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こども政策の強化に関する関係府省会議(第2回)

概要

  • 開催日時:令和5年2月7日(火)17時45分から19時00分まで
  • 開催場所:中央合同庁舎第4号館11階共用第1特別会議室

議事

  1. こども政策担当大臣あいさつ
  2. 有識者ヒアリング
    「児童手当を中心とした経済的支援の強化」
    松田 茂樹 中京大学現代社会学部教授
    山口 慎太郎 東京大学大学院経済学研究科教授
    渡辺 由美子 NPO法人キッズドア理事長
  3. 意見交換

配付資料

議事要旨

(1)こども政策担当大臣あいさつ

  • これまで、政府では、保育の受け皿整備、幼児教育・保育の無償化などライフステージに合わせた支援を進めてきた。
    少子化対策関係の予算額は平成25年度の約3.3兆円から、令和4年度には約2倍の6.1兆円へと大きく増加している。また、家族関係社会支出の対GDP比は、平成25年度の1.13%から、令和2年度には2.01%に上昇している。
  • 他方で、少子化の背景には、個々人の結婚や出産、子育ての希望の実現を阻む様々な要因があり、未だに多くの方のこどもを産み育てたいという希望の実現には、至っていないと認識している。
  • 少子化が更に進むなど社会経済情勢が変化している中で、今後、重点的・抜本的に取り組むべき政策も変化している。
    そうした中で、経済的支援の在り方、現金給付と現物給付の在り方についても、様々な意見があるものと承知している。先日も、福井県で、総理と一緒にお話を伺うこども政策対話を実施し、多くの子育て当事者の方々から様々な生の声を伺った。
  • 本日は、児童手当を中心とした経済的支援の強化について、松田先生、山口先生、渡辺理事長から、それぞれプレゼンテーションしていただき、その後、意見交換を行う。
  • 重要なのは、オールジャパン、政府一丸となって在るべきこども政策についてしっかり議論することであり、今回も、ぜひとも忌憚のない意見交換をしていただきたい。本日の議論も含め、3月末を目途に取りまとめるたたき台にいかしていきたい。

(2)有識者ヒアリング

中京大学現代社会学部 松田茂樹教授から、資料1に基づき説明があった。

東京大学大学院経済研究科 山口慎太郎教授から、資料2に基づき説明があった。

NPO法人キッズドア 渡辺由美子理事長から、資料3に基づき説明があった。

(記者退席)

(3)質疑応答・意見交換

(構成員)

  • 児童手当について活発に議論がなされているが、主要論点の1つとして所得制限の撤廃がある。所得制限がなければ、7~8年ほど進行が早まった少子化に、歯止めがかかったのではないかとの質問が国会等の場で行われているが、本当に因果関係があると言えるのか、先生方の所見を伺いたい。

(松田教授)

  • 所得制限については、少なくとも我が国については、出生率に有意な影響はないのではないか。所得制限の問題は、年収が1千万を超えている方も、特に都会では、ゆとりのある生活をしているわけではないということから提起されているのではないか。

(山口教授)

  • 現金給付が増えたとしても、出生率はそんなに反応しない。所得制限を撤廃すべきという声は、子育てに対する負担感からではないかと思う。

(構成員)

  • 松田先生が、夫の労働時間が短いと出生が起こりにくくなったという研究について言及されていたが、詳細を伺いたい。単純に労働時間の長短の問題ではなく、働き方の柔軟性など働き方に応じた多様な対応が必要とは認識しているが、ご指摘があれば伺いたい。

(松田教授)

  • 3つの調査で同様の結果が得られたもの。ある程度キャリア形成や所得を上げていく上では労働時間も必要になるという経済的な要因が大きいのではないか。必要なのは、労働時間を一律に短くするのではなく、選択肢を広げることではないか。

(構成員)

  • プレゼンテーションの中で、教育費負担について指摘があった。政府では、令和6年度からの給付型奨学金を中間層へ拡大、大学院段階の出世払いの仕組みの導入を検討しているが、少子化対策に資するという観点から御意見あれば伺いたい。

(渡辺理事長)

  • 高等教育における私費負担が大きいことは、希望するこどもの数を持つことができない要因となっている。一番いいのは高等教育の無償化。どのような家庭でも行けるようにすべきだが、現行制度は低所得層には手厚いものの、働いて少し収入が増えると急にもらえる金額が少なくなってしまうので、中間層への拡大は非常によい。出世払いについては、将来こどもを産むことを考えると、若い人の可処分所得が増えるという観点からも、基準とする年収は高めにした方がよいのではないか。

(松田教授)

  • 資料30ページは、こどもが1~2人いる有配偶女性が、どの施策を実施すればもう1人産もうと思うかを見たもの。児童手当と並ぶかそれ以上に、大学入学金や授業料の負担軽減は反応が大きい。給付型奨学金の拡充については分析していないが、感覚としては、出生率にはあまり影響しないのではないか。また、出世払いは、少子化対策とは別に考えるものではないか。

(山口教授)

  • 出生率に影響があるかはエビデンス承知していないが、出世払いはとてもよいと思う。目先の生活が大変で借入制約に直面している家庭に、借入できるようにすることは大きい。
    また、将来的にうまくいかないというリスクヘッジにもなる。個人が抱えるには大きすぎるリスクを消し、借入制約を取り除くという2点において、非常にいい政策であり、どんどん導入すべき。

(構成員)

  • 経済的支援については、児童手当のような現金給付のほか、幼児教育・保育の無償化、こどもの医療費無償化、教育費の軽減など、特定の目的に沿った家計の負担軽減などの要望があり、組み合わせをどう考えるかも重要と考えている。経済支援のあり方全体としてどのようなバランスがよいのかご助言があれば教えてほしい。

(松田教授)

  • 経済的負担を直接軽減するには児童手当が王道だが、それに準ずる施策としてのクーポンや負担軽減は、必ず掛かる費用を下げることになるので、現金給付に近い効果を発揮し得るのではないか。直接の現金給付を軸に据えるべきだが、様々な負担軽減もあり得る。幼児教育の無償化は諸外国に追いついたところであるが、0~2歳については他国でもあまりやっていない上に、利用している方も一部であり、今の段階で無償化するのは課題があると思われる。

(山口教授)

  • 現金給付の多くは、貯金に回り何に使われているかが分からないので、皆が使うサービスを給付する方が良いのではないか。また、こども医療費については、自己負担を0円とするのと少額負担をしてもらうのとでは全然違うことに気を付けるべき。0円にすると、過剰に医療を受けようするという研究結果がある。限られた医療資源の有効活用を考えると、負担0円と少額負担とでは、実際上インパクトが違うことにも留意が必要。

(渡辺理事長)

  • 今産まない人に産もうと思ってもらうようなインパクトが伝わるか。いろいろなことを少しずつやっても、若い人に響かない。全体的に見たときに、これはすごくやったと思ってもらえることが必要。伝え方も含め、インパクトを考えることが必要。

(構成員)

  • 夫の労働時間が長い方が出生率が高くなるという指摘があったが、長すぎるとまた出生率が落ちるなど労働時間の上限も影響はあるのか。また、第2子は男性の育児時間が長いほど生まれるという結果もあるが、第1子と第2子で差はあるのか。

(松田教授)

  • 私の使用したデータでは、第1子について紹介した結果が出ていた。政府の別の会議において、有識者から、若い世代の残業は雇用の安定につながるし所得にプラスになる、という話があった。残業を一律に規制することは、子育て世帯の目線からも違うのではないか。

(構成員)

  • 少子化対策は、ターゲットを絞る面と、垣根を作らず幅広く実施する面と、どうバランスをとっていくかが難しい。正解があるわけではなく、どのようにロジックを整理して世間に説明していくかが知恵の出しどころ。
  • 政府では、昨年秋に、妊娠・出産期に5万円のクーポンを出す施策を打ち出したが、事業の重要なところは、お金を渡すのとあわせて相談の機会にするというところ。経済的支援が単にお金を渡すだけにとどまらず、生きたお金になるよう、何か知恵や工夫があれば伺いたい。

(渡辺理事長)

  • 現金と現物の組み合わせではないが、日本全体がこどもに冷たい社会になっている。妊婦が電車で嫌がらせを受けるなど。社会全体で妊婦やこどもを大切にしようというメッセージがあって、女性が働きながら楽しく子育てできることを大事にします、という機運の醸成があるといい。病児保育も大事だが、こどもが病気だったら帰れる社会にしていくべきで、子育てをすること自体がすごくつらくなってしまっているのではないか。
  • 政策の組み合わせは重要だが、そもそも、産んだ後、相談窓口の方につながらないと苦しい状況にあることが問題。相談窓口とつながらなくても、地域に見守られながらこどもを育てられることも重要。

(山口教授)

  • 早い段階で、子育て当事者と相談窓口とが接点を持つのは素晴らしいこと。一方、現金給付は、出生率の観点だけで見ると、私はあまり期待しておらず、現物給付の方がよいと思われる。資料の34ページのとおり、ただちに因果関係を主張するものではないが、男性の家事・育児負担の低さが出生率の低さにつながっていると言える。有効な少子化対策を考える際には、女性の負担を減らすことができるかという観点で整理して優先順位を付けいくのがよいのではないか。

(松田教授)

  • クーポンと支援の組み合わせはよいと思う。我が国は現物給付を拡充してきたことをまず押さえた上で、さらに現物給付をどんどん拡充していくステージにあるかというとそうではなく、今あるものをしっかり使う、抜けているところを補うことが必要。一方、現金給付は重要であり、まだ十分にされているとは言えず、我が国がもう一歩チャレンジできるところがあるのではないか。

(構成員)

  • 松田先生の資料5ページの図にある、主体的に出生を選択しない個人・家庭は、こどもを産み育てる家庭を応援するというのも大事な視点だと思う。制度を支える規範、社会全体を支える雰囲気の醸成に向けて、どのような取組をしたらよいと思うか。

(松田教授)

  • 具体的な方法は2つあると思う。1つは経済的支援。こどもを産み育てていない方も含めて全員が負担する消費税などの形で子育て世帯を支える。2つ目は、こどもを支える温かい気持ちや社会的な雰囲気づくり。20年程前に内閣府が海外での子育て経験がある母親を対象に実施した調査によると、海外の方が子育てしやすかったことと、その一番の理由は、制度ではなく、「こどもに対してやさしいか、温かいか」ということだった。こどもを育てていない人も、こどもに温かいまなざしを注ぎ、何かあれば手を差し伸べる雰囲気づくりが大事。

(構成員)

  • 少子化対策は、未婚率の上昇をいかに抑えるかである、と唱える方もいるが、若い世代の方が持つこどもの数は減っており、これを数十年放置すると有配偶者出生率も低下するのではないかと危惧している。未婚率の上昇を抑えることに加え、有配偶者出生数を上げる施策も必要ではないか、これに対するご意見を伺いたい。また、結婚しない理由については、若年層の所得低下、非正規雇用の拡大、奨学金負担が重い、高等教育に進みづらい、適当な人に巡り合わないなど様々な要因が指摘されているが、未婚率の上昇を抑えるためにいかなる政策が必要か。20代の結婚していない人に聞くと、こどもを産んだ後の支援や仕事との両立など上の世代の状況を見ると、様々な課題があるから、結婚もこどもを持つことも躊躇している、という声があった。将来こどもを産むか産まないかは、今の子育て世代に対する子育て支援や両立支援を見て判断しているのではないかと思うが、実感や定量的なものがあれば教えてほしい。

(松田教授)

  • 未婚率上昇の出生率低下に対する寄与度は大きいということは、人口学でよく言われていることだが、再考の余地があるのではないか。こどもを産み育てるのが難しいから結婚しない人も含まれており、未婚率が少子化に与える影響を過大評価している可能性がある。
    こどもを持つことへの展望にも関わるので、未婚率単体で考えるのはどうかと思う。上の世代を見てどうかというデータはないが、肌感覚はその通りだと思う。今の子育て世代を支援して楽にしてあげると、それを見た下の世代も結婚したいと思うのではないかと思う。

(山口教授)

  • 未婚化・非婚化の原因を考えると、結婚後にこどもを育てづらいということが影響している可能性がある。そうなると、未婚化・非婚化は少子化の原因なのか結果なのか簡単に切り分けはできない。親のライフスタイルをこどもが真似することはよくあるので、親が子育てを楽しめるような環境を整備できたら、世代を通じてこどもを持つことの喜びが伝わるのではないか。

(渡辺理事長)

  • 最近は、結婚してもこども1人でよいという人が多く、2人産めば頑張った方だと言われる。こどもを産みたい人に産んでもらうことが大事であり、未婚率だけを解消しても出産は増えないのではないか。また、若年層の所得を増やすことも大事だが、子育て支援の充実も大事。例えば、保育園でおむつを処分するというのは本当に大きい。子育てする上では、こういった地道に大変なことが多いので、お母さんが困っていることにきめ細かく寄り添うべき。

(構成員)

  • 家族制度と少子化の関係について、我が国では、まずは婚姻数を増やすことを前提に、出生数を上げていくということであるが、欧州は婚外子が多いことが指摘されている。家族制度を多様化することによって、出生数や出生率は上がると考えるか。

(松田教授)

  • 欧州では事実婚が広がっていると言われるが、日本とは結婚や離婚の制度がそもそも違う。フランスのパックスやスウェーデンのサンボの制度は、日本の結婚制度とほとんど同じ。フランスの結婚制度は宗教的な色彩が強いのに対し、役所に書類を出せばよいとするのがパックス。日本の結婚制度は既にそうなっている。日本の家族制度は変えるべきところはあるけれども、このままで出生率を上げていくことにチャレンジするしかないと思う。

(山口教授)

  • 家族制度それ自体は検討に値するが、出生率に対しての影響はほとんどないのではないか。婚外子が増えたスペインでは出生率は低いままだし、欧州では婚外子が生まれてもその後、結婚に至っているケースが多い。

(渡辺理事長)

  • ひとり親の貧困率は高くなっており、婚外子を認めたとしても、女性がこどもを育てることになり、よほどよい金銭的支援がない限りは、女性が貧困になることが目に見えていて、明るい展望が描けない。制度が変わっても選ぶ人は少ないのではないか。

(構成員)

  • 少子化対策として住宅政策が必要だという意見もある。若い世代の住居費負担は非常に大きい。住宅政策について、どのような形で支援をすれば少子化対策や子育て支援につながると考えるか。

(山口教授)

  • 家賃補助や安価な公営住宅の提供といったベーシックなサービス提供があると、安心して暮らせるのではないか。今まであまり議論されていないが、非常に重要な視点かなと思う。

(渡辺理事長)

  • 住宅政策は重要だが、あまり人気のない住宅を提供しても若い方は喜ばない。例えばこどもの教育環境がよいなど、選ぶ側の視点に立たないと、ミスマッチが生じる。住宅手当や家賃補助など、好きなところに住んで経済的メリットがあるとよい。

(構成員)

  • 働き方改革、とりわけ男性の育児参加の促進は、社会的な要請も強い。日本では、育休制度は充実しているが使われていない、と指摘されている。男性の育休取得率を欧米並みに引き上げたり、女性に家事・育児の負担が偏っていることを是正したりすることを目標に据えたときに、どのような施策が効果的だと考えるか。

(松田教授)

  • 男性の育児参加は、育休の長さなど、選択肢を広げることが大切。女性の家事・育児負担の軽減は、男性の参加も大事だが、別の視点で、ファミリー・サポート・センターの活用、家事サービスやベビーシッターの活用などにより、総合的に負担軽減してはどうか。

(山口教授)

  • 男性に育休を取ってもらうのは大事な出発点。諸外国のデータで、育休を1か月取ると、その後も育児参加するとのデータがある。育休を取得しない理由として経済的な理由を口にする人が多いが、誤解も多いと思われるので、誤解を解くべき。また、例えば1か月限定でいいので手取りとして100%もらえるようにすれば、インパクトが大きいのではないか。

(渡辺理事長)

  • 男性が育休を取った方が経済的メリットが大きくなれば、取るだろう。男性が取りたいと思われるような施策があるとよいのでは。