではなくて、こどもの個性とか特性を尊重した教育がspecialと考えます。そう考えると、全てのこどもがspecialです。発達障害があってもなくてもspecialです。そのspecialというのはこどもの個性とか特性、家庭や地域社会の実情に応じたテーラーメイドの支援を目指す。これを目指したいと思うのです。ただ、どうしても日本では集団適応を目指すとか、普通を目指すといったことが目標になりやすい。そうではなくて、個性豊かなこどもが個に応じたハピネス、幸福を目指す支援が必要だと思います。

次をお願いします。

先ほどから話題になっていますアタッチメントです。日本語では愛着と訳されています。ただ、我々はあえて片仮名のアタッチメントを使いたい。なぜなら、愛着という用語は愛情と非常にしばしば誤解されます。アタッチメントの障害があると、お母さんの愛情が足りないといった言い方をされることが多いのです。

アタッチメントはもともとはひっつくことです。心理学的な意味はひっつくことです。こどもが不安なときに安心してひっつける人、安全・安心な場所の提供、これがアタッチメントになります。

ただ、その安全・安心な場所というのはこどもによって様々です。こどもが不安な場面や理由は、例えば障害特性があると一般の子と違うことがあります。自閉症の子にとってみると、変化、予定の変更がすごく苦手であるとか、みんなが大好きな音楽、その音の感覚刺激がつらいということがあり得ます。ですから、個々のアセスメントが必要になってくるということです。

では、次をお願いします。

バイオサイコソーシャルの社会の側です。社会の側はどうサポートするか。特にメインの人は保護者です。保護者をサポートしなくてはいけない。ただ、日本では母親がターゲットになりやすい。例えば母親がスマホを見ていると、だからこどもが発達障害になるのだとか、そういうふうに言われます。母への要求水準が高くて、一部のお母さんは自責的になって疲弊します。例えば3歳まではスマホを見せてはいけないとか、早寝早起き朝御飯をしなさいと。それが一律に推奨されると、うちの子は朝起きないのをどうしようとか、朝全然食欲がないのをどうしようとか、そういうふうに自責的になって疲弊します。

そういう意味では、こどもと関わりのない人へのメッセージとして、こどもも大人も自分の個性を尊重できる、一律ではない。個性を尊重できる社会をつくることを提言したいと思います。大人も安心できる人がいるはずですし、社会全体が落ち着けばこどもにとってもいい影響があると思います。

次をお願いします。

共有したい考え方としては、多様性の尊重です。今までの先生方もおっしゃっていました。同時にインクルージョン、ソーシャルインクルージョン、社会的包摂ですね。多様性を尊重するためには、個々の人が違う、どの部分が違って、どの部分のサポートが要るかといったことをアセスメントしなくてはいけない。ですから、専門的なアセスメントを導入する。個々の家族に合った支援をするということが大事になります。

ここで提案したいのは、今まで発達障害領域、障害領域全般で蓄積されてきた障害支援のスキルを定型発達、一般のこどもにも導入できないか。逆輸入を提案します。それは、子育てに悩む保護者、保育者、幼児教育の支援者、先生たちにも役に立つと思うのです。障害のある子のお母さん、あるいは障害のある子をサポートする教育者は、多分一般のお母さんよりももっと苦労があったわけです。ですから、これまで蓄積した発達障害向けの家族支援とか保育所へのコンサルテーションのシステム、あるいは児童発達支援センターへのコンサルテーションですね。そういった知見が役立つと思うのです。

そこで、質の担保ということを考えると、我々は外部評価というシステムをつくりました。これは発達障害支援のためのコンサルテーションシステムであると同時に、情報共有のためのシステムです。例えばある施設を評価して、ここはこういうことをやっています、こういういいことをやっています、ここは苦手ですといったことをホームページ等でアピールしていく。例えばそれを児童発達支援センターの質の担保の保証として公開して、お母さんが安心して児童発達支援センターを使えるようにするといったことも一つの方法かなと思います。児童発達支援センターから保育所等に支援していくということも大事かなと思います。

次をお願いします。

社会全体の意識転換を主導するためには、障害は特別ではない、特に分けるものではない、みんなが持っている多様性の一部ですよとアピールする必要があると思います。こういった方法は、発達障害のある子にも、アタッチメントに課題がある子も含めて全て子の支援に役立つと思うのです。

障害分野の知見というのは、全てのこどもとその支援者に活用できます。ですから、一般のこども向けの子ども家庭センターとか子育て世代包括支援センターなどにも、例えば公認心理士などの専門家を派遣するとか、そういった専門家による巡回相談を充実していくといった方法も取れるかなと思います。

次をお願いします。

誕生前から幼児期までの切れ目のない支援を考えると、我々、妊婦さんの支援がとても大事だと考えています。発達障害のある妊婦さんは決して少なくはないのです。そういった方に医療(産科の先生)や保健(保健師さん、助産師さん)、福祉分野との協力や情報共有を行っていく。

周産期についても同様です。これまでも出てきましたが、産後ケアを充実させる。例えばこどもに障害がありそうな場合、お母さんのメンタルの不安は非常に強いです。それに対して医療(小児科)の先生、心理(心理師)とか保健(保健師)、まさにバイオサイコソーシャルですね。そういった面の三つ組みで支援をしていくということです。

保護者支援というと、お母さんにこうしなさい、ああしなさいと言うことが結構多いのですけれども、そうではなくて、この子にはこういう方法が有用であるとか、そういった情報を提供していく、それを共有していくといった視点が大事かなと思います。

次のスライドをお願いします。

乳児から幼児期にかけては具体的な方法はいろいろあるのです。例えばこどもへの支援、構造化といって、分かりやすく不安のない環境設定をする。あるいは穏やか、ポジティブに接する。こういったことはもともと発達障害の領域で有効だということが分かってきたのですけれども、最近では、アタッチメントでも課題のあるお子さんや、あるいは一般のこどもにも有用であるということがいろいろなエビデンスが出てきています。

そういう意味では、個々のこどもに合わせたプログラムを推奨したい。絵本の読み聞かせはいろいろうたわれていまして、とても有用な方法だと思いますけれども、例えば自閉症の子などには絵本が苦手というこどももいます。読み聞かせが嫌だと。でも、動画は好きだと。そういった場合に、タブレットを見るのはいけませんよと言ってしまうと、こどもの遊びがなくなってしまうのです。タブレットで動画を見せているお母さんはとても自責的になることがあります。ですから、別にタブレットでもいいじゃんと。動画の好きなこどもは動画を見ましょうと。それがハッピーならそれでいいよと。全体の中で考えていきましょうと。そういったサポートが必要かと思います。

やはり集団適応を強要しない。それが大事だと思うのです。インクルージョンの推奨のためには、通常のクラスで集団適応を強要すると、どうしてもはみ出すこどもが出てきます。それは幼稚園とか保育所でも同じだと思うのです。定型発達の子でも集団適応は苦手な子が多いのですけれども、障害のある子はもっと苦手ですよね。集団適応ではなくて、個々のこどものハピネスを追求しましょうと。

同時に、そういったこどもを持っているとお母さんのストレスは非常に大きいです。それが虐待にもつながることもありますよね。この領域でもいろいろな知見があって、例えばコーピングであるとか、ペアトレであるとか、お母さんのリラクゼーションとか、そういった方法がたくさん知見がありますので、そういった知見を定型発達の子にも、あるいは親御さんにも提唱していく、適用していく。そういった方法が障害のあるこどももないこどももみんなハッピーになる。お母さんもハッピーになる。そういったことにつながるのではないかと考えています。

ありがとうございました。以上です。

秋田部会長: 内山様、どうもありがとうございました。

それでは、ここで3団体の皆様に御発表いただきました内容につきまして質疑の時間を設けたいと思います。御意見、御質問等ございましたら、挙手ボタンをお願いいたします。

なお、時間で進めさせていただきたいと思いますので、遠慮なくどうぞお手を挙げていただけましたら幸いです。

吉田先生、お願いいたします。

吉田委員: 吉田です。よろしくお願いいたします。

3団体の皆様、御発表ありがとうございます。

言い方が適切かどうか悩むところですが、自分の3人のこどもたちは枠としては健常児に当たるのだとは思うのですが、そういった環境の中で親として関わってこられたというのはもちろん非常に幸せだと思う反面、ただ一方で、やはり親自身、保護者自身がインクルーシブ教育を受けていないというのが非常につらいところだなというのが実感するところです。今、インクルーシブ教育というところをどんどん進めていくというのは非常に大賛成で、インクルーシブ教育の中で育ってきたこどもたちが将来的に親となり、保護者になっていくという姿の中でいい好循環が生まれていくのではないかなと思っています。

ただ、今、親の人たちの中でいわゆる健常児の親と障害児を持った親という形で二分されてしまっているという現状をどう見ていくのかというところを自分たちがもっと考えないといけないなというのは非常に感じるところです。

その中で、3団体の方に2つ質問をしたいと思います。まずは保護者の関わりという中で、どうしても障害児を持っている場合は母親という主語で語られることが多いと思うのですが、その中でパパ向けの取組なども進めているのではないかなと思います。実際に父親の関わりは以前と今は変わってきているのか。3団体の皆さんも関わる中でどういった実感をお持ちなのかなというのをお伺いできればというのが一点。

あと、保護者同士の関わりという中で、先ほど言いましたけれども、障害児を持つ保護者同士ではなくて、やはり全ての保護者が障害児を持つ保護者と関われる機会を増やしていくというのが必要ではないかなと思います。どのような方策がその中で求められているのかなというところをお伺いできればと思います。

以上です。

秋田部会長: どうもありがとうございます。

あと、有村委員、高祖委員、加藤委員がお手を挙げておられますので、まずそれぞれ御意見、御質問をいただきましてから、3団体の皆様に御回答いただければと思います。

それでは、続きまして有村委員、お願いいたします。

有村委員皆様: 3団体の皆様方、御発表ありがとうございました。私自身、ほっとして聞くことができる内容でした。とても大事なことをお伺いしたように思います。

一つは、やはり障害のあるこどもたちについて見ていらっしゃる皆様方のご発表いただきましたが、障害のあるお子さん方を見ていて、全てのこどもたちの育ちに示しておくべきことというのは何なのかというのが一つです。

それから、特に北川先生のところで言えば、イタリアの教育士さんのお話がありましたけれども、日本ではどのような方々がそれを担っていくべきなのでしょうか。やはりインクルージョンを進めていく上で受皿をつくっていくことはとても大事なことだなと思いますし、また、発達を見ていくときに、そこが乳幼児のところであっても、社会的な場であるためにどんな観点が必要なのかということも教えていただければと思います。

あとは、日本発達障害ネットワークの内山先生、ありがとうございました。本当にこどものウエルビーイングには今が大事と。まさにそのとおりかなと思って聞いていたのですけれども、こどもまんなか社会としてこれから指針をまとめていく際に、特に注意してここは盛り込んでおくべきとか、あるいはここは注意して記載すべきというところなどがありましたら、ぜひアドバイスをいただければと思いました。

私の質問は以上でございます。よろしくします。

秋田部会長: どうもありがとうございます。

続きまして、高祖委員、お願いします。

高祖委員: 高祖です。ありがとうございました。

本当にお話を聞きながらうなずくばかりというような感じだったのですけれども、知的障害者福祉協会のほうからの御発表の中でも、私も以前に会議でも発言させていただきましたが、イタリアのほうにも軽く取材にも行かせていただいて、やはりこのインクルージョンの考え方は、日本はちょっと逆行しているなというような気がしないでもないです。すごく分けていくというか、やはり障害の持っている子たちを大きな、でも、すてきな校舎なのですけれども、分けていくというような考え方がすごく強いかなというような気がしております。なので、それは障害の子に限らずですけれども、本当に1クラスの人数を20人ぐらいにしていただいて、そこに教科の先生、支援の先生、外部派遣の先生というような方向をぜひ日本も目指していけたらいいのではないかなと思いながら聞いておりました。

一つは質問ですが、多分3団体に重なるところであると思うのですけれども、児童発達支援協議会のほうから御発表いただいた中で、障害児相談支援のところでどの段階から介入できるか、早期の寄り添いが必要と書いていただいていました。本当にここはすごく大事だと思うのですけれども、皆さんの中で現状のところでここがもうちょっとこういうふうになっていればという具体的な御提案がもしあれば聞かせていただきたいなと思いました。

以上です。

秋田部会長: どうもありがとうございます。

それでは、加藤委員、そして、鈴木委員まででここの御質疑は打ち切りたいと思いますので、加藤委員、お願いいたします。

加藤委員: 御発表ありがとうございました。

ほぼ感想になってしまいますけれども、共生社会の原点となるのは乳幼児の社会の在り方と思います。こどもも家庭も支援者もみんなが元気で幸せであれるための具体の御提案をいただいたことをありがたく思います。幼児期に育つ社会情動的スキル、とりわけ人間関係の構築をするときなので、そういう分け隔てない、お互いに尊重し合う関係は非常に重要と認識しております。インクルーシブ教育は共生社会に向けていくという目標はみんな一緒なのだけれども、それぞれの施設や環境の中でシステムをつくり上げていく。向上をみんなで目指していくという方向性が非常に大事なものと思いまして、その辺りをきちんと整備できたらいいなと考えました。

以上です。

秋田部会長: どうもありがとうございます。

それでは、続きまして鈴木委員、お願いいたします。

鈴木委員:3団体の皆様、御発表ありがとうございました。

まさに家族支援がマストだというのはすごく感じています。小児神経の医者たちとずっと研究を一緒にさせていただいてきたので、例えば成育医療センターにあるもみじの家とか埼玉医大にあるカルガモの家みたいに、一時、親子が非日常的な空間の中でリフレッシュできるような広がりというのは今後も考えられるのでしょうか、そういうのがあったらいいな思うのですけれども、その辺、いかがでしょうかということを伺わせていただけたらと思います。お願いします。

秋田部会長: どうもありがとうございます。

それでは、ただいまの御意見や御質問を受けて、全国児童発達支援協議会、日本知的障害者福祉協会、日本発達障害者ネットワークの順でよろしければ御発言をお願いいたします。

松本氏: それでは、CDS-JAPANの松本から感想も含めてお話しさせてもらいます。

パパの参加ですけれども、昔に比べて大分育児休暇とかそういう意識が高まってきているので、うちの施設などは入園式とかそういうのは本当に100%お父さんも一緒に来てくださるというような状況もあります。

ただ、先ほどのインクルーシブになるにはどうするかというのも含めて、こども時代に体験する体験を障害があろうとなかろうと、施設の中で行事だったり、取組だったりというのを普通にやるというのはすごく大事かなと感じています。

それから、保護者同士はやはりまだまだ塀があって、なかなか厳しさは感じるのですけれども、きょうだいが意外とつながってくれるというか、きょうだい同士の関係の中でお母さんたち、その家族がつながって、それが意外と大丈夫だねというような関係になっていくというのがスタートというかきっかけにはなるかなと私自身は現場では感じているところです。

あと、リフレッシュの必要性というのもとても感じています。親御さんは本当に24時間365日緊張感を持って、どこかでやはり迷惑をかけてはいけないという、そんなすごいものを背負っているような印象は持っておりますので、ちょっと何かあったときにすぐ駆け込めるところだったり、ママ同士で話せるところだとか、いろいろな話を気楽にできる、2杯飲んで1時間でも座っていられる場所、カフェみたいなところというのは求めているなという印象を持っています。

水流さん、いかがですか。お願いします。

秋田部会長: 水流様、補足がありましたらお願いいたします。

水流氏: ありがとうございます。

私は高祖様から御質問いただきました障害児相談支援の件について少しお話しさせていただきます。障害児相談支援に関しましては、まだまだセルフプランと言って親御さん自身がプランをつくっているというお子さんもいらっしゃって、児童発達支援や放課後等デイサービスを使うためには、支給決定を受けた上で受給者証をもらって、そして、サービスが開始するということになっているのですが、本来であればちょっと気になるのだけれどもとか、うちの子は気になって誰かに相談したいのだけれどもというところから相談支援専門員とつながれるといいのですが、現状としては、どちらかというと、例えば保健センターからつながった上で、療育機関を利用したいということがある程度決まってから相談支援専門員とつながるというような状況になっていると理解しています。なので、どちらかというと、先に児童発達支援事業所やセンターの見学に行って、そこで初回の相談を受け付けていただいて、通いますとなってから相談支援専門員とつながるというような流れ、計画相談というのがどうしても相談の資料の作成屋みたいな状態に今なっているということもありますので、本来であれば基本相談という親御さんが本当に困ったなというときに相談支援専門員とつながれる仕組みができるといいなと考えています。

以上です。

秋田部会長: どうもありがとうございます。

それでは、続きまして日本知的障害者福祉協会の北川様、いかがでしょうか。

北川氏: お父さんの参加ですけれども、本当に以前に比べると多くなっています。親子発達支援などもお母さんだけではなくてお父さんも来て、その後またみんなで気持ちとか子育てのシェアをし合ったりするのも、お父さんもお話ししてくれます。

うちの園では、パパたち独自のパパミーティングというのを月2回開いて、夜、男性職員と語り合って、その後どこかへ行ったり、ということもありますが、お父さんはお父さんの悩みがあったり、また、ちょっとアンガーコントロールをしなくてはいけないパパたちも来たりする場合、アンガーマネジメントとかペアレントトレーニングとかをやったりします。

それから、有村先生の質問ですけれども、発達障害の子たちが学校、特に中学校とかに行くと、やはりパワーバランスとか感じてしまって、つらい感じがインクルーシブの中である場合もあります。誰が悪いというわけではないのですが、そういう事を感じやすいという面もありますし、そのため放課後デイなどでちょっとほっとしてまた元気になって、また学校に行くということを、ずっとやってきたのですけれども、やはりイタリアであったこの子たちはこういう意図があるのだよみたいな、それから、今こういうことを先生は言っているんだよとかという間に入ってくれる方がいたら、本当に小さいときから、保育園、幼稚園のときから間に入ってくれる人がいて、「みんないい子なんだよ」ということをちゃんとメッセージしてくれる先生がいたら、どんなにか楽に安心して幼稚園、保育園、学校に通えるかなと思いました。

あとは、一般のママたちとパパたちとというところも、なかなか難しい面もあるのですけれども、私はアメリカで「アジアンメンタルヘルスセンターで難民の人たちが月1回集まって、アメリカの暮らしがつらいとかいろいろシェアし合って、やはり難民としてのアイデンティティーを持ってまたアメリカ社会で頑張っていこう」というカウンセリング場面を見たときに、ああ、これだと思ったのは、障害児を持つママたちも自分たちでいろいろな悩みとかをシェアし合って、でも、私たちは悪くない、こどもも悪くない、じゃあ元気にやっていこうという場があって、一般のママたちとも一緒にやっていけるというサポートが要るという感じはいたしました。

あとは、ショートステイはすごく必要です。お母さんたちは自分たちだけで頑張らなくてもいいのだよということがだんだん分かってくると、ショートステイを使って煮詰まる前に自分の時間を取ったり、そういうことは、一般の子育てでも今度ショートステイが来年の4月から使えるようになりますけれども、障害児のママたちが先んじてやっているのかなと思います。

以上です。

秋田部会長: どうもありがとうございます。

それでは、続きまして、日本発達障害ネットワークの内山様、お願いいたします。

内山氏: まず、吉田先生のパパの話ですけれども、僕は児童精神科医なのですが、30年前からこの仕事をしています。その昔と比べると、お父さんが来ることは圧倒的に増えました。お父さんの問題は負い目を感じているのです。お母さんに任せてしまって申し訳ないよみたいな感じを持っている人がとても多いので、それはそれで負い目を感じるのは分からなくもないのだけれども、お父さんはお父さんのやることもあるし、お父さんはお父さんなりの悩みもあるし、いいところもあるよと。そういったことから始めていきます。お父さんにそうやってお父さんも頑張っていますよねと言うと、結構ぽろぽろ悩みを話してくれて、そこでうまくつながることもあるかなと思います。

保護者同士の関わりについては、さっきのアイデンティティーの話も絡んでいきますが、いわゆる障害児ママのアイデンティティーも当然ありますよね。ただ、それはそれであるのだけれども、同時にほかにも趣味がありますよね。例えばフルートが好きですねとか、演劇が好きですねとか、スポーツが好きですねとか、そういった障害児、障害と無関係のところの関わりを持っていたらどうですかねという話はしています。もちろん障害児のお母さん同士の関わりというのも、それはそれで安心できる環境でいいのですけれども、ほかにもつくったらどうですかという言い方をしています。

今が大事。有村先生の話で、注意したらいいことというのは、僕はすごく言いたいのだけれども、小学校に入るまでにこれはできなくてはいけない、50分座ってなくてはいけないとか、挨拶できなくてはいけないとか、箸を持てなくてはいけないとか、そういった指導をする先生もすごく多いのだけれども、それはこどもの発達によってみんな違うので、そういった一律の目標はつくらないほうがいいよと。一律の目標をつくると、それができないと将来困ると言われるのだけれども、それを無理にさせることによる逆効果、ネガティブな効果にも注意して欲しいですね。こどもから見たら無理なことを強要されているので、それがトラウマになったり、お母さんとかお父さんに対する反発になったり、幼稚園を嫌いになったりする。そういったネガティブな効果も考えて、無理なことはしないほうがいいよと言っています。

あとは、例えば今、スマホの話もよく言うけれども、スマホをお母さんは見てはいけないという圧力がすごく大きいです。それでお母さんがすごく自責的になって落ち込むので、別にいいんじゃないという話はいつもしています。特定のこれをやってはいけないなんてことはないよと。スマホを見たからこどもが自閉症になったわけでもないし、伸びないわけでもないからねという話はしています。何とかを強要することの逆効果はいつも意識しましょうと。虐待にならないように、マルトリにならないようにしましょうねという言い方をしています。

高祖先生の障害児相談支援に関する話ですけれども、さっき水流先生がおっしゃったように、今、事業所と親御さんで決めてしまっていることがとても多いのですよね。事業者の力が非常に強いのです。障害児相談が入る余地がないことが結構あります。同時に、僕自身は障害児相談の研究をしてみて、自分自身、相談支援専門員の研修を受けたのですけれども、僕が驚いたのは、発達障害とか、あるいは医療ケアに関する話題がほとんど全くないです。そういった専門知識がないままなれてしまう。しかも、相談支援の中では大人がメインで、こどもはサブなのです。もっとこどもを中心にした相談支援が必要かな、そういった研修が必要かなと僕は思っています。

加藤先生がおっしゃった、幼児期に人間関係をつくるのはとても大事だと思うのです。同時に、人間関係の在り方も様々なので、例えば幼児だとごっこ遊びしましょう、集団遊びしましょうというのが多いのだけれども、こども同士で同じ場所にいて、お互いに別のタブレットをやっていてもいいじゃんと。それで近くにいるのが幸せだったらそれでもいいよねと。そういった多様な在り方のこども同士の関わりを認めていくということが大事で、それがインクルーシブにつながると思うのです。教室に入ったらずっと同じ話を聞いてなくてはいけないって、それはつらいですよね。だから、時間と場所を共有するのがインクルーシブではなくて、意味とか体験とかハッピーを共有するのがインクルーシブだと思うので、それを目指していくのが大事かなと思います。

あと、鈴木先生がおっしゃったレスパイトですね。レスパイトというか、こども同士、親御さんとこどもと一緒にいて、そこに専門家が入る。それは例えばイギリスではアーリーバードと言って、レスパイトとはちょっと違うけれども、専門家が家庭に遊びに行って、そこで親子の遊び方をサジェスチョンするのです。自閉症の子とは遊びにくいので、そういう専門家が親の目の前で遊びを教えて、こんなふうにするとこどもは落ち着くよと。そうするとお母さんはとても助かるといったデータもあるので、そういった方法も広めていくのがいいのかなと思っています。

ありがとうございます。

秋田部会長: どうもありがとうございます。

多くの御意見、御質問をどうもありがとうございました。

時間の都合がございますので、次のヒアリングへ移らせていただきます。

それでは、家庭的保育全国連絡協議会の水嶋様、どうぞよろしくお願いいたします。

水嶋氏: よろしくお願いいたします。家庭的保育全国連絡協議会の水嶋です。

本日はこのような機会をいただきまして、大変ありがとうございます。

では、最初に簡単に家庭的保育と当協議会について説明させていただきます。

家庭的保育とは、歴史は長く、現在は2015年からの子ども・子育て支援新制度によって地域型保育の一つとして位置づけられ、認可事業となっております。

家庭的保育の居宅やその他のところで、0歳から2歳までのこどもを家庭的保育者1人につき3人まで、保育補助者がいる場合は5人まで保育をしています。認可事業になってからは、給食、それから、連携保育施設と言って保育所等と連携をするという体制を取っています。

次をお願いします。

家庭的保育の特徴としては、家庭により近い環境だということ。それから、少人数の保育なので、一人一人のこどもに寄り添ったきめ細やかな保育ができるということ。あと、一日を通して同じ保育者が保育をしているということです。それは、こどもにとっては十分なスキンシップや応答的関わりが持て、愛着関係を築きやすいということ。保護者にとっては、子育ての相談者であり、悩みや相談、喜びも共有する育児パートナーであるということです。

家庭的保育者ですが、家庭的保育者は地域に暮らす一住民であることが多いということも大きな特長です。地域とつながりやすいということになります。

少人数保育なので、柔軟性があるということなどが家庭的保育の特長です。

次をお願いします。

協議会の説明をさせていただきます。

2008年に設立いたしました。家庭的保育の理念である国の未来を創造するこどもたちが地域の中で大切に育てられ、守られるために、家庭的保育制度の充実発展を目指し、家庭的保育の質の確保と向上に寄与することを目的としております。

活動は記載のとおりです。

次をお願いします。

今日は、幼児期までのこどもの育ちについて、家庭的保育の現場から見えてきたこと、感じたことを発表させていただきます。

「1.社会全体の意識転換を指導する基本的な指針の策定に向けた検討」について、主に誰と何を共有したいかというところなのですが、よく見学に来られたお母さんや公園などで声をかけられる親御さんから言われることが、初めての出産の場合、こどもと関わったことがないので、どうしていいのかが分からないということをよく聞きます。

それから、育てる中で、乳児期、こどもそのものが分からないと書いていますが、これは父親から言われたことなのです。経済的な支援はありがたいが、それだけではなくて、こどもそのものが分からない。何で泣いているかも分からないし、どうしていいかが分からないし、人の目も気になるしということなどから、こどもという対応が難しい。それがすごく困るということを言われました。

そのときに思ったことは、相談できる、ちょっと声をかけやすい人がいればいいなと。子育ての中で安心ができれば、皆さん不安は軽減されるのではないかと思います。

特に家庭的保育のよさでもあるのですが、家庭的保育に0から2歳まで預けているお子さんが、その時期が終われば、それだけで終わらないで、また遊びに来るのです。先ほども言いましたように、地域の中にいる一住民であることが多い家庭的保育者は御近所の人なのです。そうすると、遊びに来たり、電話がかかってきていろいろな相談をしてくることがあるのです。

そういうふうに、何か聞いてくれる人がいる。こどもの成長も共有して喜んでくれる人がいるということ。困ったときには、ちょっと聞けば教えてくれるというような安心ができるという状況にあると、子育てにもっと積極的に関わっていけるのではないかなと思います。

同じ保育者が同じように継続して保育していくというのが家庭的保育なので、今年も大学に入学しましたと式場からLINEが届きました。そんなふうにこどもをずっと一緒に共有して歩んでくれる人がいてくれるのだというのは、とても安心なのだなと。そういう点から家庭的保育はよかったなと思っています。

次をお願いします。

こどもと日常的には関わる機会がない人も含む全ての人というところについて意見を言います。地域の中にこどもがいるのだということです。こどもはよく見かける人や、挨拶を交わしたり、商店街の人など、大人が思っている以上に覚えているのです。こどもは安心したと感じたら関わっていきます。特に家庭的保育は少ない人数で保育をしていますので、しょっちゅう地域の中に出ていっています。そうすると、いろいろな人に声をかけられるのです。いろいろな人に声をかけられると、4月当初は嫌な、不安そうな顔をしていたこどもでも、数か月たつと自分から地域の人に話しかけていくようになるのです。地域の人もかわいいねという声かけをしてくださって、やはりこどもと触れ合えると、こどもを拒む人はいないと実感として思います。こどもがいることで保育施設は地域とつながることができるのだと思います。こどもが地域につなげてくれているのだということです。

ここの写真でおじいちゃんたちに抱っこしてもらっているこどもがいますが、おじいちゃんたちに対して最初は私たちも怖いなという感じで、おじいちゃんが今日たくさんいるから向こうで遊ぼうかなとは思っていたのですが、声をかけ合うようになって親しくなってくると、「おじいちゃん!」と言ってこどもが遊びにいくようになったのです。デイサービスで公園に来た人も、こどもにあげたいと言ってポケットにあめを持ってきたおばあちゃんもいました。そういうふうに、こどもを中心に地域の人全部で関わり合えばいいのだということを家庭的保育を通して学びました。

右側の写真は、こどもたちが商店街のスタンプラリーに参加しています。それは毎年参加しているのですが、スタンプラリーに参加することによって商店街の一軒一軒のお店の人たちに声もかけられるし、こどもたちもどんなお店なんだろう、どんな人がいるんだろうと地域に目を向けていくようになって、いろいろな人がいて、いろいろなことをしている人がいるのだということも小さなこどもでも分かってきたということで毎年地域の行事には参加しています。

次をお願いします。

皆さんも先ほどからもおっしゃっておりますが、こどもは障害を含め、一人一人個性もあり、いろいろなこどもがいます。私たちはほぼ毎日公園などに出かけていますが、ちょっとしたことで孤立が生まれるなと感じています。お母さんたちがあるこどもを避けているということを見たことがあって、それはなぜだろうと見ていると、そのこどもは行動が荒くて、すべり台でも後ろから前にいる子をぼんと押したりするのです。そうすると、お母さんたちが我が子を離してしまいました。でも、そうではない。家庭的保育が一緒に遊ぼうよと言って遊んでいって、そのうち、保育室のこどもがそんなに押したりしたら危ないんだよと教えると、その子はそうなのかと気づいたことで押さなくなって、押さなくなったら、お母さんたち、大丈夫だから一緒に遊びましょうよという声かけができる。家庭的保育はそういう存在でもあるのだということを家庭的保育のよさとして感じています。

待機児童対策もあって、近年は園庭を持たない保育所が多いため、都市では地域の公園に複数の保育園が集まっていることが多いです。保育士、保育の専門職の人ですね。すぐそばにたくさんいるのです。公園などでもたくさん専門職の人がいるのですが、その人たちは保育に専念しているので、やはり地域の保護者と話すことができないのです。保護者も話したくても、相談があったりしたら決められた日時に、時には予約して相談に対応してもらわなければいけなくなっているのが現状です。だから、現実に公園にはたくさん専門職がいるのに、ちょっと声がかけられないという戸惑いがあったり、この辺の状況が何だかおかしい。こんなに専門職がいるのに声もかけられないという現状からもこども誰でも通園制度にはとても賛成です。特に家庭的保育は地域の中にあるということと、少人数保育なので柔軟性があってすごく対応しやすい。家庭に近い環境なので、離乳食を作っているところも見てもらえるし、それから、食べさせているところも見てもらえるし、0から2歳までの小さなこどもたちを対象にしているので、きょうだいのようなのです。だから、小さい赤ちゃんも離乳食を食べさせながら、1歳、2歳のこどもたちはどういうふうにしているかとかという家庭に特に近い様子が見てもらえるということがあって、こども誰でも通園制度はぜひ家庭的保育も利用していただきたいなと思っています。

次をお願いします。

家庭的保育にもいろいろなお子様が来ます。ひとり親家庭の子も、外国籍の家庭の方も。家庭的保育者には看護士資格を持っている人とか、養護施設で働いてた人などもいるのです。そういうところには、見られる範囲ですが、障害のあるこどもさんもやってきたりしています。

問題を抱えている人は複数の問題を抱えていることも多く、やはり孤立しやすいので、横の連携がとても大事だなと思っています。縦割りではなく、横断的に連携、協働していくことは絶対に必要です。

先日、2か月の赤ちゃんを育てているお父さんから、お母さんがかなりまいってしまっていて、すぐに預かってほしい。預けたいので、お願いできないですかという電話がありました。こういうところに連絡してくださいと答えましたが、迅速に対応ができるように、分かりやすい窓口から連携がスムーズに流れていく体制をつくっていただきたいと思っています。

また、先ほども言いましたが、私たちはいつも地域の中を散策しています。だから、いろいろな場に出会います。公園で遊んでいるだけでもその地域の状況が分かるのです。自治体担当者などの人たちは地域の実際のところをもっと知っていただきたいと思います。

次をお願いします。

次に、「2.基本的な指針で示す理念や考え方を具体的に実現するための方策の検討」というところから、教育・保育施設でボランティアやアルバイトなど、こどもと遊びたいと思う若者が出入りできるような場となることがあるといいなと思っています。特に保育士を目指す養成校の学生にとっては、近い将来のためにこどもを知る機会となります。こどもと身近に触れ合うことで、こどもをかわいいと思う人が増え、いずれ自分のこどもをほしいと思う人が増えるのではないかと考えます。

先日も中学生が体験学習をしていましたが、やはり楽しそうに遊んでいるだけでも違うなと思います。いろいろ家庭的保育の見学に来られる方でも、こどもと今まで関わったことがない、触れたことがない、全く経験がないのですという方ほど不安があるので、少しでも経験、中学生、高校生ぐらいにこどもと触れ合ったことがあれば大きく違ってくると思います。なので、できれば保育施設とかそういうところで、ただ遊ぶだけでもいい、こどもと話すだけでもいいから、ちょっとこどもと触れ合うことのできるチャンスがあればいい。そういう機会を設けることができればと思います。

以上です。

秋田部会長:水嶋様、どうもありがとうございます。

続きまして、全国病児保育協議会の杉野様、どうぞ10分間でよろしくお願いいたします。

杉野氏 全国病児保育協議会の杉野といいます。

全国病児保育協議会は、発足34年たちます。全国に900施設余の加盟施設があります。

就学前のこどもの育ちに係る基本的な指針に関する懇談会では、皆さん御存じのとおり、こども基本法の目的、理念にのっとり、4つの基本的な理念が提唱されています。つまり、全てのこどもが一人一人個人としてその多様性が尊重され、差別されず、権利が保障されている。2番、全てのこどもが安心・安全に生きることができ、育ちの質が保障されている。3番、こどもの声(思いや願い)が聴かれ、受け止められ、主体性が大事にされている。4番、子育てをする人がこどもの成長の喜びを実感でき、それを支える社会もこどもの誕生、成長を一緒に喜び合えるというようなこれらの理念を実現していくために、私たちはどのような立ち位置でこどもを支える当事者になり得るのかということを考えると、スライドを一回次に移して、提唱されたように、右側の黄色い線のところです。こどもまんなかという考えの下、こどもを中心に保護者・養育者、こどもと直接接する人、こどもが過ごす空間、こどもが暮らす地域の空間、こどもに影響する施策や文化という多層的な円環図の中心にこどもがいて、全ての人、社会が関わっていく必要があるということが分かります。

しかし、実際の子育ての実情というのを見ると、時間に追われ、また、保護者が一人で家事と育児の負担を抱えている場合が多く、子育ての負担は極端に保護者、主に母親に依存していると言えます。特に就学前のこどもの育ちでは、家庭、社会がこどもを中心に動いているとは思いません。早急にこどもまんなか社会の実現のために、様々な施策を考えていく必要があると思います。

スライドを次に動かしてもらっていいですか。

私たち病児保育室では、多くは小児科のクリニックを中心とした医療機関併設型の病児保育施設、あるいは嘱託医の存在する病児保育施設であり、医師、病児保育専門士、看護師が専門的な視点で、毎日、様々な病的状況にあるこどもたちを見ています。

このたび、こども家庭庁の開設に当たり、こども家庭センターの構想があると聞いていますが、こども家庭センターでは高齢者における地域包括支援センターのような役割が期待されるのではないかと考えています。病児保育室がこのような地域の子育て支援の中心として機能できるように、つまり、保育施設と病児保育室、医療機関の連携・情報交換の中心的役割が果たせるのではないかと考えています。

また、医療機関では、こどもを見ているといっても本当に数分の診察で終わっており、こどもたちの問題、母親の抱える問題というのを専門的視点でしっかり捉えることができていないように感じます。病児保育室では、このような問題を点ではなく面で時間をかけて観察することができます。それによってこどもたちを取り巻く様々な問題が明らかになることが多いのではないかと考えます。子育てに関わる様々な相談センターの機能を持たせることもできるのではないかと考えております。

スライドをその下に、このような意味で、私たちは病児保育制度の改善案、病児保育施設はせっかく全国にありますので、病児保育事業を子育て事業から切り離して一般の保育所と同等とするということを一つ提案します。これは、各病児保育施設が経営が非常に厳しい、安定的な経営ができていないということがあります。

2番目に、病児保育室を利用するに当たっての保護者の負担、全額無償化ということも考えていければと思います。

3番目、このような病児保育室で働いております病児保育専門士に対する評価を確立して、質の確保をしていきたいと思っております。

4番目、先ほど言いましたように病児保育施設と近隣の保育所の連携を強化して、こども支援センターとしての役割が果たせればと考えております。

以上です。

秋田部会長: どうもありがとうございました。

それでは、御意見、御質問をいただければと思います。できれば初めての方が手を挙げていただければと思います。いかがでしょうか。

奥山委員、お願いいたします。

奥山委員: ありがとうございます。

水嶋さん、ありがとうございます。家庭的保育は、地域との関係が深く、施設での保育だけでなくて多くの方々に理解をいただくためには、地域との関係とか地域の理解というところがとても大事だということに非常に共感を持ちました。

一方、養育者からお子さんのことをどう理解したらいいのか。本当に泣いてしまったらどうしたらいいのかという戸惑いの声というのは、地域子育て支援拠点でも同じように把握しておりまして、今日も学生さんですとか中学生ぐらいからこどもたちと触れ合うことの大事さのようなことも語っていただきましたけれども、こういったことを仕組み化していくところで、少しどんな観点があればいいのかといったところを教えていただければなと思いました。

今、また、病児保育のほうからの御発表が杉野様からありましたが、最後の保育所との連携のところで、特に子ども子育て支援センターとなっていたのは、地域子育て支援拠点とか地域子育て支援センターということでよろしいでしょうか。親子が交流するような場との連携ということだったでしょうか。

以上、2つ質問でした。

秋田部会長: ありがとうございます。

ほかには御意見はございますでしょうか。

分かりました。では、水嶋様と杉野様から、今の奥山委員からのことについて御回答いただければと思います。

水嶋氏: 水嶋です。

こどもを全く知らないということは、本当に大変な面ばかりが気になってしまうので、やはりこどもと触れ合うことが大事で、先ほども言いましたけれども、もうちょっと保育所なり幼稚園なりで、若い人たちでも短い時間でも自由に入るようなシステムがつくられればなと思ったのです。

実は私、4年間保育科に行っている大学生を補助者として雇ったことがあります。そうすると、一から全部教えてあげられましたので、4年たっていざ本当に就職したときに何も怖くないのです。赤ちゃんの抱き方から赤ちゃんの世話も全部できているのです。

だから、それぐらいこどもと関わったことのある人というのはわくわく感を持って卒業していったのです。そこまではいかなくても触れ合える。今、連携保育園を見ていても、たまに中学生が体験学習できていますが、そうではなくて、何時から何時までは自由に入って園庭でこどもと遊んでいいですよとか、もう少しオープンな環境になればいいかなと思っています。

以上です。

秋田部会長: ありがとうございます。

杉野様、いかがでしょうか。

杉野氏: 子ども子育て支援センターの話ですね。地域の子ども子育て支援センターでいいかということだったのですかね。

秋田部会長: それでよろしいですよね。

杉野氏: はい。そうです。

秋田部会長: ありがとうございます。

あと、古賀委員、高祖委員からもお手が挙がっていましたので、その2人までということにさせていただきたいと思います。

どうぞ。古賀委員、お願いします。

古賀委員: ありがとうございます。

これまでのところと共通してということで、感想というか意見というか、2点申し上げます。

多様なこどもの子育ちと子育てについて、社会的な価値づけをするということが非常に重要であろうと感じました。子育て自体もそうですけれども、経済中心で効率主義の世の中とかと、子育て、例えば障害のあるこどもとの生活というのが相入れない関係にあるということが非常に大きな問題を生んでいると感じます。例えば幼児教育の成果というのを税収が増加するからという論理で生産性や成果主義の議論にするのは危険だと感じます。全ての人が豊かに暮らすということを社会的に価値づけていく必要があるなと改めて感じました。全ての人が社会を構成する大切な一員であるということが認められる、その人らしい参加の仕方を協働的につくるような社会を目指すということを国として発信していくということが本会の役割かなとも思いますし、地域を動かしていくということを具体的に考えていかなくてはならないと思いました。

2点目です。多職種協働の共生保育が実現できるシステムをつくらなくてはならないだろうと思いました。こども指針が目指すものは、多様なこどもがそのままを受け止められる共生保育を全ての保育施設で当たり前に実現することではないかと思います。そのために引っ越すのではなくて、今、生活している地域で必要な支援を受ける、選択肢を当たり前に持つことができるという社会を目指すということです。

そのためには、やはり多職種協働の地域連携システムが必要です。令和3年8月23日に学校教育法施行規則の一部を改正する省令が公布、施行されています。医療的ケア看護職員や特別支援教育支援員、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーについて、学校における多職種連携に向けた職務内容規定などが出されています。幼稚園についてはスクールカウンセラー及びスクールソーシャルワーカーに関する規定を準用させることになっていますけれども、乳幼児期にこそ、幼稚園に限らず、様々なこどもを受け止める専門職が連携してこどもと保護者を継続的に支えることが実現されるシステム、先ほどのお話に出ていましたけれども、こども家庭センターが全ての園で多職種協働を可能とするような地域での連携協働システムを支える、そういったところになっていく必要があるのではないかなと思いました。

ありがとうございました。

秋田部会長: ありがとうございます。

高祖委員、お願いいたします。

高祖委員: タイミングが悪く、すみません。高祖です。

質問ですけれども、家庭的保育のほうで、言い方が失礼というか悪いかもしれないのですが、0から2歳児ということで家庭的な保育はすごく大事かなと思います。しかし、現状としては、保育園の待機児童は大分解消されてはいますけれども、そちらの受皿的な感じで流れてくるというか、そういうようなことも多いのかなという印象がありますが、親自身が選んで入っていたりとか、そこら辺は現状どうなのかなというのをお聞きできればと思いました。

あと、病児保育のほうは、先ほどもちょっとありましたけれども、近隣の保育所だったり、支援拠点との連携というところで書いていただいていましたけれども、具体的にどういうふうに連携と思われているのかというところを簡単に教えていただければと思いました。

以上です。

秋田部会長: ありがとうございます。

では、お二人の発言を受けて、ちょっと時間が押しておりますので、簡潔にお二人それぞれお願いいたします。

水嶋氏: 家庭的保育の現状なのですけれども、本当に保育所の補完的な存在という感じのイメージがあり過ぎて私自身も困っているのですが、家庭的保育は利用された方の満足度は本当に高いです。一回経験された人の第2子、第3子の申込みはあります。ちなみに、私のところは全て第1希望です。ですが、家庭的保育を知らないから、よく知られている保育所とか幼稚園とか認定こども園などを選ばれます。認知度が低いということがどうにかしないといけない問題ということなのです。今はうちでも補助者も全員有資格者ですし、皆さんかなりレベルが上がっています。だから、ぜひ利用していただきたいと思っています。ありがとうございました。

以上です。

秋田部会長: 杉野様、お願いします。

杉野氏: 現在も、既に保育園などで子育て講演とかに病児保育専門士を派遣して講演とかもやっています。それから、プレママの病児保育の話とかも既に病児保育室から行って講演とかをやっております。さらにそういう活動を広げて、地域の中で病気のこどもたちをどう見ていくのかというようなことをセンター化していければと思っています。

秋田部会長: ありがとうございます。

多くの御意見や御質問をありがとうございました。時間の都合もございますので、次の議題のほうへ移らせていただきます。ありがとうございます。

次に議題2、委員ヒアリングです。昨年度の有識者懇談会の論点整理への受け止めや補うべき視点、第1回目で示された論点案に対するお考えを中心に、お二人の委員からそれぞれ10分以内で御発表いただきます。

質疑の時間はお二人に続けて御発表いただいた後でまとめて、大変限られた時間でございますけれども、初めての御発言の方に優先的にお願いしたいと思います。

それでは、初めに都竹委員、どうぞよろしくお願いいたします。

都竹委員: 岐阜県飛騨市長の都竹と申します。

それでは、画面は共有されていますね。ありがとうございます。

今日は、飛騨市の実践を踏まえてお話を申し上げたいなと思って準備をしてまいりました。

岐阜県の飛騨市ですけれども、実はこういうところにありまして、岐阜県の一番北で冨山との県境にあります。人口は2万2300、山が93.5%で高齢化率40%、典型的な過疎地です。年少人口比率は10.6%ですから、人口で分かるとおり、年間100人超くらいのこどもの出生がある。そういったところです。

飛騨市の子ども・子育て支援施策は専門家、特に医療人材との連携を重視してまいりました。

産前からの支援というのをやってきまして、ここでは助産師と連携しています。親の精神的あるいは肉体的な安定を支援するということの中で、赤ちゃんとの愛着形成を支えるという考え方です。妊婦さんのときから緩やかに集まっていろいろな話ができる「にこにこルームまるん」というのをつくり、さらに、産後、いろいろなケア事業を様々展開しております。今日は割愛しますけれども、今、助産師のMy助産制度というのを今年から始めていまして、担当の助産師というような形でいろいろな相談に乗る体制を整えるというようなことをやっています。

乳幼児期は作業療法士との連携です。7か月児の入所相談から作業療法士、それから、療育保育士が入って、こどもの強みを見つけ出して母親全員に返していく。お母さんのこともここでよく分かるよというようなことをここから始めていきます。

乳児の遊びの広場、月一遍です。ここに保健師も参画して、いろいろな相談を受けたりするということです。

就園期になりますと、ここも作業療法士でありまして、保育園の巡回訪問を作業療法士療育保育士、保健師が参画してやって、いろいろなこどもの特性の見立てを行ってアドバイスをしているというようなこと。あるいは家庭相談員の保育園の巡回というようなこともここで行ったりしています。

就園期~就学期でありますが、ここは医療・福祉専門職による教育支援という形になってまいります。後ほど申し上げますが、市直営の児童精神科診療所、飛騨市こどものこころクリニックというのを持っておりまして、そこでの支援。そして、先ほどの作業療法士をはじめ、言語聴覚士等のセラピスト集団、NPO法人はびりすというのが市内にあって、そことの連携の中で、学校での作業療法、学校作業療法士の配置というようなことを今年から特に力を入れてやっています。

思春期は、医療・福祉専門職によって生徒が自分自身をきちんと理解する支援ということで、飛騨市の中核は地域生活安心支援センターふらっと、もともと発達支援センターだったのですが、これを全世代、生涯にわたってのあらゆる困りごとを支援していくという形で改組いたしまして、そこが中核になりながら学校連携支援員が高校へ巡回する。
また、今、来年度に向けての準備で、思春期健診をやっていこうということで、国立成育医療研究センターにおいでになった先生が飛騨においでになって帰ってこられたものですから、その先生と連携して、今、市内での試行実施の準備を進めております。

保育園、小学校に先ほど作業療法士が入っていくという話をしました。ここから具体的に話をしたいと思います。

お母さんたちのいろいろな不安というのがあるわけですが、やはりうちの子は何か違うというところからスタートします。例えば全然目が合わないとか、ちょっと大変な気がするとか、育てにくいとかというのがあります。それが、次に誰も分かってくれないという悩みになってきます。いろいろな声をかけてもらうのですが、やはり自分の不安を解消するということになかなかならない。どうも通じ合えないような気がするということで孤立感を深めていきます。そうすると、その後、やはり私の見方が悪かったのではないか、原因は自分にあるのではないかというような形の中でどんどん泥沼にはまっていく。沼の中に落ちていくというような形になってくると思うのです。

ですけれども、ここを私たちの取組の基本的な考え方として、悩みごとの中からそれが自分らしい未来を開く扉であるということで、こどもが正常に発達するということを目的にするというところから、むしろ親子の等身大に発達するということ、どうやったら等身大の成長を誇らしく思うのかというようなこと、そして、未来の姿を描いていくというようなことに向かっていきたい。こんな取組をしています。

飛騨市の事例を2つほど御紹介します。

飛騨市の地域生活安心支援センターふらっとでの相談事例です。1歳半健診で目が合わないという悩みを抱えたお母さんの例です。目が合わない。話しかけても反応がない。見つめてもあやしても笑わない。寝返りやハイハイはほかの子以上に順調だったけれども、見向きもしない。トーマスのおもちゃをずっと並べて遊んでいるというお子さんです。お母さんは自閉症ではないか、あるいはどうして自分を見てくれないのか、子育てに自信がないということでどんどん落ち込んでいくというような形でした。

そういったところの支援として、問いかけカードを使った発達の地図づくりというようなことをやっています。あるがままを受け入れる。そして、できていることというのをフォーカスする。そして、未来への希望を持つ。問いかけは、例えばどんな場面がありましたか、その中でできていることは何でしょうか。できてきたことを伸ばして自分の子にあだ名をつけるとしたら何をつけるか。そんなことを問いかけています。

それから、どんな工夫をしてみて、それをストーリー立てにしたらどうか。また、困りごとが解決というのは、その先はどうするというようなことを問いかけているわけです。そうすると、例えばトーマスと遊んでいる、トーマスばかりなのだということ。では、自分自身がトーマスになってみたらどうだろう。それによって成長するかもしれないよね。あるいは逆にトーマスを介してなら楽しくやり取りできるという捉え方をする。それによってトーマスの天使になっていくのだというようなことで、トーマスを通じて一緒に遊ぶというようなことをやっていくというふうに捉え直していくわけです。お母さん自身がインド人のビンディみたいにトーマスのシールを眉間に張って、そうするとこどもが笑ってくれる。そこからきっかけになって、こどもと通じ合える方法を見つけ出していく。それでだんだん自信が芽生えていって、もう一人こどもを授かりたいというような気持ちになっていく。こんな例もありました。

あるいは、4歳のお子さんで超多動児の例です。お母さん自体はバリバリのお母さんで、仕事もして責任ある役職について、家事もこなすというお母さんです。非常に多動な子なので、何とか育てないといけない、立派な大人に育てないといけないという思いがあって、怒りっ放しですね。ちゃんと座りなさい、いただきますはどうした、先生の言うことを聞きなさい。多動は増すばかりということでした。

それを捉え方を変えていきます。すぐに切れる、我慢ができない子。でも、年下には優しくお世話好きだと。そうすると、お世話好きな野生児だというあだ名をつけられるのではないか。多動だということを逆に捉えて、お手伝いとか御奉仕の号令というのをたくさん出してやる。そうすると、将来この子は多動なことを生かしたやり手のビジネスマンになっていくのではないか。そういう捉え方をしていく。実際にそれで新聞を取ってきてとか、ママを手伝ってとか、保育園の先生や友達を助けてあげてねということをやることによって、こどもがきらきら輝いて、そして、またエネルギーを増してくる。それによって親子の改善、あるいはこどもの見方というのは変わってくる。こんな例があります。

要は、障害の類型みたいなものに当てはめてしまうのではなくて、こどもの強みとか持ち味を生かして、周りの接する人がそれを伸ばす方向へ持っていく。ですから、情緒障害でも繊細なスーパーエリートだ、ダウン症でも芯が強い大和撫子だというような捉え方をしていくことが大事ではないかということです。

社会も実際はそうでありまして、神経質なこども、これはネチネチおじさんになる。でも、見方を変えれば、経理に長けた、法律に長けた人になっている。こういうことだと思います。実際に飛騨市役所もそういった形で人事とか新規採用を行っています。

あと、飛騨市は、先ほど申し上げました児童精神科単科の診療所、飛騨市こどものこころクリニックというのを運営しておりまして、これも同様の考え方で診療を行っています。

15歳までの子を対象に、1割ぐらいが就学前の乳幼児ですけれども、ここに書いてありますような集団生活の困難、かんしゃく、あるいは3歳児健診で指摘を受けたいろいろな例があります。ここに対しての支援をしていくということでした。

なぜこれを飛騨市が設置をしているか。児童精神医療は行政が取り組むべき政策医療であり、ソーシャルワークだと考えているからです。周りの環境を整えて、いろいろな幸せの形を理解して、それを手助けしてやることで、うまくいかなかった人間関係、学習にも取り組みやすくしたり、あるいは家族との関係をよくすることで充実した生活に導いていく。できないことへのフォーカスではなくて、やりたいこと、個性・強みにフォーカスする。これを循環させていくという考え方で運用されています。

実際に診察現場の実例では、親の治療という形で環境調整を行うこともあります。親が何かをしないといけないという物の捉え方が変えられずに、宿題をてきぱきしない、片付けしないと厳しく言ってしまう。それを、親のこども時代のつらい思いを診察の中で見つけて、親の治療、トラウマを癒やす治療を行い、こどもとの関係を構築していく。こんなこともこどものこころクリニックの中で取り組んでいることです。

このように、こどもを中心にしながら環境調整をしていく。こどもを取り巻く様々な人たちの相互作用の中に変化を起こしていく。これは先ほどの作業療法士の取組も児童精神科の取組も同じでありまして、私たちはこれが本当のこどもまんなかではないかと思っています。

飛騨市の取組を通じて思っていることは、こどもは一人一人個性があって強みがある。育ちも千差万別ですし、普通、標準なんていうことはないのだということです。そうした多様性が尊重されて、こどもの願いが受け止められるためには、保護者・養育者たちが作法を理解しておく必要があると思っています。

その作法というのは、こどもの遊びとか家族への思いなどを通じて、こどもに対する見方をリフレーミングするということだと思っています。そして、こどもの強みや持ち味を見つけて、それを伸ばせるように周囲の接し方や環境を変えていく。こどもを変えようとするのではなくて、周囲が変わろうとする。ここが大事だと思っています。

それによって、親とか周囲から認められる、受け入れられているという安心感を持てるようになる。それがこどもの育ちに必要な愛着を生み出して、自分らしく生きていく、人生のウエルビーイングにつながると考えております。

ただ、そのためには、こどもの強み・持ち味の発見と具体的な対応を支援する信頼できる専門人材が必要だと思っています。地方自治体というのは、こどもの育ち、こどもと社会とのつながりを支えるファシリテーター役ですから、信頼できる専門人材は絶対に必要なのですが、その人材と出会うことは至難のわざです。これをこども家庭庁の具体的な政策にするとすれば、そうした専門人材を国や都道府県が人材をプールして、市町村とのマッチングをサポートする。こんな施策もあるのではないかなと思っています。

簡単ですが、以上で発表とさせていただきます。ありがとうございました。

秋田部会長: 都竹委員、どうもありがとうございました。

それでは、続きまして秋山委員、どうぞよろしくお願いいたします。

秋山委員: 秋山です。

それでは、スライドをお願いします。

次をお願いします。

今回の部会の検討論点である身体・心・社会の視点の重要性と、誰と何を共有したいかについて、切れ目のない支援に向けて小児保健の立場から述べたいと思います。

次をお願いします。

身体・心・社会の視点の重要性については、国立成育医療研究センターの五十嵐隆理事長よりプレゼンがありました。我が国の乳幼児死亡率、妊産婦死亡率は、ともに世界で最も低い国であります。しかしながら、妊産婦の自殺率は高く、心中以外の虐待死のうち、0歳は65.3%と大きく占めているというのが現状です。

次をお願いします。

健康に影響を与えるのは非医学的な要因であり、社会的要因が重要であることはWHOや米国保健福祉省において既に指摘されており、エビデンスに基づく政策決定が国際的に進められています。

次をお願いします。

健康は病気がないということではありません。国際生活機能分類ICFにおいても、健康状態は身体・心理・社会の相互作用によってもたらされるものであることが図で示されています。

次をお願いします。

部会で提言している、乳幼児期のこどもには、食べたい、寝たいという身体、それから、構ってほしい、愛されたいなどの心、多様な人や社会と関わる社会、身体・心理・社会の要素が散りばめられています。特に「遊びたい」はこどもの育ちにおいて身体・心・社会を全部網羅する重要な要素だと思います。

次をお願いします。

そこで、こどものウエルビーイングが保障されているかどうかに気づく必要があります。

例えば左の図ですが、クリニックにこどもが落ち着きがないという相談があったとします。そのこどもは園で他児とトラブルが絶えません。こどもを連れてきた母親は、下のこどもの夜泣きを心配しており、また、姑との関係で憂鬱な状況にあります。父親はリストラの話で眠れない日々を送っており、また、この家には親の介護もあります。そのほか、家のローンを抱え、隣室の騒音のトラブルも発生しているなど、家族には複合して存在する問題があります。

地域に暮らすこどもと家庭には様々な問題がありますが、医療が健診や診療、相談の場で把握できることは一部であり、心理・社会面への目配りが求められます。

右の図は、近くに相談できる友人や親戚がなく孤立している家庭で、こどもの安全を確認するために家庭訪問を行う際の着眼点を示しています。家庭の様々な問題に気づくことができ、身体・心理・社会にわたる複眼的な視点で対応しています。

このように、多職種が気づいた問題を集約・整理し、適切な対応や効果的な支援につながることのできる方策を確立することが喫緊の課題です。

次をお願いします。

地域に設置されている妊産婦や乳幼児の保護者を支援する子育て包括支援センターと、虐待や貧困などの問題を抱えたこどもや保護者を支援する子ども家庭総合支援拠点の連携が不十分であることから、全ての妊産婦とこども、保護者を支援するこども家庭センターが設置することになります。こども家庭センターは、妊娠期から子育て期にわたり支援を行います。そこで、切れ目なく支援するために、身体・心理・社会面への目配りが必要で、こども家庭センターに係る制度にも当部会が掲げる身体・心理・社会の明文化をすることが必要であると思われます。

次をお願いします。

ここからは、身体・心理・社会の具体的な目配りを紹介したいと思います。

出産直後から利用できる産後ケア施設は、親子を支援することで産後鬱などに対応し、地域の資源と早期に連携することで虐待予防の効果があると思われます。

次をお願いします。

産後ケアを利用した保護者の相談や目的を身体・心理・社会に分類してみました。

次をお願いします。

母親やこどもの身体面では、受診を勧めたり、スタッフによる助言をし、次をお願いします。心理面では市と連携したり、社会面では地域の資源を紹介したり、受診を勧奨しています。

このように、身体・心理・社会に分類することでスタッフの視点と対応が整理され、施設全体で統一することができます。

次をお願いします。

次に、身体面として成長曲線を活用しています。事例は一部修飾して紹介します。

左端は産科から退院後、こどもの体重が増えなかった原因として、母親の精神疾患が原因でした。

中央の成長曲線は体重が減少したケースで、園に入園し、環境が変わったことから生じたものでした。

右端は、児童養護施設に入所しているこどもの成長曲線で、身長の伸びが悪く、また、体格が小さいままで、養育環境が影響しているものと思われました。

2000年に、日本小児科学会では成長曲線を用いた虐待の早期発見の方法をまとめました。このとき、委員会の中心となった旭川厚生病院の沖先生は、成長曲線は多職種連携の重要な共通言語であるとおっしゃっています。様々な専門職の関わりを効果的なものにするためには、共通言語の設定が必要です。

次をお願いします。

今年の3月に成育医療等の基本的な方針が出され、その13ページに、成育過程にある者等に対する保健として、乳幼児期から成人期に至るまでの期間においてバイオサイコソーシャルの観点で方策を検討するとあります。既に厚労省母子保健課の研究班でバイオサイコソーシャルの視点で乳幼児健診が検討されています。

次をお願いします。

具体例の最後になります。東京都教育委員会は、不登校への適切な対応に向けて「児童・生徒を支援するためのガイドブック」を作成し、身体・心理・社会の視点で支援を開始しています。このガイドブック作成には、国立成育医療研究センター五十嵐隆理事長の御尽力がありました。

次をお願いします。

米国のBright FutureSは、こどもや青年を身体・心理・社会的に捉え支援することを目的とするという概念ですが、今まで紹介した課題に対する視点だけではなくて、一人一人の心身の健康をどのように考え、健康を維持し、増進させていくかの視点を持ちつつ、こどもの将来の予測をし、その計画的な子育てを示すというように見通しを持った助言、支援をしていくという方法も取られています。これもこれから身体・心理・社会の視点として取り入れていく必要があると思います。

次をお願いします。

近年、IT技術を用いたパーソナルヘルスレコードが注目されています。そこで、この模式図は、切れ目ない支援を実現する記録システムとして、そのようなパーソナルヘルスレコードを実装して目指すという可能性を提示したものです。こどもを中心に得た情報、知見を、図の左に示したように、多職種の経験を持ち寄り、これを身体・心理・社会の視点で分類し、相互の関係性を持たせることによって現場の担当者が適切な行動を取れるように補助するシステムがあれば、気づきが放置されないようにできるかもしれません。また、チェックリストやサポートプログラムのビッグデータの蓄積によって、AIによる判断も可能となり、緊急時対応システムの構築や、ひいてはウエルビーイングの視点での計画的な助言が可能になるかもしれません。

この図を通して言いたいことは、システムに関する話ではなく、質の高い支援をこどもの成長と発達に即して切れ目なく提供するためには、専門職が共通言語としてバイオサイコソーシャル、身体・心理・社会という視点を持つことが有用であるということです。

次をお願いします。

最後です。誰に何を共有したいかという問いに対して、社会全体の全ての人に身体・心理・社会の視点を切れ目なく共有してもらいたいという願いを述べさせていただきました。

貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。以上です。

秋田部会長: 秋山委員、どうもありがとうございました。

それでは、ここでお二人に御発表いただきました内容につきまして、質疑の時間を設けたいと思います。

誠に恐縮でございますが、若干時間を延長させていただきまして、この後、しばらく会議が8月の終わりまでございませんので、今日の御意見、御質疑に移らせていただきたいと思います。

どうぞ挙手等、お願い申し上げます。

それでは、水野委員、安達委員、吉田委員、有村委員、続いてお願いいたします。

水野委員: 大東市教育長の水野です。

発表ありがとうございました。

本日の発表を全部通しての感想にもなってくるのですが、私はやはり家族支援の重要性というところを改めて皆さんから教えていただいたと感じております。障害のあるなしにかかわらず、実は家族を支援するというのはとても大切なことであり、さらに言うと、幼児期までという限定したものではなく、小学校以降、そして、思春期も含めて、これからこどもまんなか社会を目指していくというのであれば、家族はずっとそこの支援の中にあっていいのかなと思っております。

その中で具体的にどのようなお話がというところで、私は専門的なアセスメントの導入というところを大変興味深く聞かせていただきました。というのは、私自身も不登校のカウンセラーとして、心理職としてずっと現場にいたのですけれども、こどもに対してのアセスメントやアプローチだけをしていても、家族のアセスメントとその支援をしないと、カウンセラー、支援者が離れるとまた元の悪い状態に戻ってしまうなんていうことが多々あったので、ここを何か社会の一つの問題提起として取り上げていくのもいいのかなとも感じました。

また、こどもまんなかチャートの保護者・養育者の部分で、具体的に何をするのというところ、今回、都竹委員の発表でまさに言葉が出ていたのですが、私が大切だなと思うのはシステムズアプローチなのです。ですので、家族療法的なシステムズアプローチの視点を、今回は障害のというところの文脈ではあったけれども、全ての家庭においてどのような支援ができるか。当然、それにひもづいてどのような専門人材を育てていくかという議論につながっていけばすばらしいかなと思いました。まさにストレスコーピングとかリフレーミングというのは、全ての親御さんがもし知っていたら随分変わってくるのかなとも感じました。

雑駁でありますが、以上です。ありがとうございました。

秋田部会長: どうもありがとうございます。

続きまして、安達委員、お願いいたします。

安達委員: ありがとうございました。

私からは都竹委員のほうに質問させていただきたいと思います。

まずは、私、助産師でもありますし、日本助産師会の者としまして、助産師を活用いただきまして本当にありがとうございます。日頃からいろいろ国や市町村にも要望しているところで、このようにMy助産師制度をつくっていただきましたこと、本当にうれしく思っております。

その上で、今回、御発表の中で様々な専門職をいろいろなところで活用され、そして、地域のつながりも含めて、いろいろ施策をされているなということ、本当に感銘を受けております。その中で、今、母子保健を含めて、こどもに関することは非常に市町村の役割が重要というか、一番最前線のところだと思っております。こういった事業をしていくときに、市長である都竹委員がイニシアチブを取っていくところはもちろんだとは思うのですけれども、市の中で、または関連する団体の中で、そういうプロジェクトといいますか、こういう施策をコーディネートしていくための何かヒントというか御示唆をいただければありがたいなと思います。よろしくお願いいたします。

秋田部会長: ありがとうございます。

質問は全員の御発言をいただいた後、お二人にいただこうと思います。

それでは、吉田委員、お願いいたします。

吉田委員: 吉田です。

お二人ともありがとうございました。

都竹委員に1つ質問です。飛騨市長として今2期目だと思いますが、今回のテーマにまつわる施策についてこうした形で具体的に語れる市長は果たしてどれぐらいいるのだろうかなと思いました。そこはやはり飛騨市民の方々はすごく幸せだなと思います。具体的に施策に反映していくというアプローチをここまで具体的に示している市町村はどれぐらいあるのかなと思います。

その中で、今、7年ほど市長を務められていると思うのですが、施策を進めていく中で、定性的でも定量的には構わないのですけれども、この施策を進めてきた中での実際の変化というのが何かお話しできるポイントがあれば、もちろん短くて構わないのですが、教えていただければと思います。

以上です。

秋田部会長: どうもありがとうございます。

それでは、続きまして有村委員、お願いいたします。

有村委員: ありがとうございます。

手短に行きます。今日、飛騨市長のお話を聞けてとてもよかったなと思います。私もあそこまで積極的なお話しを伺えるはすばらしいなと思いました。

質問は秋山委員にお願いしたいのですけれども、やはりバイオサイコソーシャルとか共通言語のお話というのはとてもよく分かるのですが、そこで、今日出てきた多様性だったり、こどもたちのそれぞれの育ちというのを幅広く社会として多様な価値観で受け入れていくというところの折り合いみたいなものをどのようにつけていくかというところ、もしお話を聞ければありがたいなと思います。

以上でございます。

秋田部会長 : どうもありがとうございます。

それでは、続きまして堀江委員、それから、大豆生田委員にお願いしたいと思います。

堀江委員、お願いいたします。

堀江委員: すみません。娘と私、ともに体調不良で、画面はこのままで失礼させていただいております。

今回お話しいただいた中での全体を通しての意見という形になるのですけれども、2点お話をさせていただきたいなと思っております。

まず1点目というのが、やはりインクルーシブ教育というところで、もっと抜本的な改革というところで盛り込んでいかないといけないだろうなと改めて感じておりまして、障害を持っている方、医療ケア児の方だけではなく、その違いというのがどれだけすばらしいことであるのか、そして、それをどういうふうに対応していけばいいのかというところに関して、やはり小学校以降というところもすごく重要だと思いますし、保育園というところからこういったことができるような体制だったり、人員の確保というところを真剣に捉えて、仕組みを今つくっていかないといけないのではないかなとすごく感じました。

私自身もイエナプランのオランダなどの視察を行う中で、本当にこれがある意味答えだなと言ったらあれなのですけれども、というものを多分皆さんも感じていらっしゃると思いますし、それが重要であるということはすごく認識されていてやっていらっしゃるところもある中で、それをどうやったら仕組みができるかというところをもっと本気でやっていかなければいけないなと改めて感じました。

2つ目というのが、やはりこどもを知らない中で親になるという不安感だったり、それにより、小さいところでの虐待というところというのは本当に発生していると感じております。以前からお話をさせていただいているように、親になる前の教育だったり、子育て体験というところももちろんやっていきたいという部分は強く強調していきたいと同時に、やはりアウトリーチ型でやっていかないといけないのだということも改めて強く認識する必要があるのかなと感じております。もうこの施設があるからとか、どこかに相談すればいいからとか、経済的な支援をしているからではなくて、産後からケアがあって、その後ちゃんと子育てサポートを受ける機会があってということを無理やりでもやっていかないと、それを実施できるような準備さえもできていない方々が親になるということを前提とした仕組みづくりを改めてやっていくというところで、アウトリーチというのはすごく問題があるところに向けてというようなイメージが今は多いですけれども、全ての親御さんに対してアウトリーチをしていくというようなところまでしっかりとやっていく必要があるかなと感じております。

以上になります。

秋田部会長: どうもありがとうございます。

それでは、続きまして大豆生田部会長代理、お願いします。

大豆生田部会長代理: 時間が限られているので、質問ではなく、今日の皆様の御発表から3点お話しさせてください。意見、感想です。

1点目、今、都竹委員の話もとてもよかったです。ありがとうございます。こどもを真ん中に置いた社会のつくり方というのは、周囲のこどもとの関係の在り方の問題なのだという視点がすごく重要で、それは、こども一人一人のよさとか個性とかをどう大事にするかということで、それはその子たち、障害があるなしにかかわらず、全ての子にそうだし、それは結果的に大人に対してもそうなのだという視点は、指針にも記述したい重要な視点だと思ったというのが1点目です。

それから、2点目、秋山先生の話も、本当に改めてバイオサイコソーシャルの話をありがとうございます。それで、今日の話の中でも多職種連携の話がやはり大きなテーマだということが見えてきていると思います。そうした中で、体制もそうだし、共通言語とおっしゃいましたけれども、この辺りのことをどういうふうに共通にしていくのかということがとても重要なことだと思ったというのが2点目です。

それから、3点目ですけれども、前半の話の中で、内山先生をはじめ、本当に大事な話をしてくださいました。つまり、障害は特別ではないという話で、この委員会がこどもの発達をどう記述するかということが重要だと思うのですけれども、そのときに、全ての子に対してということ、つまり、インクルーシブの視点で書くことが大切。内山先生が逆にという発想を話していらっしゃいましたけれども、そちら側から見ていったときに、それは全ての子に大事だよねという話が、発達をこれまでのいわゆる発達段階みたいなものとは違った発達の描き方ということの大事さをとても学ばせていただきました。大事な視点をありがとうございます。

以上3点、感想です。

秋田部会長: どうもありがとうございます。

それでは、都竹委員、秋山委員、それぞれに、全員の質問にというよりは、それを受けてそれぞれから感じられたこと、御意見等いただければと思います。よろしくお願いいたします。

それではまず、都竹委員、お願いいたします。

都竹委員: 直接御質問があったところを先にお答えしたいと思います。

安達委員からのお話でありますけれども、その前に、助産師はうちはがっちりやっていまして、助産師会の提案は全部丸のみしますといつも言っているものですから、がっちりやっています。

市のいろいろなプロジェクトをコーディネートするヒントというお話だったのですが、実はここまで、これは吉田委員からの御質問とも関わるのですけれども、全て計画してやってきているというよりは、走りながら改良を加えて形をつくってきているということなのです。およそ私の市政全般にそうなのですけれども、計画を立てて始めると大体うまくいかないのです。実践を積み重ねて改良して、それで形をつくるほうがいいに決まっているのですよね。それで、最初は発達支援センターというのをつくって、そこからスタートしました。子育て支援についても、そこまでの形は最初はできていなかったのです。発達支援センターをやっているうちに、こどもたちのいいところを見てやることの重要性に気がついてきて、そこをやってくれるという人たちと知り合うことができた。そういうことを思っていると知り合うことができるようになるのです。そこからその提案に基づいて形をつくっていこうよとやっていく。そうすると、さらに、こどもの世界はこどもだけでは絶対終わらないものですから、生涯を見立てないといけないし、まさしくバイオサイコソーシャルで、家族とか地域の問題を一緒にやらないと何にも解決しないのだということが分かってきて、だったらこどもの相談とか何とかではなくて、およそ全部相談を受けるという組織をつくろうと言ってつくったのが今の地域生活安心支援センターふらっという組織なのです。とにかく全部受け止めて、それでまず関連機関に振って、自分たちがやる必要があるものというのをその中でつくって見極めていく。そういったやり方だと思っています。

ですので、ヒントだということをもし申し上げるとすれば、あえて計画は立てないということではないかと。とにかく実践あるのみ。ただ、そこからどんどん改良をいかに早いスピードで回していくかということではないかなと思います。

吉田委員からの御質問も今の中でかなりお答えできたかなと思うのですけれども、やはりこの中で何がよかったかという点で申し上げるとすれば、区分けをしなくなったということです。これはこどもですとか、これは貧困ですとか、これは障害ですとか、そういうことを言わなくなってきたということだと思っていて、およそ困りごとは全部受け止めた上で、それが障害なのか、貧困なのか、あるいは例えばひとり親家庭の問題、あるいは虐待の問題、それは最後に論じる理論の問題であって、人そのものに着目したときには区分けなんてどうでもいいのだという雰囲気で物事に対応できるようになってきたということが変化した点だと思います。職員も大変ですし、やっている人間は大変なのですが、いろいろなものを安心して受け止められる体制にはなってきたかなということは強く思っています。

あと、全体の話で、御感想も賜りましたけれども、やはり複数御指摘をいただきましたように、家族の支援、周囲でも特にこどもは一番近いのは家族ですから、家族の支援が不可欠だということは本当に言うまでもないと思っています。全て関わりの中で問題や生きづらさというのは生まれてくるので、本人が生きづらさを持っているわけではなくて、関わりが全てなのですよね。障害というものは元来そうだと思っています。

長くなってすみません。よく言うのですけれども、眼鏡をかけて、私、すごく目が悪くて、0.1ないのです。眼鏡がなかったら私は障害者です。でも、私は眼鏡があるから障害者ではないのです。

同じように、ちゃんと社会で受けている仕組みがあれば、世の中に障害という人はいないのです。同じように、生きづらさというのは本来周りが変わればないはずだと思っているので、乳幼児期のこどもに一番近い家族支援、もっと広がっていって地域全体、社会全体、国全体の環境調整をするということが大事ではないか。皆さんの質問から改めてそんなことを感じさせていただきました。

以上でございます。

秋田部会長: どうもありがとうございます。

それでは、秋山委員、お願いいたします。

秋山委員: 秋山です。

御質問ありがとうございました。

まず、有村委員から聞かれました多様性とバイオサイコソーシャルのつながりの件ですけれども、多様性というのは全体から見て多様だということで一人一人が集まって、それが多様になっているということです。例えば一人一人を、身体と心と社会でみると、この子は虫歯が多い身体、経済的に心配のある家庭にいるという社会を一人一人について考えることが大事で、障害というだけではなく、その子の特徴を3つの視点で考えるものだと思います。その一人一人を把握した上で多様性というような判断になるのではないかと思っています。

そして、大豆生田委員から質問がありました、それをどんなふうに結びつけていくのかということなのですけれども、バイオサイコソーシャルの考え方は例えば各年齢によって変わってくると思うのです。小さいときだと社会は家庭だけ。それが成長とともに、園や学校になったりと変わっていくので、バイオサイコソーシャルの視点も年齢で変わっていくと思います。それを、各年齢に対してバイオサイコソーシャルの視点でここはちゃんと見ておこうとか、園や学校ではここを見ておこうとか、その時に入る情報というのはやはり限られてくると思いますが、その視点を一人一人に把握していくことが、こどもの成長、発達の見通しに繋がり、また、課題への支援の手助けにもなると思っています。そのためにも各年齢あるいは園、学校におけるバイオサイコソーシャルの視点の研究が必要だと思います。

以上です。

秋田部会長: どうもありがとうございます。

こちらの時間調整がうまくいかず、少し時間が延びてしまいまして申し訳ございません。

本日も多くの御意見をいただきまして、誠にありがとうございます。

また、御発表いただきました5団体、それから、委員のお二人にも改めて御礼申し上げます。改めて、多様性というものや、それから、共生社会をつくっていくために、どのような形で私たちがこの基本的な指針についてつくっていくのかというまた新たな御示唆や言葉をいただいたように考えております。

次回以降の日程につきまして、事務局より御連絡をお願いいたします。

高木課長、お願いします。

高木課長: 資料9、今後のスケジュールですけれども、更新させていただいているところでございます。

次回は、8月8日は開催せず、8月29日火曜日、10時から対面、オンラインでのハイブリッドの開催を予定しております。また、その次の第7回は9月14日にさせていただきまして、8月29日、9月14日と中間取りまとめについて御審議いただければと思います。よろしくお願いいたします。

以上でございます。

秋田部会長: どうもありがとうございました。

それでは、これで本日の会議は終了といたします。

皆様、本日もスムーズな会議進行に御協力をいただきまして、また、延長しましたことにもお付き合いいただきまして、誠にありがとうございます。

オンラインの皆様、どうもありがとうございました。

これにて閉会とさせていただきます。ありがとうございます。