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三原大臣記者会見(令和7年4月1日)

三原大臣記者会見要旨

(令和7年4月1日(火)9時26分から9時44分 於:こども家庭庁記者会見室)

1. 発言要旨

おはようございます。私から一件ご報告をいたします。本日、こども家庭庁発足から3年目を迎えました。

これまで創設以降の2年間で、こども家庭庁は、政府のこども政策に横串を通しつつ、司令塔機能を発揮して、「こども大綱」の策定や、3.6兆円の加速化プランを含む「こども未来戦略」策定に取り組んで、こども・子育て事業を抜本的に強化してまいりました。

昨年の通常国会では、「こども未来戦略」を具体化するための「子ども・子育て支援法」等の改正や、こどもたちの安全を守る「こども性暴力防止法」の制定も実現をいたしました。

また、昨年12月には「保育政策の新たな方向性」や「放課後児童対策パッケージ2025」を策定し、共働き世帯を始めとした子育て家庭への支援の充実のほか、本年1月には、旧優生保護法補償金等支給法の施行に伴う取組も始まりました。

更に、昨日成立いたしました令和7年度予算におきましても、こども・若者・子育て家庭を取り巻く重要な課題に対応するための必要な事業を計上し、これらに取り組んでいくこととしております。

本日3年目を迎えまして、「加速化プラン」に代表される全てのこども、子育て世帯への支援に引き続き力を入れてまいりますが、今後は、特に貧困、虐待、いじめ、不登校、障害児、医療的ケア児など、困難に直面するこどもたちを支える取り組みの質の強化を、より一層進めていきたいと思っています。

まずは今国会において、保育人材の確保等に関する体制整備および虐待を受けた児童等への対応の強化を図る「児童福祉法等の一部を改正する法律案」を提出しており、この法案成立に向けて全力を尽くしてまいります。

その上で、こどもたちが信頼できる大人に、安心して悩みを打ち明けられる環境などをプロジェクトチームにおいて検討しておりますが、これまでの様々な意見や検討をもとに、本年夏をめどに、こどもの周りにいる大人に伝えたいことなどを一定の成果として発出したいと考えております。

また、ひとり親家庭の多様化を踏まえ、適切なアセスメントにより、個別のニーズに寄り添う相談体制の充実、段階的な就業支援の実施を検討することなどにも取り組んでまいります。

加えて、ややもすると、困難に直面する青年期の若者たちに、これまでの支援が十分に届いていなかったり、若者たちが直面する困難とかみ合っていなかったりしているようにも感じており、こうした若者への支援も充実していく必要があると考えています。

今年度は、「加速化プラン」の本格実施の年、こども・子育て政策の拡充策を実行に移す年でもあります。その際には、若い世代の声に耳を傾けながら、さきほどの支援のほか、若者の将来設計を支援する取組につきましても、プレコンセプションケアの推進や「地域少子化対策重点推進交付金」の大幅な要件緩和などを通じて、着実に前に進めてまいります。

また、これまで以上に、こどもや若者から意見を聴く取組も重要と考えています。この2年間で「こども若者★いけんぷらす」では計49テーマについて意見を聴くほか、審議会では若者委員を積極登用し、自治体の取り組み支援も開始をいたしました。今後、国や自治体での意見反映の取組を更に加速化いたします。

一方、例えば令和6年の出生数は統計開始以来、過去最少となっており、急速な少子化に歯止めがかかっていないことに関し、こども家庭庁への厳しいご指摘があることも承知をしています。少子化対策それ自体は、その効果が現れるまでに一定の時間を要するものでありますが、いずれにしても、今後こども政策を実行していく中で、こども家庭庁が創設された意義・真価が更に問われると考えております。

この2年間は、こども政策の強化・拡充に向けた企画や実施のために注力をしてきましたけれども、3年目は、それらについて支援が必要な方々はもちろん、国民の皆様にしっかりと「届ける」「知ってもらう」ことも重要と考えております。そのための周知広報については、これまで以上にきめ細かく、丁寧な情報発信に力を入れてまいります。

3年目の開始となる本日、思いを新たに身を引き締めつつ、こども家庭庁をはじめ政府一丸となって、自治体や様々な民間団体の皆さんと連携し、また国民の皆さんと力を合わせて、「こどもまんなか社会」を目指し、新たなスタートを切りたいと思います。メディアの皆様にもぜひご協力のほどよろしくお願いいたします。以上です。

2. 質疑応答

(問)保育士の人件費10.7%引き上げの件で質問させていただきます。先日この制度について広く伝える記事を配信したところ、続々と「3月末を迎えましたけど、10.7%引き上げ分がもらえていません」という声が集まっていて、とある方に、保育士さんに話を聞くと、「3月末でもう保育士を辞めようと思うので、24年度分は支払ってくれないか」と園の経営者にお伝えしたところ「うちでは支払いません」と言われたらしく、それでも「話が違うのではないか」と食い下がったら、「5月に支払うので、それまで残っているのだったら支払います」と言われたということで、保育士にその引き上げ分が行き届いていないという現状があるのですけども、それについて、大臣のまず受け止めをお願いしてもよろしいでしょうか。

(答)はい。人事院勧告を踏まえた処遇改善の効果は、現場で働く保育士の賃金改善に確実に行き届くようにすることが必要であります。このため、各自治体を通じ、迅速かつ確実に一時金等により賃金の支払いに充てることや、次年度以降の給与表・給与規程等の改定に取り組んでいただくことを要請しているところでございます。
昨年度実施しました10.7%の処遇改善は、令和6年4月まで遡っているものでありますことから、令和6年度に保育園に勤務されており、3月末に退職する職員も対象になり得るものであります。先ほど申し上げたとおり、今回の処遇改善に伴う公定価格の増額分の全額を、職員の処遇改善に用いることとしておりますが、一方、各園での個々の職員の給与は、雇用形態、勤続年数、職責等をはじめ、様々な事情を踏まえ、各園または法人の給与規程等に基づく雇用契約によって決定されるものであり、必ずしも保育士全員の給与が一律に改定率通り上がるものではございません。
ご指摘のような個別事案への回答は差し控えさせていただきますが、いずれにしても、各事業者において、こうした様々な事情を踏まえて、適切に職員の処遇改善に配分されるものと考えております。いずれにしても、保育士等に対する処遇改善は大変重要なことであります。こども未来戦略に基づき、民間給与動向を踏まえた更なる処遇改善にも取り組んでまいりたいと思っております。
そしてまた、そうしたものも市町村からしっかりと指導、監査ということもあり得るというふうにも考えておりますので、しっかりと自治体にも通知等で要請をしていきたいというふうに思っております。

(問)ありがとうございます。先の事例に上げた保育士さんは正社員でありまして、勤続年数も十分ですので、いくらかの改善金はいただいてもいいのではないかという保育士さんなのですけど、やっぱり行き渡らないというところで、これから保育園の収支の見える化も始められますけれども、それでも数々の不正を見てきた保育士さんからすると、「どうせ見える化が始まったところで、制度の穴を抜けていくのではないか、期待感が持てない」というお話をいただいていまして、我々東京新聞に集まる声としては、「どうか、保育士さんの口座に直接振り込んでもらえないか」という声が、一人ではなくて多くの声をいただいておりまして、コロナ禍でも一人10万円給付というのができたように、到底無理な政策ではないのかなと思うのですが、在任中にそうした保育士さんの口座に直接行き渡るような制度について、ご検討いただくことはできないでしょうか。

(答)今年度から施行される「保育所等の経営情報の見える化」ですけれども、保育士の給与状況について施設から都道府県に報告はしていただきますが、報告がなされた個人ごとの給与額をそのまま公表するということは、個人情報保護の観点から許容されないこと、そして職種ごとに給与額の平均値として公表する場合であっても、小規模施設等では個人の給与額を推知できてしまうこと等から、各園の一人ひとりの職員の給与額までを施設や事業者単位で公表するものではございません。
今回の「見える化」では、施設・事業者単位での、経験年数・役職に応じた基本給・手当や賞与を含めた年収目安などのモデル給与や人件費比率、職員配置状況などの経営情報を公表・分析するもので、保育所等の給与状況や人件費比率等を明らかにすることによって、保育士等の求職者にとっても職場選択であるとか、キャリアの検討を支援する効果というものも期待しております。
その上で、保育の公定価格は、保育所等に在籍するこどもの数に応じて教育・保育に要する費用を支給するものであります。保育士の給与は、先ほどもお話しました、雇用形態、勤続年数、職責等に応じて、事業者において決められるものであり、保育士の口座に国が直接支払うことにつきましては、保育士の雇用形態や勤続年数、職責等に加えて、現場での勤務態度などの勤務評価が様々な中で、どのような方にどのような金額を支給するかという対象や金額に関する課題、また、当該事務を実施するに当たっての体制やコスト等の課題など、様々な論点があると考えておりまして、今の公定価格の枠組みとは別に、このような仕組みを設けるということは困難と考えております。
いずれにいたしましても、現場の皆さんに処遇改善の効果が行き渡ることは重要であると考えておりますので、しっかりと取り組んでまいりたいと思いますし、先ほども申し上げました通り、自治体に対して改めて事務連絡にて「処遇改善が現場の保育士にしっかりと届くように」という要請を行ってまいりたいと思っております。以上です。

(問)昨日、東京墨田区にある賛育会病院が国内で2例目の内密出産といわゆる「赤ちゃんポスト」の取り組みを発表されました。その会見の中でも、出自を知る権利を保障するかの観点から、国に法制化を求めるような発言がありました。さらに3月末に、熊本市と熊本にある慈恵病院、先行して取り組んでいる病院が出自を知る権利の検討会の報告書というのを取りまとめたのですけれども、そこでやはり国に法制化を求めるというような指摘がありました。
こうした流れを受けて、「新生児遺棄を防ぐ最後の砦だ」と慈恵病院も賛育会病院もおっしゃっているのですけれども、大臣はどう受け止めていらっしゃるのかというのをお尋ねします。

(答)ご指摘の熊本市と慈恵病院で設置した検討会の報告書や賛育会病院における、いわゆる「内密出産」・「赤ちゃんポスト」の導入については承知をしております。
お尋ねの妊婦が身元情報を医療機関の一部の者のみに明らかにして出産する、いわゆる「内密出産」は、母への母子保健・福祉による支援等が出産後途切れてしまうことや、希望する妊婦に対して、身元情報を明かすことの説得や、それによる支援等の説明、相談は、誰がどのような形で行うのか。子の出自情報を誰がどのような形で管理し、開示するのかなど、幅広い観点について、様々なご意見がある状況と認識しており、これは慎重に議論していくべき課題と考えております。
なお昨年12月、総理から「ドイツの例を挙げまして、外国における法体系がどうなっているのか、出自を知る権利がどのように位置づけられているのかなど、よく研究して、そのような観点から、政府部内で検討させたい」旨のご答弁があったことを受けまして、今年度に海外の法制度に係る事例研究の実施を予定しているところであります。
現在、こども家庭庁では、予期せぬ妊娠や子育てに悩んでいる方々を支援するために、都道府県や市町村における相談窓口の整備や、困難な事情を抱える妊産婦に対する一時的な住まいや食事の提供を含めた、妊娠時から出産後までの包括的な支援の推進、特別養子縁組の制度の周知といった取り組みを行っております。
予期せぬ妊娠や子育てに悩んでいる方々におかれては、まずは、早期に関係機関に相談をいただきたいと考えております。性と健康の相談センター、またこども家庭センター等の相談窓口、または民間の妊娠SOSサービス等に、迷わずに、まずご相談をいただきたいというふうに考えております。

(以上)