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第2回 NIPT等の出生前検査に関する専門委員会

概要

日時:令和5年9月15日(金)15時00分から17時00分
場所:オンライン開催

議題

審議事項
(1)NIPTの情報提供について
(2)NIPTの臨床研究について(ヒアリング)
(3)その他

資料

議事録

福井座長: 定刻を少々過ぎてしまいましたが、ただいまから第2回「NIPT等の出生前検査に関する専門委員会」を開催いたします。

委員の先生方におかれましては、お忙しい中、御出席を賜り、本当にありがとうございます。

最初に本日の委員の出欠状況の報告等を事務局からお願いします。

上出課長補佐: 事務局です。

本日の会議は会場とオンラインとの併用で開催をしておりますが、会場からは、福井座長、家保委員、河合委員、堤委員のほか、事務局が参加しております。

本日は、櫻井委員、三上委員から御欠席の連絡をいただいておりますが、そのほかの委員からは御出席いただいており、過半数以上の御出席をいただいておりますので、本会議は成立いたします。

本委員会の構成員に関してですが、今回より、飯野委員が交代され、虎の門病院院長の門脇委員が着任しております。

新たに委員となられました門脇先生、御挨拶をお願いいたします。

門脇委員: このたび委員として加えていただきました虎の門病院の門脇と申します。前任の飯野正光先生は日本医学会の担当副会長としてこの専門委員会の委員を務めていらっしゃいましたが、このたび役員の交代及び担当副会長の選任が新たにございました。この専門委員会を担当する日本医学会の副会長が私になりましたので、今回から加えていただくことになりました。どうぞよろしくお願いいたします。

上出課長補佐: ありがとうございました。

また、本日は川目裕氏に参考人として出席をいただいております。川目参考人はオンラインで参加されております。

続きまして、事務局に異動がございましたので、御紹介をさせていただきます。本年7月よりこども家庭庁成育局母子保健課長として木庭が就任しておりますので、御挨拶をさせていただきます。

木庭課長: 皆様、こんにちは。7月に母子保健課長に着任いたしました木庭と申します。

委員の皆様には今後大変お世話になりますけれども、どうぞよろしくお願い申し上げます。

また、本日は御多忙の中、会議に御出席をいただきましてありがとうございます。冒頭オンラインの接続の関係で時間が過ぎてしまいましたことを心よりおわび申し上げます。

大変失礼いたしました。

さて、今回はこども家庭庁としての2回目の本委員会の開催になります。出生前検査に関しましては、昨年日本医学会の下、医療機関及び検査分析機関の認証が開始されたところでございますが、様々な施設が出生前検査に参入する中で、妊婦やその御家族が適切な判断をしていただくためには、正しい情報提供が非常に重要でございます。そこで、本日1つ目の議題といたしまして、出生前検査についての正しい知識の普及啓発に関する取組について御紹介をさせていただきたいと考えております。

2つ目の議題といたしまして、これまで本委員会でも様々な課題が指摘されてまいりましたNIPTの臨床研究に関して、前回から引き続き有識者の先生から御発表いただきたいと考えております。御発表いただく川目先生からはNIPTの臨床研究の在り方について、多角的な分析を基に御示唆をいただけるものと期待しております。

こうしたテーマにつきまして、委員の皆様方から忌憚のない御意見を賜りますようお願いを申し上げまして、簡単ではございますが、御挨拶とさせていただきます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

上出課長補佐: ありがとうございました。

引き続き事務局から本日の配付資料の確認等を行います。本日はペーパーレス会議としており、オンラインで御参加いただく委員の先生方にはあらかじめ資料をメールでお送りしております。資料の確認をさせていただきます。

議事次第に記載のとおり、配付資料、資料0から3と参考資料1から6までとなっております。過不足等がございましたら事務局までお申しつけください。

また、多くの委員はオンラインで御参加いただいているため、御発言いただく際には「手を挙げる」ボタンをクリックしていただくか、カメラの前で挙手をいただき、座長が御指名をさせていただきますので、お名前を伝えていただいた上で御発言をよろしくお願いいたします。

会議冒頭のカメラ撮影はここまでとさせていただきますので、記者の方々は御退席の御協力をよろしくお願いいたします。

また、会議の公開についてですが、会議の模様をYouTubeによるライブ配信にて公開しておりますので、御承知おきください。

事務局からは以上になります。

福井座長: それでは、議事に入ります。

まず、議事1「NIPTの情報提供について」でございます。議事1には資料が2つございます。最初に資料1「妊娠中の検査に関する情報サイトについて」、事務局より説明をお願いします。

上出課長補佐: ありがとうございます。

事務局より資料1を説明させていただきます。こちらは前回の会議におきましても、認証制度の周知が少し足りていないというところも御指摘を受けているところでございます。

日本医学会に設置されております出生前検査認証制度等運営委員会のほうでもウェブサイトを立ち上げていただき、適切な情報を掲載いただいておりますが、当課の事業としても出生前検査認証制度等啓発事業におきまして妊娠に関する検査や出生前検査に関する情報サイトを作成しております。こちらのサイトは、包括的な妊婦支援の一環として、妊婦健診の検査や妊婦の体の変化などの情報とともに、出生前検査に関する正しい情報、自治体の出生前検査に関する相談窓口や、障害のある方の生活の紹介、障害のある子供の養育に当たって受けられる医療・福祉等の様々なサポートに関する情報を掲載しております。URLはこちらになります。

下にそのスクショがございますけれども、左下のように認証施設がどういうものかということも御紹介しております。

右の上のほうに関しましては、自治体のいわゆる性と健康の相談事業におきまして出生前検査の相談をしているといったところを検索できるようになっております。

右下のところでは、障害のある方の暮らしというものを動画で計6本程度公開しておりまして、様々な観点で情報を発信しているということになっております。

こちらのサイトについての御紹介は以上になります。

福井座長: ありがとうございます。

後ほど資料2の説明をしていただいた後、御議論をお願いしたいと思います。

それでは、事務局から資料2「NIPT認証医療機関のウェブサイトにおける情報提供について」、説明をお願いいたします。

上出課長補佐: ありがとうございます。

では、資料2も引き続き事務局のほうから説明をさせていただきます。1枚目に5月に開催されました第1回の専門委員会で委員の先生方からいただいた御意見をまとめております。認証施設のウェブサイトにおいて、自施設が認証施設であることを明示していないケースが散見されまして、そのことが認証施設での受検数に影響を及ぼしている可能性があるのではないかという御指摘。また、妊婦等に選んでいただけるよう、認証施設が適切な情報を上手に見せていく仕組みが必要ではないかという御指摘。また、そういったことに関しまして、厚労省の医政局で持っております医療広告ガイドラインを含めた対応が必要ではないかという御指摘をいただきました。

その上で、2枚目が厚労省にある医療広告ガイドラインの記載を引用したものになってございます。もともと医療法において原則広告が限定されている中、様々な状況、ネットとかそういったところで情報が公開されるようになってきておりますので、それに合わせてこういった広告ガイドラインも改正されてきたと認識しております。その中で2の広告可能事項の限定解除要件というものが示されております。こちらについて御説明をさせていただきます。

広告可能事項の限定解除が認められる場合は、以下の1から4のいずれも満たした場合とする。ただし、3及び4については自由診療について情報を提供する場合に限るということになっております。

①としまして、医療に関する適切な選択に資する情報であったり、患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること。表示される情報の内容について、患者等が容易に照会できるよう、問合せ先を記載することその他の方法により明示すること。3番目として、自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項について情報を提供すること。④としまして、自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項について情報を提供することということが記載されております。

前回の委員の御指摘の背景には、これまで、どちらかといいますと出生前検査の情報提供に関しまして抑制的な見解を示してきたところではございます。そういったこともありまして、いわゆる認証施設ではどういった情報をウェブなどで出していくかというのは、なかなか判断が難しいということも考えられました。

そのため、こちらは事務局として考えた方針(案)というところではございますけれども、以下のような案を出させていただきます。日本医学会に設置されております出生前検査認証制度等運営委員会におきまして、認証施設が参考とできるよう、限定解除要件を満たすNIPT等に係るウェブサイトの情報提供の具体例を作成いただくこととしてはどうかということ。

2つ目としまして、具体例については、本専門委員会へ御報告をいただいた上で、運営委員会から認証施設に周知していただくこととしてはどうか。併せて、厚生労働省が示している「医療広告規制におけるウェブサイトの事例解説書」への掲載など、さらなる周知の方法についても検討してはどうかということにさせていただいております。

なお、こちらの事例解説書につきましては、広告ガイドラインがあった上でこちらの事例解説書というのがございますが、今回参考資料4としてその内容を示させていただいています。見ていただければ分かりますように、細かいところについても触れられております。

資料2についての説明は以上になります。

福井座長: ありがとうございます。

NIPT認証医療機関のウェブサイトにおける情報提供について御説明いただきました。

それでは、資料1、資料2について御議論いただきたいと思います。御質問、御意見等がございましたら、どうぞよろしくお願いいたします。いかがでしょうか。堤先生。

堤委員: 堤です。よろしくお願いします。

資料1ですけれども、障害の「害」の字をこの害でなくて、平仮名にしたりしていたというお作法がしばらく前からやられているのですけれども、この字をどう扱うかは配慮したほうがいいのではないかなと思いました。

以上です。

上出課長補佐: 事務局からその点について御説明をさせていただきます。貴重な御意見ありがとうございました。

確かにこの「害」という字は、平仮名であったり、違う「がい」漢字をあてるという御意見をこれまでもいただいているところではございますけれども、逆にこれまでどおり使ったほうがいいという御意見もありまして、厚労省は、表記している字を公式として使っております。厚労省等の全体的な動きに合わせて、そちらが変わるようであれば、我々もそれに合わせていきたいと思っております。御指摘ありがとうございました。

堤委員: ありがとうございます。

福井座長: ありがとうございます。

どうぞ。

吉川推進官: 今の点、少しだけ補足をさせていただきます。母子保健課の吉川でございます。

基本的に上出から御説明させていただいたとおりでございますけれども、例えばこども家庭庁のホームページの記載を紹介させていただきますと、そちらのホームページの中でも「障害児支援」というホームページがございます。その中で「がい」という字は、今、資料1でお示ししている「害」と同じ字を用いておりますので、そういった意味で、こども家庭庁としても現状そうした表記を使っていると。そういったところでございます。

以上でございます。

堤委員: 分かりました。ありがとうございます。

福井座長: ありがとうございます。

ほかにはいかがでしょうか。河合委員、どうぞ。

河合委員: 出産ジャーナリストの河合です。

NIPT認証医療機関へ運営委員会から情報提供の具体例を作成して掲載していただきたいとお願いするというところですが、運営委員会が単独で周知をお願いするよりは、こども家庭庁さんのほうでもう少しお力添えをいただいたほうが、この委員会からもお力添えをいただいたほうが皆さん確実に掲載していただけるのではないかと思います。サイトの更新というのは大変な手間であると感じている施設もあると思いますので、ここら辺を応援していただかないと、今までもいろいろな情報提供の資材をつくってきたのですけれども、なかなか使われないということがありますので、御配慮いただけたらと思います。

福井座長: いかがでしょうか。

上出課長補佐: ありがとうございます。御指摘のとおりだと思っております。そのため、つくっていただいたものをこちらの専門委員会にも御報告いただくという体裁を取っておりますので、そこでまた上がってきたときに我々としても何ができるかということは検討していきたいと思っております。

福井座長: それに関連しまして、事例解説書、参考資料4、こういう様々な解説書が出ていますけれども、これはどういう立場のところから出ているということは、特別決まりがあるのでしょうか。

上出課長補佐: こちらの解説書は、厚労省の医療広告を規制している部署でつくっているということになっておりまして、厚労省のほうになっておりますので、具体例を作成いただいたときには、厚労省の担当部局とも御相談をさせていただきたいと思っております。

福井座長: そうですか。

中西委員、どうぞ。

中西委員: 「たまひよ」の中西です。

ウェブサイトにおける情報提供のところですけれども、見る人に分かりやすくという点では、認証マークがあって、それを認証施設は使えるみたいな形で、ビジュアル的にぱっと見て分かるような形のツールをつくったらよいのではないかなと思いました。

以上です。

福井座長: ありがとうございます。

では、先に家保委員。

家保委員: 衛生部長会の家保です。

先ほどおっしゃったように、分かりやすくということで積極的に認証マークをつくって掲載することは必要と思います。ただ、そのためには、厚労省の広告告示にきちっと位置づけてやらないといけないかなと思います。

例えば、医療広告の告示4条第16号関係で、日本医療機能評価機構が定める産科医療補償制度の標準約款と同一の補償を実施しているという旨の広告はシンボルマークを利用しても差し支えないということが通知上出ています。せっかく日本医学会が出生前検査認定制度運営委員会を設け、きちっと認証しているので、それを大臣告示で位置づけた上で、マークも併せて制度化するということは非認証の機関との差別化の観点で、ルールに則った中身になると思います。多分厚労省の医政局総務課になるのかもしれませんけれども、ぜひともそちらと協議して手続を進めていただけたら良いと思います。

福井座長: 事務局、いかがでしょうか。

上出課長補佐: まず、マークにつきましては、運営委員会の委員の先生方もいらっしゃいますし、当課の立場として御発言するのは憚れますが、我々の認識としましては、日本医学会の認証制度におきまして、ロゴマークのようなものは作成されているという認識はございます。ただ、一方で、皆様がこうやって認識しないというところもございますので、その辺りの周知等も含めて、こちらは運営委員会のほうにお伝えさせていただく形になるとは思いますけれども、その辺りは課題であるというふうに今、認識をさせていただきました。

一方で、家保委員がおっしゃったような告示にするということについて、今、ここでできるともできないとも言えないので、また具体例をつくる中で御相談をさせていただければと思っております。

ありがとうございました。

福井座長: ありがとうございます。

ほかにはいかがでしょうか。どうぞ。

堤委員: 堤でございます。

これはウェブサイトをつくるということに関して、まずここをということだと思うのですけれども、その先のウェブサイトの案内の仕方というのもちょっと想定しておいたほうがいいのかなと思いました。以前、横野委員がSNSとかをうまく使って情報提供するのもいいのではないかとおっしゃっていたと思いましたので、改めてそれを確認しておきたいということ。

あと、以前産婦人科学会として三上先生がいろんなアンケート調査をおやりになったときに、実際には「ルナルナ」というサイトを調査の対象としてうまく使っておられたりしましたので、先の話を申し上げているかもわかりませんけれども、そういうところとの連携というのも少し意識しておいてもいいのかなと思いました。コメントですが、付け加えさせていただきます。

以上です。

福井座長: ありがとうございます。

ほかにはございますでしょうか。植田委員、どうぞ。

植田委員: 関西大学の植田でございます。

方針を2つお示しいただきましてありがとうございました。それぞれに対する意見を申し上げたいと思います。

1つ目につきまして、具体例を作成ということは、認証施設に分かりやすい例示かなと思いまして、非常に賛成でございます。ただ、その後、せっかく具体例を作成しても、認証施設がそれを見て御自身の認証施設におけるホームページを変更していただくことまでが目的だと思いますので、例えば認証施設の手続の際にその具体例を見ていただくなど、具体例を作成した後の仕組みまでも運営委員会においてお示しいただくということが大事かなと思います。

もう一点、2ポツのほうの方針(案)に対してですけれども、事例解説書のほうを拝見いたしましたら、こちらは広告が禁止される事例など、むしろよくない事例についてまとめていただいた解説書かなと思います。運営委員会でおまとめいただくのはよいほうの具体例になりますので、具体的にどういうふうに事例解説書の中で扱われるか。恐らく非認証施設の規制のほうまでを言及するような具体例ではなくて、今後は認証施設で扱われる具体例をお示しいただくということですので、解説書への掲載というのは具体的にどういうところかなというところをイメージとして少し分かる範囲で教えていただければと思います。

以上です。

福井座長: ありがとうございます。

事務局から。

上出課長補佐: 貴重な御指摘ありがとうございます。確かに先生がおっしゃるとおり、こういった悪い事例というのも挙がっているとことを、認識しております。実際、運営委員会としてどこまでの記載をするかとか、そういったことも含めて、具体的なところはその中で御検討いただくものと思っておりますので、今の御指摘の点を運営委員会へ共有をして、作成するときの参考としていただければと思っております。

福井座長: ありがとうございます。

ほかにはいかがでしょうか。よろしいですか。

いろいろ御意見をいただきましたが、出生前検査認証制度等運営委員会において、認証施設が参考とできるようなNIPTの情報提供の具体例を作成していただいた上で、本専門委員会に報告をいただき、そして運営委員会から認証施設に周知いただくと。この場合、運営委員会からだけの形になるのか、この専門委員会の関わりも示してもらうのか、先ほど御意見もございましたので、また考えていただくとして、基本的にはそのような方向で、そして今、植田委員からも御意見がございましたけれども、本専門委員会でまた報告をいただいた上で、ディスカッションするときに具体的にどのような修正、加えることがあるかというのは、またそのときに御議論いただくということで、大きな方針としては、具体例を作成していただいて、本専門委員会に報告いただくという方針でよろしいでしょうか。

お認めいただければ、そのように進めていきたいと思います。よろしいですか。

(首肯する委員あり)

福井座長: 河合委員。

河合委員: 1つ確認させていただきたいのですけれども、情報提供の情報の中身というのは、出生前検査そのものではなくて、特に認証制度についての情報提供という理解でよろしいですか。

上出課長補佐: 我々の理解としては出生前検査に関する内容もちろん、そこの中で認証制度のことも含まれる認識です。

河合委員: そうすると、ある程度のボリュームがあるものになりますよね。

上出課長補佐: はい。

福井座長: よろしいでしょうか。

河合委員: 分かりました。

福井座長: それでは、そのようにさせていただきたいと思います。ありがとうございます。

事務局のほうはよろしいですか。

上出課長補佐: はい。いただいた内容につきまして、本日門脇委員も御出席いただいておりますけれども、日本医学会の出生前検査認証制度等運営委員会の岡委員長のほうに事務局のほうからお伝えをさせていただきたいと思っております。ありがとうございました。

福井座長: ありがとうございます。

それでは、議題2「NIPTの臨床研究について」に入りたいと思います。まず、参考資料3、今年の5月に開催されました「第1回NIPT等の出生前検査に関する専門委員会」で山田参考人が提出された資料につきまして、専門委員会後に資料の修正がございました。事務局より説明をお願いいたします。

上出課長補佐: また事務局からになります。

前回の会議におきまして委員の先生方に配られた資料と当日山田参考人が共有されたスライドの齟齬がございましたので、異なった部分について簡単に御説明をさせていただきたいと思っております。

今、スライドを共有しております。具体的には4ページ目の遺伝学的検査数の内訳、こちらのスライドがお配りした資料の中には入っていなかったということ。また、今の資料の5枚目「NIPT開発の目的」というスライドが追加になっております。その他微修正はございますけれども、あと、29ページ目の山田参考人のおまとめのスライドが1枚追加になっております。「3つのトリソミー以外のNIPTの臨床研究を行う場合の留意点(案)」というのが参考人の御意見としてこちらに記載されておりました。当日画面共有では先生方に見ていただいたと思っておりますけれども、こちらにNIPT実施の認証基幹施設を中心に臨床研究を行うことや、目的が明確な対象に対して検査を行うことや、確定検査が確保される疾患に対して検査を行うなどの御提案が山田参考人からございました。

説明は以上になります。

福井座長: ありがとうございます。

ただいまの説明に関しまして御質問、御意見ございますでしょうか。よろしいですか。

それでは、続きまして、川目参考人に御説明をいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

川目参考人: 今、御紹介いただきました川目と申します。よろしくお願いします。

そうしましたら、既に資料が皆様のお手元にあると思いますが、一応投影しながらお話をさせていただければと思います。

今日、母子保健課様のほうから御依頼をいただきまして、NIPTの臨床研究についての考察と、私見になりますが、私の提言をお話しさせていただければと思います。

私は既にこの委員の先生方にお世話になっておりまして、私のことを知っていらっしゃる先生も多いと思いますが、一応自己紹介させていただきます。現在は東京慈恵会医科大学附属病院の遺伝診療部の部長をさせていただいています。東京都でNIPTの基幹施設の一つに認めていただいています。

あと、現在も私の前任地、東北大学東北メディカル・メガバンク機構で臨床と研究のはざまのような研究、一般の方に遺伝情報の回付というのをさせていただいていました。今回、その経験も論点のお話に少し関わってくるところとしてちょっと付け加えたいと思います。

あと、宮城県立こども病院の遺伝外来で既に10年近く外来をさせていただいています。

宮城県立こども病院は宮城県で唯一の基幹施設、こども病院の中では最初にNIPTを開始した認定施設としてNIPTがされていまして、実際私は小児の外来としてさせていただいていますが、いろんな事例を経験させていただいています。ということで、もともと小児科医ではありますが、今、慈恵医大でもNIPT、主に産科の先生が遺伝カウンセリング等をやっておりますが、私も関わっているような状況です。

ということで、今日お話をしたいと思うのですが、先ほどの山田先生の前回の資料のように、何か特別な研究の提案をさせていただくとか、そういう各論的なものではなくて、非常に包括的な側面からお話をさせていただいて、この臨床研究についてどのように進めていくかということについて何か情報になれば幸いであります。

次に行きます。

これは皆様方にとっては釈迦に説法だと思いますけれども、NIPTの検査についての特徴をあえて挙げさせていただきます。まず、NIPTは今は染色体疾患というものがクローズアップされておりますが、非常に網羅的な、いわゆるゲノムワイドな検査であるということになります。なので、トリソミー疾患から最終的には単一遺伝子疾患まで見ようと思えば見られる検査であるということが一つ特徴になるかと思います。

もう一つが非確定的な検査ということです。PPV(Positive Predictive Value)、いわゆる陽性適中率というのがその疾患の事前確率によっては低下するということなので、必ず確定的な確認検査が必須な検査ということになるかと思います。ただ、陰性適中率のほうは非常に高いということなので、そういう意味でのベネフィットは非常に大きいものがあるかと思われます。

もう一つが、これまでもずっとお話しされていると思うのですけれども、いわゆる採血のみの検査であることです。Just blood testということで表現されます。採血だけでおなかの中の赤ちゃんの様子が分かるということです。非常に簡便だけれども、もし何か結果が出てきたときには非常に大きな決断を迫られる可能性があるということになります。簡便でありながら、そういった決断を迫られるのですが、簡便さゆえにその検査がより一般化する可能性がある。後でちょっと述べますが、IC、どんな検査かという説明もあまり深くなされずに検査が行われる可能性があるということが言われています。そうすると、どんどん普及してくる可能性があります。もちろん、日本でも各国でもスクリーニング検査ではないということが一部では言われていますが、最終的には多くの人に利用される可能性があるのではないかということが言われているかと思います。

最後に、この検査は出生前遺伝学的検査。ここでは「出生前診断」と書かせていただいていますが、出生前遺伝学的検査に分類されるということになりますので、遺伝カウンセリングパラダイムの検査であるということが非常に大事なポイントかなと思います。

「遺伝カウンセリングパラダイム」という言葉ですけれども、実は私がアメリカで遺伝医療を学んだときのメンターであるBonnie Pagonという先生、GeneReviewsという包括的な遺伝性疾患のサイトを立ち上げた方ですが、その方が提唱している大きく遺伝情報を調べる検査を2つの生殖細胞系列、2つの大きな分類ができるということが言われています。

まず1つが診断治療パラダイム(Medical care)というパラダイムでありまして、これは当事者、本人にとってきちんとした診断をして治療法を選ぶということで、健康管理のためにも役立つということで、非常にストレートな、医療としてはドンピタリと中心に行く、そういった分類の検査になります。これはある疾患を持っている方の診断をするとか、治療法選択のための遺伝学的検査というのが入ってくるかと思います。

一方で、出生前遺伝学的検査というのは、Personal decision makingという分類に入るとPagon先生は提唱しております。これは最大限クライアントの自主性が重んじられるということで、必ずしもその人の医療・健康に直接的にベネフィットがあるものとは限らないという分類になります。なので、まさに出生前診断も特に今回の文脈では広く一般の方たちが利用する出生前の遺伝学的検査としてのNIPTとして考えたときは、医療のため、何かの目的というよりは、全てがクライアントの十分な理解と、そのクライアントたちの自律的な意思決定によって行われるものだということになるかと思います。

というのがNIPTの検査ですので、ここの部分は非常に大事だということで、今回も専門委員会、新たな認証施設制度、あとは検査施設の認証も始まったという形になっていったという流れかと理解しております。

これは前置きということですが、今回NIPTの臨床研究ということを考えたときに、海外の現状はどうかということも参考になるのではないかと思います。私は、出生前遺伝学的検査の実装については各国ごとに議論されるべきだと思っています。かつその研究の枠組みでもその国ごとの文化ということも非常に大事だろうと考えています。

取りあえず今、実臨床で海外はどうかということで、本当に一部ですが、皆さんは既に御存じかと思いますが、アメリカの臨床遺伝・ゲノム学会、ACMG、主に臨床に特化したアメリカの遺伝の学会から、ここがポイントですが、in a general-risk populationということで、ハイリスクのポピュレーションでない場合のNIPTについてのガイドラインが今年発表されています。これは、これまでのアメリカ、北米、あるいは世界のエビデンスとなる情報を収集した結果として現状の立ち位置としてのガイドラインになるかと思います。

このガイドラインでは「 RECOMMEND 」 と い う 形 で 記 載 さ れ て い ま す が 、 STRONGRECOMMENDATIONということで、そこは現在我が国で運用しています21、18、13トリソミーに対してはNIPTをSTRONGのRECOMMENDATIONということで書かれています。HIGH CERTAINTYOF EVIDENCEということで、このガイドラインは、SER(Systematic Evidence Review)という形でこのガイドラインがつくられております。まずはこの3疾患です。我が国と同じです。

もう一つが性染色体のAneuploidyというものもここに分類されています。X、XXX、XXY、XYYということになります。ただ、ここの記載の中を詳しく見てみますと、特に45,Xの場合はモザイクの事例とかがありますので、上の3つの疾患よりはその解釈等というものの課題があるということの記載がされております。

現状ではもう一つ、Suggestまで言っているものが22q11.2欠失症候群です。これがこのガイドラインでは含まれています。これ以外の、例えば4pマイナス症候群とか5pマイナス症候群とか、ほかのようなCopy Number Variationの出てくる欠失症候群等はまだ十分なエビデンスがないということで、いわゆる推奨、提唱はされていないという状況になります。

このガイドラインにはpretest and posttest counselingというところの記載がありまして、これもコンサーンに重要なことが書かれていると思うのですけれども、up-to-dateで、しかもbalanced。これは非常に難しいと思うのですが、かつaccurateです。最新の正しい情報がPersonalized Patient-centered counselingということで、受け手の方にテーラーメイドでといいますか、パーソナルな状況を把握しながらのカウンセリングが重要だということが書かれております。

もう一つ御紹介したいのが、このガイドラインでは、「NIPT:患者の視点」と書きましたが、患者のみならず、医療者も含めてのシステマティックレビュー(SR)です。Vanstoneのシステマティックレビューがガイドラインとしては珍しいかと思いますが、記述されています。ここではベネフィットとコンサーン(懸念)というものを挙げられております。

このvanstoneのシステマティックレビューは2007~2018年までの36報を、特に患者の視点、あるいは医療者の視点、あるいはレイ・パブリックの視点も含めてNIPTというものはどういうベネフィットがあるのか、どういう懸念あるいは不安があるのかということを調査したいろんな調査をまとめたものになっています。

もちろん、ベネフィットもあり、懸念も述べられていますが、特に懸念では、冒頭にもお話ししましたが、Too widely available、非常に幅広く、いわゆる一般化ということも懸念として挙げられています。

それから、先ほどの採血のみということのSimplicityということで表現しておりますがこれが可能性としてICを削除するような形に繋がるかもしれないということが記載されています。

もう一つ、いわゆるコストとかアクセスの不公平性ということが懸念に挙げられていまして、これらは今回また認証施設で随分と情報提供があって、我が国では改善されてということになるかなと思います。

もう一つは、この検査の簡便性ということもあるので、もし検査を受けてポジティブだったときに、まず簡便性があるので、そういった検査を受けたほうがいいというプレッシャー。あるいはもし陽性だった場合に、if affectedの場合には中絶というものに対するプレッシャーというのも出てくるのではないかということが書かれています。あとは十分な情報提供がなされない。特に大事なプレテスト、検査前の情報提供がなされないということも書かれています。

今、ガイドラインの一部を紹介させていただきましたけれども、このようなことが現状としてあるということで、その上で我が国も臨床研究というものを考えていくことが重要ではないかなと考えております。

次に、これから研究を考えるに当たって、特にNIPTが導入されたときに非常に大きな混乱があったということがこちらにいらっしゃる先生方も御経験されていると思いますが、実は私はその当時NIPTコンソーシアムの一員でもありまして、その当時の資料では非常に報道がセンセーショナルに行われたということです。その後、知るところによりますと、日本ダウン症協会などにたくさんの問合せ電話、あるいは逆に批判とかそういった様々な抗議電話があったということを聞いております。

もう一つが精度99%の99%問題というものが出てきたということもありまして、この大きな最初の混乱、インパクトがあることによって、この場合の臨床、臨床研究としての枠組みでの日本医学会を中心にした枠組みが始まったと理解しております。やはり99%問題ということと、もうひとつが出生前診断の報道に「ダウン症」という具体的な疾患の名前が出てきたということも、非常に大きなインパクトだったと考えられます。

これは日本ダウン症協会のほうからその当時出たものを引用させていただいていますが、日本ダウン症協会としては様々検討していただいて、日本産科婦人科学会に要望書を出したという経過もあります。このとき、伺うところによりますと、当時のダウン症協会の理事長でいらっしゃった玉井邦夫先生は本当に様々な対応をなさったということを、実際お話も聞かせていただきましたし、講演も聞かせていただいたことがあります。

ここからは私なりにNIPTの臨床研究の課題、ELSIを提示させていただければと思います。

まず最初に、今、こういう形で実臨床として認証施設によってNIPTが動いている中で、新たに臨床研究というものが始まってきたときに、研究と医療の枠組みの区別が非常に分かりにくくなってくるのではないかという懸念があるかと思います。もちろん、どのような臨床研究を行うかという研究のテーマにもよるわけですが、なかなか一般の人たちにとっては難しいかもしれません。

例えば追加の疾患を検討してみたいということが実際の認証施設の大学病院とかでもし始まったとしますと、それが従来のものを受けながら研究にも参加するという形になると、非常に混乱する可能性ということもゼロではないかなと。実際の実臨床で研究の枠組みの遺伝学的検査を御提案したり、実際の保険診療の遺伝学的検査を提案するということをいろんな疾患で行っていますけれども、その研究というものが入り込んでくることの難しさというものがあり得るかもしれないと思います。これが1番目です。

もちろん、これは研究の種類によるのですが、研究解析結果の開示が原則になっておりますので、例えば性染色体とか、ほかの遺伝性疾患を含めて、そういったものを研究としてやったときに、まず1つは解析の分析的妥当性をどういうふうに確保するかということだと思います。

私も確実に存じ上げているわけではないのですけれども、基本的にはNIPT、我が国自前で検査をやっているというところはないと思いますし、例えば1つの大学病院がその検査をやるということは難しいので、どこかに外注するという形になると思います。外注先がきちんとした分析的な妥当性があるとかということも一つ大きな課題になるかと思います。

もちろん、今回臨床では検査施設の認証施設ができているので、それが参考にはなるかもしれません。

もう一つ、一番課題だと思うのは、もしそういった研究が始まって、結果を返すところからの医療体制というものがどこまで構築できるかということかと思います。単に研究でお返しして、その後はどこか医療機関に行ってくださいということでは、研究に参加した方にとっては利益にならないと思いますので、そこの部分が重要かと思います。

3番目「対象者」と書かせていただいたのは、前回の山田先生、ハイリスクの疾患を対象とするということがたしか案にあったと思うのですけれども、このような出生前診断というものに関する対象者を選ぶときに、出生前診断を経験されたり、あるいは検討したり、そういう方たちというのは、もしかすると決めつけるわけではないのですが、非常に脆弱性といいますか、そういう可能性がある対象者であることです。なかなか参加そのものも難しいようなお気持ち、心理・社会的な状態という可能性もあるかと思います。なので、そこの対象者をどう選ぶかということが非常に大事なポイントになるかなと思います。

4番目が利益相反です。これは先ほどの解析施設との関連になりますが、外注をするという場合に、万が一外注先がさらに検査を広めたい。どうしてもビジネスと結びつくのは当然なので、そういったことがきちんと担保できるかどうかということです。あまりこういうところでお話しすることではかもしれないのですけれども、そこがやはり懸念されることの材料にはなるのかなと思います。そこが4番目です。

次が、先ほど当時のインパクトをお話ししましたが、当時「ダウン症」という名前で出生前診断の枠組みで特定の疾患を提示しながらメディアが報道したということ。「特定の疾患の名指し」という言葉で表現させていただいていますが、その社会的インパクトは非常に強いかと思います。これについては次のスライドでちょっとお話ししたいと思います。

これは個人的には非常に強いかなと思います。特にそれが臨床研究の枠組みになったとしても、特定の研究のコンテクストが出生前診断というところにどうしても入ってくるので、もちろん研究の目的・方法にもよりますが、ある特定の疾患の方を対象とすることがNIPTの研究の一つの課題になるのではないかなと思います。

あとはスリッパリー・スロープ、滑りやすい坂道ということで、万が一ですが、今、対象になっている疾患群をどんどん研究として始めてしまうようなことがいわゆる分析的な妥当性とか臨床的有用性、そういったものがあまりないものが始まってしまう可能性は考えておかなくてはいけないかなと思います。

もうちょっとだけお話を続けさせていただいて、出生前診断における疾患名のインパクトということで、これまでは私の理解では、あまり出生前診断とか出生前遺伝学的検査というものに関して特定の疾患を挙げるというような文脈での報道は少なかったのではないかなと思います。ただ、実際挙がってきたことによって出生前診断の対象となる疾患であることが明確化されることによる。もちろん、明確化というのは誰が決めるということがあるわけですけれども、メディアによって大々的にされることによってということで考えていただくと、やはりスティグマ的なものにつながると。それはどういうものかというと、その疾患というのは重篤な疾患なのではないか、あるいは中絶の対象となるのではないかという誤解。そういったものが広く浸透されると、最終的にはその疾患のある人や家族へのネガティブな理解や態度へ社会が進むのではないかという可能性ということで、これは議論されるべきことと考えます。ということで、倫理的にも社会的にも大きな課題があるのではないかなと。私はこの部分は非常に大きなものがあるのではないかと個人的に考えております。

さて、今、ダウン症というものが直接日本でも名前が挙げられたわけですけれども、最初海外ではたしかダウン症検査みたいな、検査名そのものがそういうものだったようなものもあったと思います。アメリカでも始まったときは「21」というのがついていたような検査名だったのもあったと思います。

ここで御紹介したいのは、ダウン症のある人の家族、NIPTに関する調査研究というのが、スタート時点から主に北米、ヨーロッパ、僅かにアジア、フィリピンとかでもありますが、こういう研究をここに挙げさせていただいています。確かに疾患の対象となった当事者の方たちのいろんな意見とか考え方とか思いとか態度とか、そういうものを私たちがしっかりと知るということは非常に重要なものになると思います。ただ、私はこれを全て詳細に検討できていないのですけれども、ここから言えることは、これは一つのレビューからの引用で、恐縮ですけれども、「mixed parental attitudes towards NIPT,valuing parentalautonomy yet reporting concerns regarding the implication of increasing terminations following a positive NIPT result」と書かれています。mixedというのは非常に大事かなと思います。私がこういうのを見させていただく限り、NIPT、出生前遺伝学的検査というのは非常に個別性が高いので、それぞれの方たちの考え方とか思いとかは本当は個別性が高いです。本当に多様であるということです。しばしば両価性、アンビバレントな、非常にデリケートな思いを抱いているということがこれの中に出てきていると思います。

実際私は疾患、ダウン症の方も含めてフォローアップさせていただいていますが、疾患を持った方が次の認証を考えたときに、出生前の診断をどうするかというのは本当に様々です。個別性が高いと思います。なので、このような研究は非常に重要ではありますが、一方でそういった個別性が高いということを考える点が1つです。もう一つは我が国でこういう研究をどこまでできるかというのも、対象者の声かけなどの課題から、もしかすると難しい可能性があるかなと考えております。これは委員の先生方の御意見とかを伺いたいと思います。

ここでは、ダウン症候群についての論文を紹介させていただいていますが、実はほかの対象疾患に関して調べさせていただきますと、私が調べる限りではまだほとんど海外でも出ていないかと思います。18トリソミー、13トリソミー、あとは性染色体、22qを含めて、このような調査はまだほとんど出ていないと思います。

ちょっと長くなって恐縮ですけれども、最後に「NIPTの臨床研究について」ということで、私の個人的な考え方を含めてお話しさせていただきたいと思います。出生前診断であるNIPTの臨床研究は、これまでの我が国での経緯を踏まえて、どうしても倫理社会的な側面を有する技術であるから、やはり透明性を持って実施される必要があるのではないかなと思います。

もう一つは、関係するステークホルダーのみならず、社会一般が納得するテーマである研究テーマを考えたときにはそういうのが必要ではないかなと思います。慎重にELSIについて検討された研究内容である必要があろうと思います。これらの検討は当然各研究の施設、医療機関等の施設で十分審査をされるかと思います。ただ、一方で、これらをその施設だけでいいのかという課題も、たしか前回の委員会でも議論されているところかと聞いております。

これまで日本医学会やNIPTコンソーシアムが臨床研究として実施されたNIPTについての情報を社会に発信してきたことが、一定の認知・理解につながってきているということなので、これらの我が国の経緯、そのインパクトを考えたときには、いわゆる臨床研究というものであっても、先ほどちょっとお話しした研究と臨床の分かれ目というのも非常に難しい部分がありますので、計画内容とか実施状況は、ぜひ学会等、アカデミアの関連で確認を行ったり、国の専門委員会、こちらの委員会で把握する必要があると私は思います。

学会等というのをどこにするかというのは難しいと思うのですが、ここで一つ例示をさせていただいています。ぜひそれらの把握をしながら、モニターをさせていただきながら、何らかの課題が指摘された場合は、それをフィードバック可能なシステムも構築できないかということを提案させていただきます。

最初の臨床研究のときも、私は日本医学会の部会に、その当時久具先生が委員長で、小児科学会の代表として入らせていただきまして、そこではかなり綿密な審査をして、もし課題があればそれをフィードバックするということもさせていただいていたので、研究の自由というのはもちろん大事ではあるのですが、やはりこのようなシステムが大事ではないかと考える次第であります。

ちょっと時間が延長してしまいましたが、私のお話になります。以上になります。

福井座長: ありがとうございます。

非常に意味深いといいますか、考えさせられる点がたくさん関わっているテーマでして、先生の非常に貴重な御意見を伺うことができて、ありがとうございました。

それでは、川目先生への御質問、御意見を含めまして、委員の先生方から御意見をいただければありがたいと思います。いかがでしょうか。野崎委員、どうぞ。

野崎委員: 野崎でございます。ありがとうございます。非常にいろいろと考えさせられる御発表で、本当にありがとうございました。

1点、これは事実関係なのか、ちょっと分からないのですけれども、先生の御発表の5ページ目にACMGガイドラインのところが出てきておりまして、これはどういうふうに理解したらいいのかなと思ったのでお伺いしたいのですが、Recommendの下のSuggestのほうに「22q11.2DS」と書いてある件です。本日の参考資料3、前回の委員会でも出てきた資料の中で、ISPD(国際出生前診断学会)の資料によると、22q11.2欠失症候群は、臨床的有用に関するデータは不十分で、まだ推奨はされないとあります。本日の参考資料3の6ページ目になります。これは前回の委員会で皆さんで共有したものかと思うのですけれども、こちらのACMGという臨床に携わっておられる先生方の中から出てきたSuggestとISPDで出された推奨せずというスタンスの違いについて、川目先生、何かお考えあるいは情報等をお持ちであればお伝えいただければと思った次第です。

以上です。

川目参考人: 野崎先生、ありがとうございます。

私もその詳細というのはあれなのですが、ACMGのガイドラインのほうがかなり大きなアンブレラ的な。もちろん、アメリカが基盤ですので、そこでの様々な文献とかこれまでのデータを評価した上でのリコメンデーションとしては、一応Suggestということなので、上の疾患とは一段階別に扱われています。なので、一応リコメンドなのだけれども、もし臨床で行うとしたらSuggestの段階ですというような位置づけになっています。なので、ISPDの場合は、ヨーロッパ系の指針です。その辺は多分こちらの委員の関沢先生とかほかの先生方のほうがお詳しいと思いますが、少し違った考え方で出されているのではないかなと思います。

すみません。あまりお答えになっておりませんが。

野崎委員: ありがとうございます。

福井座長: ありがとうございます。

ほかにはいかがでしょうか。渡辺先生、お願いします。

渡辺委員: 日本医師会の渡辺でございます。

今の川目先生の御講演に関しての私の意見でございますけれども、川目先生の13ページ、一番最後に書いてあるお考えに賛同いたします。臨床研究法があって、臨床研究というのはある程度自由度が広い中で、ある程度の規約があるとはいえ、実際に臨床研究を見ていますと、倫理審査委員会を本当に通ったのかと思うような研究が多々あるように思います。

その中でNIPTの臨床研究というのは、先生がお示しになられたように、通常の臨床研究とまた違うファクターが入ってきているように思いますので、今の社会情勢から考えた場合、同等に考えるべきではないのではないかという気がいたします。

それゆえ、何らかのゲートをつくって、先生がおっしゃったように、指導するとか審査するというのは自由度を妨げるので難しいと思うのですけれども、登録をされて、極端に逸脱したものに対しては指導・助言をするという形で、NIPTの臨床研究をどのくらいの数が行っているかというのを把握しておく必要があるのではないかと思います。そうしないと、恐らくNIPTの臨床研究をされるような施設は認証されているはずだと思うのです。そこでそういう研究をすると推進されているというふうに曲解される場合もあるので、ちゃんとある程度のゲートをもって管理をされているという立てつけがあったほうがいいと思いますので、川目先生の考え方には御賛同いたします。

ただ、システムとしてどこがするのかというときに、「学会等」と書かれている先生の御配慮が非常によく分かるのですが、やはり日本医学会のこの運営委員会が望ましいと思うのですけれども、業務量、どのくらいの審査、数を把握し、それを所管するかということを考えれば、別のフレームが1つ要るのではないかと思います。

私のほうは以上でございます。

福井座長: ありがとうございます。

北川委員、どうぞ。

北川委員: 川目先生、御講演ありがとうございました。

私は医療の立場ではなく、福祉の立場で、障害のある子供と家族に関わっております。

その中で先生がおっしゃる、それぞれNIPTに関しても子供のことに関しても本当に個別性が高いと思っていますが、私たちの立場ですと、専門委員会のときもお話ししたのですけれども、障害イコール不幸ではないと。「スティグマ」と先生は書いていますが、そうではない社会の在り方というものを医療と福祉と連携してつくっていかないといけないのではないかなと思います。

最初に障害の「害」をどうするかというお話がありましたが、字を変える、変えないということもありますけれども、障害は人の側でなくて、社会の側、社会と関わる中で障害に直面しているという社会モデルの考え方もありますし、その辺は本当に医療と福祉と今後もっと連携していく必要があるなと思います。

また、歴史によって考え方も変わってくると思いますので、先生のおっしゃる研究をしていく中でフィードバックをしながら研究をしていくと。私はその分野は専門ではありませんけれども、そう思いました。今、ホスピスのこともありまして、短い命であってもどうやって子供たちが輝いていくかというのを医療と福祉で今後協力しながらつくっていく必要があるということを、先生のお話を聞いて思いました。ありがとうございました。

福井座長: ありがとうございます。

ほかにはいかがでしょうか。和田委員、どうぞ。

和田委員: 和田でございます。

川目先生、御発表ありがとうございました。私、非常に勉強になりました。

私自身は新生児科医で、高度な周産期センターにおりますので、出生前の検査・診断が胎児、生まれてきたお子さんのQOLの向上にプラスになるという経験も非常に多いわけです。こういう研究を進めていくということ自体はあまり流れを止めるべきではないという考えを持っています。ただし、皆さんが今まで議論してきたように、NIPTがとても社会的なインパクトが大きく、何らか歯止めをかけながら、皆さんが工夫しながら抑制的に慎重に行っていくという立場は非常によく分かっているのですが、一方で、出生前の検査というのは、NIPTだけではなくて、従来羊水検査もされてきていますし、超音波の検査も非常に進んでいますし、もっともっといろんな検査が進んできていて、NIPTだけ非常に大きな制限をかけるというのはもう難しいのではないかなと思っています。

それで、先生がおっしゃった何らか学会でウォッチしていくとか、申請をしていくということが非常に望ましいことではあるのですけれども、渡辺先生もおっしゃったように、それをどこがやるのですかという話なのです。今日は三上先生がいらっしゃらなかったのでちょっと残念なのですが、日本産科婦人科学会が生命倫理に関して審議・監理・運営する公的プラットフォームをつくってくださいということを関係者とアピールされていると思うのですが、これは早く公的なプラットフォームができればいいなと。そこで申告制にするとか、オープンに、透明性を持って研究していただくということが非常に大事かなと思って聞いておりました。

ただし、これをつくるとなると多分すごい時間がかかると思うのです。その間に何ができるかと考えたときに、川目先生が今日主張されたことに皆さん、賛同される部分もあると思いますし、こういうガイドラインのようなものをつくって、各医療機関が倫理審査をされるときに参考になるようなガイドラインを明示するということはまずできると思いますし、少なくとも認定施設でやっている研究は自発的に申告していただく、あるいはこういうところで経過をヒアリングさせていただくということがあるのかなと思いながらお聞きしていました。

以上でございます。

福井座長: ありがとうございます。

柘植委員、どうぞ。

柘植委員: 川目先生、ありがとうございました。

具体的にどのようにしたらいいのかなというのは、私も先生がお考えになられたことについて迷っていて、具体案が出てこないので、もし御意見とかありましたらというのが2点ありました。

1つが、検査の対象となる疾患名を表に出すということをなるべく避けたいのではないかと思うのですけれども、これは先生がお書きになっていたように、スティグマにつながるというのは、大変そう思うのですが、これを外すというか、記述しないとなると、逆にゲノムワイドとか、ありとあらゆることができますよというクリニックもあるわけですね。

そうすると、なるべくたくさん検査ができたほうがいいのではないかという一般の方の考えというところ、それで増えていくという部分もあって、そしてそれが精度があまり高くないにもかかわらずやられていくというのがあって、ちょっと迷うところなのです。それで先生のお考えを伺いたいということ。

もう一つは、資料の12枚目にありました、臨床研究が行われていくときに透明性を持って実施される必要というのは、確かにそう思います。先ほど和田委員もおっしゃったのですけれども、では、透明性というのがどうしたらいいのだろうか。情報開示をもっとしたほうがいいとは思うのですが、一体どうしたらいいのだろうかということが質問です。アドバイスをいただければと思います。

川目参考人: 柘植先生、ありがとうございます。

私も疾患名を挙げるかどうかということは、実はきちんとした回答、提案というのはまだ考え中であります。そこが難しさなのですね。ある程度研究として知見を得たいとなると、どうしても限られた母集団とか限られた疾患のほうが多分きちんとしたデータが出る可能性も高いので、ただ、それがいろんなところで、いろんな大学で幾つも出てきてしまって、その疾患が載ることはまた以前のような大きなインパクトになるかなと思うのです。

なので、研究の題目としてはまさにゲノムワイドみたいな形であり、ただ、実際の内容は少しすぼめてもいいのかなというところがあります。

それと関連してですが、まさに透明性のところなので、透明性はモニターというか、登録制度、申告制度というのをすることがまず1つだと思います。

あと、COIをぜひきちんと書類に関して、研究計画書の手続等についてやるということを。

先ほど和田先生からガイドライン的なものが何かできないかという非常に現実的な御提案があったのですけれども、確かにそういうものに透明性の確保についての案という形で挙げておくということで少しでもできるのではないかなと感じたところです。

以上です。

柘植委員: ありがとうございました。

福井座長: 横野委員、どうぞ。

横野委員: 川目先生、ありがとうございます。非常に勉強になりました。

私からは前回の山田先生からの御報告も含めての感想というか、意見ですけれども、今回御紹介いただいたACMGのガイドラインは、診療ガイドラインということだと思います。

我が国では特に生殖医療回りの分野というのは様々な指針がつくられたりしてはいますが、主に社会的な部分に関するところで学会等が指針をつくることが多くて、医療としての評価ということが必ずしも明確でないままいろいろなものが進められているようなところがあるように感じております。

NIPTに関しても、今、日本医学会のほうで指針がつくられていますけれども、これは情報提供と施設認証の指針ということですので、医学的にどう評価するかということについては、今、どこを見ればいいのかということがちょっと分からないような状況があると思います。なおかつ、以前は学会としての指針もありましたが、そちらもどちらかというと制度的な部分ですとか、情報提供の部分が中心だったと思います。

ACMGのガイドラインに関しては、先ほど川目先生からお話があった遺伝カウンセリングパラダイムといった側面に対する配慮も含みつつ、これを診療としてどのように評価するかということをシステマティックエビデンスレビューに基づいて示しているものです。今、既に実施されている3つのトリソミーに関しては様々なデータがあるので、研究としてそういったエビデンスをどうするかということがあまり重要ではなくなってきていると言えるのかもしれないのですけれども、これから想定されるものに関しては、きちんと医療としての評価をしていくということが非常に重要かなと思っています。

そういう意味で、先ほど先生から御提案がありましたような形で、それをどういうふうにどこまで強力にコントロールするかということに関しては、私自身は、これは研究ですので、研究への介入ということが過度になってしまうのは好ましくないと思うのですが、研究として行われたものがきちんと今後のエビデンスに反映されていくような形で管理をしていくということは非常に重要だと思っていますし、診療としての評価というものを今後どういうふうに明確にしていくのかということについても検討しなければならないと思っています。

以上です。

福井座長: ありがとうございます。

中込委員、どうぞ。

中込委員: ありがとうございます。中込です。

実際にずっと小西班から出生前検査に関連する研究や日本の現状の変化を見てきましたが、今回着床前診断の指針も様々な学会が協力して、産婦人科学会がリードを取られて行われたプロセスの中で、やはり重篤さをどう考えるかということが出ました。

今回、川目先生に今までの遺伝カウンセリングの概念を改めてまとめていただいたときに、そしてそのガイドラインを拝見したときに、性染色体疾患や22q11.2欠失症候群が出生前検査をされることのメリットは一体何なのだろうかということを感じました。

先生がおっしゃったように、生まれる前に分かることに非常にメリットがあるということと、生まれてから分かっても大丈夫だと。遺伝カウンセリングをやっていますと、実際に全てを知りたいという方と、授かったのだから知らなくていいという方と二分されるわけです。この研究がなされて、性染色体あるいは22q11.2欠失症候群がNIPTで精度高く検査できるとなったときに、これを一体どう使うのかというところ、この研究のそもそも論というところが私は疑問で、本当に重篤で、生まれたときに、あるいは胎児期にとても赤ちゃんがかわいそうなのだと思うような。それもどこで線を引くかは難しいのですけれども、それを御両親と考えていくプロセス、妊娠期のプロセスでどのようにケアをしていくのかという病気であれば分かるのですが、これらの疾患をこれから研究的にやっていくときに、倫理指針をつくっていくときに、なぜこれをNIPTでやることが必要なのかという論点が研究計画書の中にしっかりと書かれることと、そしてそれが研究的エビデンスにいつぐらいに確立していく見通しがあるのかということ。それが研究計画に書かれることをぜひ期待したいと思った次第です。

2点目として、研究するとなったら、研究費というものがあって、そこに対して研究費がかかる。そして、川目先生が今、COIをしっかりと定義するようにとおっしゃったのですけれども、今、お子さんのお母さん、お父さんと私はとても接点があるのですが、生まれたときに何らかの孤立感があり、就学や就労、そういった中での理解が乏しいことから、御家族が生活あるいは子供を受け入れるしんどさというのがあるわけですから、やはり検査をしながら、研究費として生まれたその人たちが豊かに暮らせるような研究や支援の予算等々に出るようなシステムにしていくことが大切かなと思いました。

川目先生、整理してくださってありがとうございました。

福井座長: ありがとうございます。

川目先生、どうぞ。

川目参考人: 一言。先ほどACMGのガイドラインを横野先生も御指摘いただきましたけれども、あくまでもアメリカのACMGのガイドラインですので、私も性染色体とか22qをぜひ研究してほしいとか、そういう意味は全くございません。ただ、臨床でああいう概念として既に出ているということなので、先ほど横野先生がおっしゃったように、3つのトリソミーに関しては科学的なものはできている、臨床応用としてはそういう準備はできているということで、まさに先生が御指摘いただいたように、これからもし日本で臨床に応用するのであれば、きちんと別の枠組みを検討し直すというか、アメリカとは別個にし直す必要があると感じております。追加です。

福井座長: ありがとうございます。

野崎委員、どうぞ。

野崎委員: 再び恐れ入ります。2つ、3つあるのですけれども、1つ、先ほどACMGガイドラインとISPDの話をさせていただいた。これはアメリカでの状況と、またヨーロッパの状況の違いというか、医療においても物の見方や、状況によっては幾らか捉えるところが難しいということ、これは日進月歩のことなので、そういう違いがあるのだということを改めて認識させていただきました。

せっかくの機会ですので1つ関連することで。もちろん川目先生やほかの委員の方々にもお伺いできればと思うのですが、特に川目先生の話の中で、解析の分析的妥当性について、この重要性というものがあるとおっしゃっておられたかと思うのです。この専門委員会においても運営委員会においてもこの点は議論があったところで、主にこの点については堤先生が状況等をお分かりであれば教えていただきたいです。解析の分析的妥当性に関して、いろんな検査精度の状況については、衛生検査所が、法令に基づいて検査を担っておられると思います。衛星検査所は、NIPTに限らない検査を行っておられるわけですが、NIPTというものが動き始めて、これに関して衛生検査所において何か状況の変化というものがあるかどうかということについて、堤先生をはじめ、川目先生、何か御承知のことがあればお伺いしたいというのが1つ目でございます。

2つ目は、先ほど来渡辺先生、和田先生、横野先生も御指摘になっておられる研究として進めていくという今後の必要性です。これはいかんともしがたくあるのだろうと思います。この点につきまして、川目先生は一番最初のところで遺伝学的検査の2つのパラダイムということをおっしゃられていて、これは非常に大きなことであろうと。横野先生が御指摘になりましたが、とりわけ日本では診断治療パラダイムという点に若干不足といいますか、もう少しここをみんなで共有できるものがあれば、医療者の皆様方も、あるいは当事者となる、パートナーも含めた当事者の方にも重要な情報となりますし、これは重要なパラダイムになってくるのではないか。この診療治療パラダイムの必要性というものはあるのだろうと感じております。川目先生、日本における診療パラダイムの在り方について何か御意見等があれば教えていただきたいということです。

併せまして、これは専門委員会も運営委員会が担う役割と思うのですけれども、この診断治療パラダイムは必要なことであり、また、遺伝カウンセリングのパラダイムもずっと議論がなされてきているところだと思いますが、もう一つ、こういう検査を受容する社会的パラダイムをこの専門委員会等で議論・検討、打ち出していくという役割があるのだろうと考えます。

ただ、その一方で、今回研究に関するところで、今、公的プラットフォームのお話も和田先生から出ました。私は法学を専門にしておりますが、従来の研究と何か違うところがありそうだということは感じております。感じておるところなのですけれども、それを違うファクターを持った研究だという形で位置づけて、これをどういうふうに、管理という言い方はよくないかもしれませんが、規律していくのかというのは、とりわけこれを公的なという観点で捉えるならば、非常に難しいところだと考えます。本来であれば、日本の体制、制度で言えば、議会なり法令というものが背景にあって、これはこのように違うファクターがあるので、研究等に関しては一定の規律というものを私たちの社会は持たなければならないのだ、こういうことが必要になってくるのではないかと他方で思うわけです。

ただ、そうはいいましても、実際に困った方や困った当事者の方を生まないようにするということが何よりも大事なことになりますので、どういう形でプラットフォームをつくり上げていくのか、考えていくのか、アイデアを出していくのかということについては、また御意見等を皆さんからお伺いできれば、あるいは当事者のいろんな研究をなさっている川目先生の御意見などがいただければと思いました。

以上です。すみません。長くなりました。

福井座長: ありがとうございます。

ほかにいかがでしょうか。

川目参考人: すみません。今の野崎先生の最初の分析的妥当性、いわゆる解析については、堤先生のほうから何かコメントをいただければと思いました。

堤委員: 堤でございます。

実は昨日、NIPTの検査分析機関を見学してまいりました。その施設は分析的妥当性を担保するためにいろんな手だてをきちっと講じているというのがよく分かりました。実際に確認することもできました。現在の検査分析機関の審査は、書類審査にならざるを得ないというところもあります。書類上の審査は非常に厳密にやっておりますけれども、やはり現場に行ってみるというのがすごく大事だなと改めて感じております。NIPTに関して、国内でやっているところだけではなくて、海外でどうやっているのかという問題もあって、物理的に見に行けるかどうかというのもあるのですが、やはり現場を確認させていただくというのは非常に大事なことかなと。

あと、やりようによっては分析的妥当性は担保し得るものです。物理的に担保し得るものですので、ACCEモデルでいけば、その後の臨床的妥当性、臨床的有用性。先生方が今までコメントしてこられたところとどうバランスを取って位置づけるかということは考えておく必要があるかなと思いました。

取り急ぎここまでにさせていただきます。

福井座長: ありがとうございます。

中西委員、どうぞ。

中西委員: 妊婦さん向けの雑誌の仕事をしている者の目線から素朴な感じで思ったのですけれども、検査を受ける妊婦さんたちは自分の血液が違うことに使われるとあまり思っていないのではないかなと思いまして。そこら辺、臨床研究をなさっている機関が検査を担当している場合、臨床研究に使いますよということをあらかじめ言ってもらえて、承認、サインするとかそういった手続を取ってもらえている現状なのかというところを知りたいなと思いました。そこら辺もちゃんと教えてもらえてこそ透明性も図れると思いますし、また、検査を受けたことに対して、もしかして社会のために少しは役立ったかもみたいに思えたりする場合もあるのかもしれませんし、受ける側の立場の目線もちょっと欲しいなと感じたのですけれども。

福井座長: 今は、研究でどういう目的で使われるのかというのはあらかじめ非常に丁寧に説明をして、同意書にサインをいただくということをしていますので、必要であれば透明性を確保するということとも併せて、大丈夫ではないかなと現状は理解していますけれども。個人的にはそのように思っています。

堤委員: 1点だけよろしいでしょうか。

福井座長: どうぞ。

堤委員: 中西委員の御質問にも関わると思うのですけれども、実際の検査の現場で今どうなっているかということを申し上げますと、医療機関と検査分析機関の契約書の中で、検体は検査の目的のみ使用し、検査に用いた検体は適切に廃棄しているということと、第三者提供はしないということがきっちり文書として入っているかどうかを確認しているという状況でございます。それから、臨床検査医学会のほうでもそういう枠組みについての提言が出ておりますので、それを参考にしながら、基本的に今の検査の現場で第三者提供とか目的外利用というのは多分ないと認識して認証をしていると。そんな状況でございます。現状についての御説明です。

福井座長: ありがとうございます。

そのほかはいかがでしょうか。家保委員。

家保委員: 衛生部長会の家保です。

先生方の御意見をいろいろ聞かせていただきました。トリソミーの検査につきましても認証施設外でも現実にやられているということを考えますと、そこの部分についてどう規制をかけるのかというと、現実では難しいのかなと思います。学会のガイドラインをつくっていても、学会員でなければその行為に縛られないという事例が過去にも散見した歴史があります。少なくともNIPTの認証施設の中で研究をされる場合には、きちっと認証した責任として、公正性のある適切なところがモニタリングして一定コントロールをかけるような仕組みをしないといけないと思います。

それがきちっとやられているということを国民の皆さんに情報提供して、臨床研究の一定の質の担保もされているし、NIPTの認証、取組についてもきちっとやっているという認識を深めることが大事なのではと思います。先生が書かれていたように、学会等で確認を行う等々で言えば、負担にはなると思いますけれども、日本医学会の出生前検査認証制度等運営委員会が認証した施設の臨床研究についてはきちっとモニタリングして、国民に保障するような制度をまずつくっていって、それ以外のところについては順次規範となるような部分を示すのが最初の段階ではないかなと思います。

以上です。

福井座長: ありがとうございます。

ほかにはいかがでしょうか。河合委員、どうぞ。

河合委員: 結局、研究であれ、認証施設が非認証施設と同様のほかの検査、3つのトリソミー以外の検査に乗り出すということをどう考えるかというお話をしているのかなというのが私の理解です。これについて国民の理解を得るにはどうしたらいいかといいますと、透明性が保てる組織をつくるというのはとても大事だと思うのですが、なぜほかの病気の検査に乗り出すのかというところが、お話を伺っていて、これで説明できているのかなと。

何となくそこが物足りない気がします。

NIPTが始まったときは非認可施設の検査数が非常に多くなったという実態が何度もいろいろな調査で報告されてきたと思うのですけれども、今、私たちは例えば22q11.2症候群という病気について実態をどれだけ把握しているのでしょうか。また、この検査を非認証施設で受けた妊婦さんがその後どのような道を歩いているのかということについて、どれくらい分かっているのかなということがありまして、そういったところで大変な思いをなさっている妊婦さんのために始めるというのであれば、これは3つのトリソミーと同じであって、よく理解されます。また、国際的にもこの検査が盛んに研究されていて、日本は鎖国状態であるということについて、いろいろ学術的にも問題があるかもしれないとか、なぜやるのかというところをもう少し聞きたいです。

以上です。

福井座長: ありがとうございます。

大分時間も押し迫ってまいりました。関沢委員、どうぞ。

関沢委員: 産婦人科医の関沢です。

今、お話がありましたように、NIPTの対象をそれ以外の疾患に広げていくのかということですが、先ほど和田先生がおっしゃったように、現実的に産婦人科の現場では超音波検査とか各種検査が行われていて、赤ちゃんに一定の問題があることが見つかる例が増えてきているという現状があります。そうすると、妊娠中に羊水検査なりをして赤ちゃんを調べましょうという提案は選択肢として必ずどこでもされています。それをGバンド法で染色体検査をするだけではなく、最近はマイクロアレイとか様々なものを使って検査するようになっています。その結果、例えば22q11.2欠失症候群が見つかるとか、そういったこともそれなりにあるわけです。

今回、赤ちゃんに形態異常があるなどのリスクが高い人たちを対象とするとか、そういった条件の下でNIPTを用いて染色体の全領域を網羅的に見られる状況になれば、現実的に羊水検査を受ける、受けないという判断においてNegative Predictive Valueの高い検査ですから、陰性とわかって羊水検査を受けないでいいと判断する人もいっぱい出てくるわけです。

だから、もともとNIPTは羊水検査を受けるかどうか、そういったことを避けられる人がいるかどうかを区別するために開発されてきた検査であるということを考えると、特定の目的で羊水検査の受検に直面する妊婦さんは臨床現場にはいっぱいいて、そういった人たちの選択肢が現状では制限されていて、羊水検査を受けざるを得ないという状況になっています。そういったことに直面する妊婦が非認定施設に行かないとNIPTで検査できないという現状というのは問題が大きいと産科医としては思います。

今日川目先生の御提案は、基本的には前回山田先生が提案していただいた内容とほぼ同じ内容で妥当なものだと思いますし、ぜひそういった方向性で臨床研究について進めていただきたいなと思っています。

また現状ですけれども、我々産科医からすると、専門委員会の報告書が出て、その中では臨床研究として取り組むものであれば取り組んでいっていいことが書かれています。どこかが手を挙げて実際動き出すか分からない状況にあると思います。ゆっくり考えていくという段階ではないと思いますので、そのことについても御配慮いただきたいと思います。

以上です。

福井座長: ありがとうございます。

ほかにはございませんでしょうか。小崎先生、どうぞ。

小崎委員: ACMGの正会員として発言させていただきますが、これはジェネラルなポピュレーションのスクリーニングを勧める内容ではありません。感度や特異度について問題がないことを是認するというものでありまして、SCAについて例えばXXXを勧めることが、総合的に見てそれをこの学会が勧めているという内容からは程遠いものであることを発言させていただきたいと思います。私、今、原文を読み直して発言しております。

もう一つ、22q11.2のスクリーニングについては、コストエフェクティブネス、社会に対する負担を減らすことができるという計算があり、それが引用されております。そのような議論でこれまで行ってきたことは多分ないと思います。個別のカップルにとってどうかという議論が主に進められてきていると思いますので、このリコメンデーションについて取り上げるのであれば、アメリカの臨床医がこれを進めることを認めたというようなやや単純化された議論ではなく、そこに引用されているそのようなコストエフェクティブネスという、これまでこの専門委員会あるいは関連する会議で議論されてきていないような論文がひもづけられているということを確認いただきたいと思います。

私、臨床研究を否定する立場にはありませんが、これが米国で認められている根拠になっているというような議論はやや早計に過ぎると考えたので、最後に発言させていただきました。可能であれば、この論文を論拠にするのであれば、日本語に翻訳して委員が精読するというプロセスも必要ではないかと考えております。

以上です。

福井座長: ありがとうございます。

ほかにはいかがでしょうか。よろしいですか。

大変議論が難しくて、簡単に結論を引き出せない状況だとは思いますが、基本的には川目先生が御提案になった最後のページの大きな方向性につきましては、御賛同いただける委員が多いのではないかと思いました。

ただ、さらに議論は深めていきたいと思います。関沢先生がおっしゃったように、そんなに時間がないということも重々承知しておりますけれども、もう少し議論の時間をいただきたいと思っております。研究グループだけではなくて、各機関の倫理審査委員会、できましたら日本医学会の出生前検査認証制度等運営委員会、そしてこの専門委員会、何らかの形で研究をモニターするということは最低限必要ではないかと考える次第でして、できましたらその方向で事務局もこの会議の今後の進め方を考えていただければと思う次第です。

現状ではその方向でよろしいでしょうか。たくさん御意見をいただきまして、先生方の発言内容につきましては十分配慮した上で進めていきたいと考えます。

それでは、時間もございますので、議事3「その他」でございますが、全体を通して何か御意見、御質問等はございますでしょうか。中込委員から情報共有をいただくテーマがあると聞いておりますが。

中込委員: ありがとうございます。

専門委員会での出生前検査に関する提言が出されてから、日本遺伝看護学会と日本助産学会で助産師全体に向けて、NIPTに関連して保健師が全ての妊婦さんに検査のことをきちっと伝えて、そしてファーストタッチの助産師あるいは看護職が対応するという流れになってきたこともありまして、この教育動画というものを作成しました。今、準備中で、10月からは動画の配信と調査をする予定です。一応、研究的に行って、研究の同意を取りながら、そして学習動画という形で、この仕組みがどうしてできたのかとか、あるいは助産師がどういう役割をしてほしいのか、ファーストタッチのときのいい事例・よくない事例なども出しながら御覧いただいて、アンケートに答えていただくという内容にしております。これを基幹施設、連携施設にお送りしたいと考えています。

あと、玉井先生の日本ダウン症協会と日本遺伝看護学会が協力してブックレットを作成しております。これも最初の保健師、あるいは検査にいろいろ悩む妊婦さんに対する助産師の対応、そして赤ちゃんが生まれるときの本当に救急の、13トリソミー、18トリソミーも含めた形の生き抜く赤ちゃんにどんなケアをしてほしいかということ。そして育てていくのに体づくりをする抱き方とか遊び方とか、そういったことと、離乳食に関連すること、母乳に関連することも、強制するわけではないけれども、お母さんが最初に赤ちゃんにしてあげられることを含めて、大体2歳ぐらいまでのお子さんを育てているお母さんたちが迷わないように、保健師、助産師、看護師が対応できるようなブックレットを作成しているということを御報告したいと思います。

以上です。

福井座長: ありがとうございます。

それでは、本日予定していた議事は以上となりますが、最後に事務局から連絡事項等ございましたらお願いいたします。

上出課長補佐: 本日、皆さん、貴重な御意見をいただきましてありがとうございます。

また、本日の御意見を踏まえまして、福井座長と御相談しながら、次回の会議については改めて御連絡をさせていただきたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。

福井座長: ありがとうございます。

これで終わりとしたいと思いますが、最後に一言。北川委員がおっしゃいました障害イコール不幸ではないという価値観を社会全体が持てるかどうかということも、恐らくこのテーマの議論を進める上で非常に重要で、私たちの心に深くとどめておかなくてはならないように改めて思いました。

それでは、本日の委員会はこれで閉会とさせていただきます。本当にありがとうございました。