加藤大臣記者会見(令和6年3月29日)
加藤大臣記者会見要旨
(令和6年3月29日(金)9時02分から9時14分まで 於:中央合同庁舎8号館1階S103会見室)
1.発言要旨
冒頭、私からは3件ご報告がございます。
まず1件目、こども家庭庁発足1年の所感についてでございます。
来週4月1日に、こども家庭庁の発足から1年を迎えます。本当に皆様から支えられての1年でございました。まずは心からの感謝を申し上げます。ありがとうございます。
この1年、こども政策の司令塔として様々な取組を進めてまいりました。昨年末には、こども基本法に基づく我が国初の「こども大綱」、「こども未来戦略」、「幼児期までのこどもの育ちに係る基本的なビジョン」、「こどもの居場所づくりに関する指針」といった新たな政府方針を閣議決定しました。
「こども大綱」では、こども・若者の視点に立って、社会が保護すべきところは保護しつつ、こども・若者を「権利の主体」として、その意見表明と自己決定を年齢や発達段階に応じて尊重し、こども・若者の最善の利益を第一に考えること、また、子育て当事者のニーズに応じて、社会全体で柔軟に支えていくことなど、こども政策を進めていくための基本的な方針をお示ししました。
これに基づき、具体的な施策を計画的に進めていくため、今後、国レベルでは、骨太の方針に向けて、具体的な取組をパッケージにした「こどもまんなか実行計画」を策定してまいります。また、地方自治体における「こども計画」の策定支援に取り組んでまいります。
次に、「こども未来戦略」では、約3.6兆円に及ぶ前例のない規模で政策強化を図る「加速化プラン」をお示ししました。「加速化プラン」は、児童手当の抜本的拡充、妊娠時・出産時に計10万円相当が支給される出産・子育て応援交付金の制度化、76年ぶりとなる保育士の職員配置基準の改善、「こども誰でも通園制度」の創設、児童扶養手当の拡充、育児休業給付の一定期間の手取り10割相当への引上げなど、これまで実現できなかった施策を盛り込んでおります。今国会に提出した「子ども・子育て支援法等の一部改正法案」、この国会審議を通じて、引き続き丁寧に説明をするとともに、スピード感を持って実行に移してまいります。
さらに、いわゆる「こども性暴力防止法案」を今国会に提出しました。社会全体でこどもたちを性暴力から守る意識を高めていくとの観点からも、重要な法案です。こどもの性被害防止のための総合的な取組も進めつつ、本法律案の成立に向けて最大限努力をしてまいります。
このほか、多様な支援ニーズを有するこどもや家庭に対する支援策として、市町村の「こども家庭センター」創設などを始めとした、本年4月からの改正児童福祉法の円滑な施行に取り組むとともに、一時保護所の環境改善など、児童虐待への対応の強化、社会的養護の質の向上や社会的養護経験者等の自立支援、ヤングケアラー等に対する支援、ひとり親家庭の自立に向けた切れ目のない支援や、こどもの貧困対策に取り組んでまいります。
加えて、本年4月施行の障害福祉サービス等に係る報酬改定による家族支援やインクルージョン推進の取組への充実、関係省庁と連携したいじめ防止や不登校対策、「こどもの自殺対策緊急強化プラン」に基づくこどもの自殺対策等に取り組んでまいります。
こども家庭庁が、何よりも大切にするのは、こども・若者の意見でございます。「こども若者★いけんぷらす」では、この1年で27のテーマについて、延べ2,600人のこども・若者の意見を聴き、政策に反映をしてまいりました。
この中には、こどもや若者から発案されたテーマも含まれており、このテーマに寄せられた意見については、こども・若者の皆さんからこども家庭審議会の部会で発表をしていただきました。
また、こどもや若者に身近な地方自治体における取組を促進するため、昨年秋には、私自らが、地方自治体の首長の皆様や地方議会議長の皆様宛てに書簡を発出いたしました。引き続き、国の取組を拡充するとともに、全国の地方自治体にも浸透していくように取り組んでまいります。
そして、これらの施策の充実とあわせて、こども・子育てに優しい社会づくりに向けた、「こどもまんなかアクション」を進めてまいりました。3月末現在、33の道府県、212の市区町村、さらに、870を超える団体・個人・企業の皆さんに「こどもまんなか応援サポーター」に御参加をいただいており、「こどもまんなか」の裾野が広がってきていることを感じてございます。
他方で、こども家庭庁につきまして十分ご存じない方もまだまだいらっしゃるであろうと思いますし、こども家庭庁発足後のこども政策の充実を一層多くの方々にしっかりと届けていくことがとても重要であると考えております。こども家庭庁があってよかったと、こども・若者や子育て当事者の方を始め、一人でも多くの皆様に実感をしていただけるよう、引き続き、精一杯取り組んでまいります。
冒頭発言の2件目になります。令和4年改正児童福祉法の施行についてでございます。
来週月曜日、4月1日から令和4年改正児童福祉法が施行されますので、ご紹介をさせていただきます。
本改正法におきましては、こどもがいて支援を必要とする家庭やその養育環境に対しての支援を強化し、こどもの権利の擁護が図られることを前提とした児童福祉施策を推進することとしております。
具体的には、「こども家庭センター」の設置や「子育て世帯訪問支援事業」、「妊産婦等生活援助事業」等の子育てに困難を抱える家庭や妊産婦等への新たな支援事業の創設を行います。
また、こどもの意見聴取等の仕組みの整備や一時保護施設の環境改善、社会的養護経験者に対する自立支援の強化、こども家庭福祉の認定資格である「こども家庭ソーシャルワーカー」の創設、児童発達支援センターの役割・機能の強化等による地域の障害児支援体制の強化を行います。さらに、児童生徒に性暴力を行って保育士登録を取り消された者のデータベースにつきましても運用を開始いたします。
このように、今回の改正法の施行には、多岐にわたる内容が盛り込まれております。4月以降、各自治体において改正法に基づく積極的な取組が行われるよう、こども家庭庁としましても、各自治体を支援していくこととしております。
これを通じて、改正法の着実な施行を行うことにより、児童虐待への対応の強化、社会的養護の質の向上、社会的養護経験者等の自立支援、地域の障害児支援体制の強化、こどもをわいせつ行為から守る環境整備等を一層推進してまいります。
冒頭の3件目でございます。孤独・孤立の実態把握に関する全国調査についてでございます。
本日、孤独・孤立の実態把握に関する令和5年の全国調査結果を公表いたしました。
令和5年12月1日を調査期日として、16歳以上の個人2万人を対象に、令和3年以降3回目となる調査を行ったところでございます。結果につきましては、若干の数値の変動はございますが、全体としてこれまで2回実施してきた調査結果と大きく変わらない傾向を示してございます。例えば孤独感に関しては、程度の差こそあれ、約8割の人に孤独感があると考えられ、年齢別では、若い世代や中高年層でも孤独感が高い人が一定程度いることがうかがえる結果となりました。
今回は3回目の調査となりますが、孤独・孤立は人生のあらゆる場面で誰にでも起こり得るものであること、誰もが孤独・孤立の予備軍であることを改めて実感をしてございます。
こうした結果につきましては、有識者からの御意見もいただきながら、今後さらに分析を進めてまいるとともに、来月から施行される孤独・孤立対策推進法に基づく新たな孤独・孤立対策の重点計画の策定に向けた検討に活用をしてまいりたいと考えております。
調査結果の詳細につきましては、事務方へお尋ねください。
冒頭、私からは以上になります。
2.質疑応答
(問)子ども・子育て支援法案の国会審議入りが近く迫っています。法案に盛り込まれた支援金制度をめぐっては、野党側からわかりづらいという指摘が出ています。1人あたりの負担額であったり、制度の仕組みについてどのように理解を求めていく考えなのか、このタイミングで改めてお聞かせください。
(答)少子化は、我が国にとって待ったなしの課題でございます。2030年代に入るまでが少子化傾向を反転できるラストチャンス、これを繰り返し申し上げてまいりましたが、こうした状況を踏まえて、昨年末に閣議決定した「こども未来戦略」を実行するため、先月、「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案」を国会に提出しました。
この間、予算委員会におきましても、児童手当などの給付拡充や「加速化プラン」を支える財源の一つである「支援金制度」などについて様々ご指摘をいただきました。
今後の法案審議におきましても、ライフステージを通じた経済的支援の強化、全てのこども・子育て世帯への支援拡充、共働き・共育ての推進を柱とする給付の拡充とそれを支える支援金制度の意義や内容について、政府案の考え方をしっかりとお伝えをしていきたいと考えております。
こうした給付と拠出の両面を通じて、将来の我が国、地域社会を支えるこども・子育て世帯を全世代・全経済主体が応援していくのだというこの考え方を多くの皆様に御理解をいただけるように、法案の成立に向けてしっかりと努力をしてまいりたいと考えております。
(問)幼保一元化についてお伺いいたします。過去には幼保一元化が検討されてきましたが、加藤大臣の現状の認識をまず教えてください。
また、こども家庭庁発足時には幼稚園の所管を移すかどうかも議論になりました。文部科学省に残ったことで、連携が取りづらいことなどの指摘もありますが、全てのこどもの育ちを保障するために今後どのように取り組む方針かお願いいたします。
(答)こどもにとって一番大切なことは、施設類型を問わず、教育・保育の質の確保が図られることだと考えております。また、教育など文部科学省が担う「学び」に係る行政と、児童福祉などこども家庭庁が担う「育ち」に係る行政とは、それぞれ近接した側面がありますが、それぞれの目的を追求する中で、その専門性をしっかり高めつつ、相互に調整をして、密接に連携することが政府全体としての施策の充実、質の向上につながるものと考えております。
このため、幼稚園につきましては、引き続き文部科学省の所管でありますが、こども家庭庁と密接に連携して施策を推進することとしており、学校教育法及び児童福祉法においても両省庁が相互に協議を行うことを想定しております。また、幼稚園における教育内容と保育所における保育内容を共同で策定することにより、どの施設類型であっても共通の教育・保育を制度上担保し、教育・保育の質の確保を図ることとしています。
また、文部科学省との連携については、例えば幼児期までの育ちに係る基本的なビジョンを両省庁で検討の上、閣議決定をしたり、また、放課後児童対策パッケージを、これも両省庁で取りまとめるなどしておりまして、必要な場合には両省庁でしっかりと連携して、これまでも、またこれからも取り組んでいるところでございます。
引き続き文部科学省と連携しつつ、全てのこどもの健やかな成長を支援してまいります。
(以上)