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こども政策の強化に関する関係府省会議(第5回)

概要

  • 開催日時:令和5年3月28日(火)17時35分から19時00分まで
  • 開催場所:官邸2階大ホール

議事

  1. こども政策担当大臣あいさつ
  2. 有識者ヒアリング
    「こども・子育てにやさしい社会づくりのための意識改革」
      鎌田 實 子ども・子育て市民委員会共同代表、医師
    「多様な支援ニーズへの対応」
      北川 聡子 社会福祉法人麦の子会理事長
            一般社団法人全国児童発達支援協議会副会長
      新保 幸男 神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部教授
      橋本 達昌 全国児童家庭支援センター協議会会長
            児童家庭支援センター・児童養護施設・子育て支援センター「一陽」 統括所長

3.意見交換

配付資料

議事要旨

(1)岸田総理大臣あいさつ

  • 先日17日に、少子化・子育て政策に関して、私が目指す社会像と基本理念について、記者会見で発表した。
  • その中で、3つの基本理念の1つとして、「社会全体の構造・意識を変える」ということを掲げた。これまで関与が薄いとされてきた企業や男性、さらには地域社会、高齢者や独身者を含めて、皆が参加し、社会構造・意識を変えていくという、従来とは次元の異なる少子化対策を実現したいと考えている。また、さらに基本理念の1つに、「全ての子育て世帯を切れ目なく支援する」ということも掲げた。
  • 子育て支援サービスの内容についても、親が働いていても、家にいても、全ての子育て家庭に必要な支援をすることとあわせて、こどもの貧困、障害児や医療的ケアが必要なお子さんを持つ家庭、ひとり親家庭などに対して、より一層の支援を行うことが必要であると考えている。
  • 本日は、こうした基本理念に関して有識者の皆さまから、忌憚のないご意見を承り、こども・子育て政策の強化にさらにつなげていきたい。

(2)有識者ヒアリング

社会福祉法人麦の子会理事長、(一社)全国児童発達支援協議会副会長 北川聡子氏から、資料2に基づき説明があった。

神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部教授 新保幸男氏から、資料3に基づき説明があった。

全国児童家庭支援センター協議会会長、児童家庭支援センター・児童養護施設・子育て支援センター「一陽」統括所長 橋本達昌氏から、資料4に基づき説明があった。

子ども・子育て市民委員会共同代表、医師 鎌田 實氏から、資料5に基づき説明があった。

(3)質疑応答・意見交換①

(岸田総理)

  • こどもや若者が置かれている状況は多様であり、また、子育てに困難を抱える家庭が顕在化している一方、支援が必要な家庭ほど、SOSを発信することが難しいと指摘されている。こうした家庭に支援を着実に届けるため、アウトリーチ型の支援や、身近に相談ができる体制の整備が必要だと考えているが、気を付けるべきポイントや大事にすべき点、具体的な支援の在り方などがあれば伺いたい。
  • 障害のあるこどもについては、個別のニーズに対応したきめ細かな支援に加え、障害のあるなしに関わらず、こどもが同じ地域の中で育ちあうインクルージョンの観点が必要と指摘がなされる。そのためには地域でどのような取組が必要か、注意すべき点があるか、お考えを伺いたい。
  • こどもの貧困については、ひとり親家庭はこどもがいる家庭の1割だが、その5割が相対的貧困の状況にあると言われている。ひとり親家庭の自立と子育て支援は喫緊の課題と考えているが、注意やアドバイスを伺いたい。

(鎌田氏)

  • 資料4の4ページを参照いただきたいが、仕事と子育ての両立支援に関連する制度の統合が必要。育児休業給付か保育かが受けられるといいが、パートタイムの方や非正規の方の中にはどちらの支援も受けられていない方たちがいて、かなり苦しんでいる。育休を充実させることにより、初めの1年をこどもと母親・父親との関係を濃密にしながらも仕事に復帰できるようにしていくのが本来のスタイルだが、日本では、0歳児の保育は非常に手薄なためこどもを預けることもできず、パートタイムの仕事も続けられず働く場所を失っていくという方たちを救済する必要がある。雇用の問題が根強くあるので、経済的支援も含めた支援が重要。

(北川氏)

  • 障害のあるこどもが幼稚園、保育園や学童などで生き生きと暮らすためには、お互いを理解し合いリスペクトし合うことが重要。学校で、勉強も運動もあまり得意ではなく、自分は学校に行ってもいいのだろうかとこどもが感じている時に、校長先生が一人一人が大切なこどもだと言ってくれたことで、学校に行けるようになったこどももいた。おとなが、どの子も大切なこどもだという意識を持つとともに、こどもの障害特性や発達段階を理解して支えていくことが重要。児童発達支援センターなどについて、こどもと家族を支え伴走するような地域支援の機能の強化が重要。
  • 地域で連携していくほかに、お母さんたちは傷つきやすいこともあるので、理解と共感が求められていると思う。

(橋本氏)

  • アウトリーチの際の留意点については、見守りが、見張られているという感覚になってしまって支援を拒否される事例をたくさん見てきたので、いわゆるゆるい支援が必要かと思う。例えば、レトルト食品を持って行くような食事支援や、ちょっとした家事支援など受け入れられやすい支援が必要。さらに、息の長い支援が継続性をはぐくんで、関係性を構築できるようになるので、支援者としてはそういう心構えが必要。
  • 介護保険と同様に、こどもの分野でもショートステイが必要。冠婚葬祭や仕事で遅くなる時、自分が病気の時など、いざという時にこどもを預かってくれるショートステイが必要。児童養護施設や乳児院などで、地域のこどものショートステイニーズを受けとめていくということが、これからの支援には必要。

(新保氏)

  • 橋本氏のショートステイは重要であるという意見に賛同する。社会的養護においても、障害の領域においても必要だと思うので、今後、こども家庭センターで様々な取組をしようとするときに、基礎自治体がショートステイの事業を利用することは大事になろうかと思う。
  • 住民票の登録変更や児童扶養手当の支給などのデータがあったときに、データを連携させて、保育サービスを利用できるようにする仕組みがやはり必要だろうと思う。その際、難しいのは秘密保持義務との関係であり、データ連携事業を進める際に大きな課題になると思うので、真正面から考えて、法令上の対応が必要ではないか。

(報道関係者退室)

(岸田総理)

  • 政府としても、小倉こども政策担当大臣の下で、政策のたたき台の検討を進めており、本日の話は大変参考になった。本日のお話をしっかりと念頭に置きながら、取りまとめを進めていきたい。今後とも引き続き、お力添えをいただきたい。

(岸田総理大臣、退出)

(4)有識者ヒアリング(補足)

北川氏、新保氏、橋本氏、鎌田氏から、それぞれ補足説明。

(5)質疑応答・意見交換②

(構成員)

  • 「こども・子育てにやさしい社会づくりのための意識改革」に関して、鎌田氏に伺いたい。子育てにやさしい社会と考える割合が低下しており、高齢者がますます増加する中で、高齢者の意識改革が鍵だと考えている。例えば、保育所や認定こども園や幼稚園において、地域の高齢者とこどもが共に過ごす時間を設けるアイデアもあるのではないか。こどもたちにとっては、人生経験豊かな高齢者と接することで成長につながるし、高齢者の生きがいや孤独対策などにもなるし、地域の防犯対策にもなるし、病気になったときに預かってもらうなどもできるかもしれない。また、現場の保育士にとっても、交代で息抜きができて負担軽減につながるなど、一石五鳥か六鳥ではないか。ただし、小児性愛者をどうするか、ノウハウ普及などの問題もあると思うが、ご見解を伺いたい。

(鎌田氏)

  • 大変可能性のある話だと思う。デイサービスや老人保健施設を経営しているが、高齢者はこどもが来ると元気になる。交流により、高齢者は元気をもらったり、昔取った杵柄を使うことで高齢者自身の自己肯定感も強くなる。三世代同居が減っているので、こどもが、お年寄りがいること、弱い存在がいることに気づかなくなっている。弱い人がいることに気づくことによって、いじめも起きにくくなるのではないか。こどもとお年寄りが「ごちゃまぜ」になるのが大事であり、仕掛けをしているところはあると思うので、モデルとしてスポットライトを当てて、あるいは少し補助金を出して、全国に広げていってはどうか。
  • こどもと高齢者とを離しておいた方が安全というふうに思うのではなく、一緒に過ごすことを積極的にやることには大賛成。

(構成員)

  • 説明の中で例に挙げていただいた児童福祉法の改正は、皆様がされている素晴らしい取組が少しでも全国に広まらないかという思いで成立したものと認識している。早期のアウトリーチ支援からケアリーバー支援まで、息の長い、かつ、切れ目ない支援が、どの地域でもできるよう施行に向けて準備しているところ。一方で、市町村によって取組に相当差があるのも事実。改正法に盛り込んでいる、新しい事業や、こども家庭センターの創設などがこども家庭庁としてのミッションの1つでもあると改めて痛感しており、取組が少しでも地域に浸透するための留意点等があれば助言いただきたい。
  • こどもたちの自己肯定感を上げるために、校長先生のご発言でこどもの在りようが変わったというお話があった。いくら制度をよくしてもそれを支える社会や地域が、こどもたち、障害をもっているこどもを含めて、温かい気持ちで見守る社会にしていかないと意味がないのではないかという議論が何度も出ているが、大人の心の持ちようを変えるためにできることについても助言いただきたい。

(橋本氏)

  • 新保氏の資料9ページにあるように、自治体間格差があることは心配。格差をどう埋めていくか、また素晴らしい取組をほかの自治体にどう広げていくかについては、自治体だけで何とかしようと思わない方がよい。地域にある社会資源、民間機関による支援を積極的に生かしていこうとすることが重要。その際、課題になるのは、おそらく情報共有になると思う。民間の人に情報は渡せない、民間の人のいないところで話そうということになりがち。そもそも要保護児童対策地域協議会は情報共有の柵を乗り越えるためにできた制度だが、その中でも情報共有が上手くできていないのが実情なので、この仕組みをどう改善していくかが今後の大きな課題。先進事例の共有は、分かっている人もいるが、分かっていない人もいる。行政は2年から3年で担当者が変わっていくが、それでも好事例をしっかりと捕捉でき、自らの自治体で活かせるように、事例集を作っていくことも非常に重要。今回、小規模自治体における児童家庭支援センターの地域支援に関する事例集を作成しているのでぜひご覧いただきたい。

(北川氏)

  • 難しいことだと思うが、現場で、虐待をしてしまう保護者と話すと、それはつらいねと、よく生き延びてきたよねという背景をもつ方がたくさんいる。そうした方にレッテルを貼らないで、しっかりと受け止めていくことで、保護者はすごく変容するし、こどもと向き合ってこどもを大事にしようとなる。
    また、札幌市の死亡事例があったときに、市全体がしっかり取り組もうと検証し、職員にも読むよう市長が言ってくれた。以前は、市役所は民間に冷たいことがあったが、その後は非常に意識改革があって、里親もリスペクトして、社会的養護の子もがんばって見てくれて、里親さんたちも安心して児童相談所や行政を信頼できるよう変わった。まずは専門家、行政が民間と一緒に手をつなぐ、パートナーシップでやっていくとか、そういうことで市民目線の温かさが変わるのではないかと思う。

(構成員)

  • 多様な支援ニーズについて、学校にも障害のあるこども、不登校の児童生徒、いじめにあっている児童生徒など多様な児童生徒がいる。学校としても地域や関係機関との連携に努めているところではあるが、こどもや子育てにやさしい社会の中で、公教育に求められる役割について、特にみなさんが普段かかわってらっしゃる施設等との連携について見解を伺いたい。
  • 資料1の23ページに文科省の資料紹介があるが、「児童生徒の困難の状況」について、学校の先生が調査の項目に沿って、学習面又は行動面で児童生徒に著しく困難があるかどうかを示しているものであり、発達障害の診断を基にしたものではなく、あくまで先生が判断したというものである旨にご留意いただきたい。

(橋本氏)

  • 児童養護施設や児童家庭センターでは、多様な支援ニーズのあるこどもと関わっている。学校に望むことは、多様性を保障していくための体制の変化だと思う。
  • 例えば、私の施設にいる心理士やソーシャルワーカーは、毎朝こどもを学校に送った後、夕方4時くらいまで時間がある。学校から要望があり、その間、学校で心理的な支援が必要なこどもや、多動で学級崩壊の原因になってしまうような子の横について授業に参加するなどの連携をしている。その間、たくさんのこどもと接することができ、施設の職員にとってもいい影響がある。日頃は施設の、しかも担当のこどもにのみに集中して、前のめりにケアしているところを、いろいろなこどもを見ることによって、職員の視野が広がり、支援の引き出しも増えるという効果も実はある。福祉と教育の連携は、意外と現場レベルでは進んできていると思う。文科省においては、そうした事例を拾い上げ、周知してもらえるとありがたい。学校の先生の中には、福祉との連携を勝手にやっていいのかどうか、不安に思っている方もいる。文科省が音頭をとることで、今後の教育と福祉の連携に期待したい。

(北川氏)

  • 教育と福祉の連携は、札幌市でもずいぶん取り組んでおり、放課後デイサービで学校の先生方の参観日を設けるなど進めてきている。教育と福祉は文化が違うが、そこから連携が始まる、役割分担があると話している。こどもが、学校の中で自分がここにいていいのか、勉強が分からないと思っている状況の中、自治体がサポーターを付けてくれているが、民間などを利用していくことが非常に多様性あるこどもに対応できる方向性になるのでは。私たちの場合は文化の橋渡しを元校長先生がしてくれていて非常に助かっている。

(構成員)

  • 北川氏に伺いたいが、社会のインクルージョンは大事で、こどものうちから多様性があると学ぶことで、それが当たり前だという感覚が身に着くことは貴重だと思う。一方で、こどもは残酷なところもあるので難しいところもあると思うが、どう考えるか。

(北川氏)

  • 一緒にいることだけがインクルージョンではなく、お互い理解しあうことが大事。そのためには、教育者や保育士など大人の役割が大事。先ほど例にも挙げたとおり、大事なこどもだよという意識をいかに浸透させるかということと、トラブルが起こったときはお互いの言い分を聞いたり、お互いに気持ちがあるという対応をしていくことが大事ではないか。その人に合わせたサポートがあって力が発揮できると思うので、幼稚園、保育園、学童クラブなどの場で、こどもに合わせたサポートとはどのようなサポートなのかを知っていただくことが、こどもの理解につながると思う。

(小倉大臣)

  • 少子化対策の総理指示で3つの基本的方向性が出たときに、困難に直面するこどもたちに接している関係者から、多様なニーズへの支援が置き去りになるのではという懸念の声が多数寄せられた。こども家庭庁、まさに支援局を中心に、多様な支援ニーズに政府としてどう対応するかがこども家庭庁の重要な役割の一つ。北川氏のおっしゃるような障害児支援におけるインクルージョンの推進、新保氏のおっしゃるようなデータ連携を活用したアウトリーチ支援の更なる充実も研ぎ澄ませていきたい。また、橋本氏がおっしゃった教育と福祉の連携や、こども家庭センターを中心とした母子保健と児童福祉の連携も、こども家庭庁の下で充実させていきたい。
  • その上で、少子化対策においても、多様な支援ニーズへの対応は非常に重要なポイントであるからこそ、会議回数を追加し、ヒアリングをさせていただいた。どういう状況に置かれてもこどもが健やかに育まれる、社会全体で環境を作っていくことこそが、こどもを持ちたい、さらにこどもを持ちたいという雰囲気にも繋がると思うし、新保氏のおっしゃるとおり、例えば自分が大変な思いをした場合に、その思いを抱えたまま大人になったとき、こどもが自分と同じような境遇を望むかと考えると、今いるこどもたちがどんな困難に境遇しても、社会全体でしっかりサポートしていくことが、これからの少子化対策への対応を考える上で非常に重要な視点と考える。

(構成員)

  • 新保氏に伺いたい。こどもの貧困対策で、現金給付も一定の効果はあるが、貧困の連鎖を断ち切るには就労支援が大事というのは頷くところが大きい。先生が挙げてくださった課題として、就労支援のメニューはたくさんあるが自治体でまちまちであること、支援者に情報が十分に届かないという話があった。ひとり親の就労支援として、まだ足りないところや強化が必要なところがあったらお願いしたい。

(新保氏)

  • 職業の選択肢が限られているように感じる。就労訓練において、看護や介護がしばしば登場するが、もっと広い希望がある。例えば経産省がこれからどういう産業を伸ばしたいかということと関連づけてメニューを広げたり、民間企業が持つアイデアを活用したりするのがよいのではないか。

(小倉大臣)

  • 橋本氏、北川氏にお願いしたいのは、こども家庭庁では、こどもや若者から意見を聴き、聴いた政策に反映する「こども若者★いけんぷらす」という新しい事業のメンバーを募集している。ただ、なかなか自発的に意見を言えないこどもも全国にたくさんいると思うので、こちらから出向いて意見を聴きたいと思っている。障害のあるこども、社会的養護を受けているこども、里親子のみなさんからお話を伺う機会を、こども家庭庁の下で今後たくさん作っていきたいので協力をお願いしたい。
  • 鎌田氏には、介護保険制度を導入した時の様々な経験やお知恵を活かして、子育て支援を社会全体で支えるというコンセンサスを得るためのお知恵をぜひお借りしたい。介護保険と違って子育て支援が難しいのは、介護はみんないつかは年老いて世話になるときが来るという当事者意識があったと思うが、こどもの支援に関しては、こどものいる家庭もあれば、いない家庭もあるし、子育てを終えた人にとっては数十年前と今では環境はだいぶ違うし、今の方が恵まれていると思っているご年配の方もいる中、子育て当事者への支援の充実についてコンセンサスを得ていくのは介護保険のとき以上に難しいのではと個人的な思いもある。ただ理解を得ていくことは重要で、そのための国民運動をしっかりやらなければならないと思うので、引き続きご指導いただきたい。