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第12回日中韓少子高齢化セミナー(概要)

令和6(2024)年10月31日・11月1日、日本・東京において、第12回日中韓少子高齢化セミナー(The 12th Seminar on Policy on Declining and Ageing Population)を開催しました。
第12回日中韓少子高齢化セミナーの集合写真

基調講演

中村英正こども家庭庁長官官房長による開会挨拶及びヤン・リャン日中韓三国協力事務局事務次長による挨拶の後、3か国の代表による基調講演が行われました。

第12回日中韓少子高齢化セミナーの様子

髙橋宏治こども家庭庁長官官房審議官(総合政策等担当)は、日本の少子化対策・高齢化の現状と対策について講演しました。まず、日本は結婚してからこどもを産むカップルが非常に多いため、未婚化・晩婚化が少子化の大きな要因となっている状況に関する説明や、婚姻件数が低下している背景には、「適当な相手にめぐり合わない」「結婚資金が足りない」などの理由で、結婚したくても、その希望がかなえられていない状況についてなどの説明がありました。そのような状況への対応策として、昨年末とりまとめた「こども未来戦略」としてこども・子育て政策を抜本的に強化することや、「地域少子化対策重点推進交付金」による自治体が行う出会いの機会・場の提供等の取組の支援、「若い世代の描くライフデザインや出会いを考えるワーキンググループ」の開催等について紹介しました。さらに、増加が予想される認知症高齢者を支えるため、団塊の世代が住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるよう、医療・介護・予防・生活支援を一体化した「地域包括ケアシステム」の構築について説明がありました。

第12回日中韓少子高齢化セミナーの様子

中国のジョウ・ウェイ中国人口開発研究センター副所長からは、中国での出生人口の大幅な減少や総人口の20%を上回る急速な高齢化などの問題を紹介した上で、「乳幼児をして保育あり」「老をして介護あり」「病をして診療あり」という理念に基づき、政府による支援施策やこどもと高齢者にフレンドリーな地域コミュニティの構築などを行った成果について発表がありました。

第12回日中韓少子高齢化セミナーの様子

韓国のキム・サンヒ韓国保健福祉部人口政策調整局長からは、韓国の合計特殊出生率がOECD加盟国で最下位であることや、結婚・出産に対する価値観が変化している現状について紹介があった上で、今年度新たに発表された、2030年までに合計特殊出生率1.0を目指す少子化傾向反転対策ついての発表がありました。

第12回日中韓少子高齢化セミナーの様子

セッション1「未婚化と少子化対策」

日本は、天野馨南子ニッセイ基礎研究所人口動態シニアリサーチャーから、少子化の主な要因は初婚同士の結婚が減っていることであると説明があった上で、「共稼ぎ、共家事、共育児」「経済的に一生支えあえる2人の結婚」が実現できるための「雇用改革(経営者のマインドリセット)」が未婚化解消に対して統計的に最も効果があると発表がありました。

第12回日中韓少子高齢化セミナーの様子

中国は、リュウ・ドンメイ中国人口開発研究センター人口研究部研究員から、中国の保育サービスの現状(法整備・経費投入の多元化・乳幼児保育士の人材育成制度・保育サービスの全国的な統計調査等)に関する説明がありました。

第12回日中韓少子高齢化セミナーの様子

韓国は、イ・ガンホKAIST未来戦略大学院教授から、韓国の出生率・婚姻率の低下に関する現状及び原因(政策の失敗・国民の結婚と出産に関する意識の変化等)を説明した上で、人口戦略企画部の早期設置による人口政策の体系の確立やAI技術の活用による生産年齢人口減少へ対応の必要性などについて言及がありました。

第12回日中韓少子高齢化セミナーの様子

セッション2「地域包括ケア(医療・介護の連携と高齢者の健康作り)」

日本は、江口満厚生労働省老健局総務課長より、日本の高齢化の進展と医療と介護の複合ニーズを持つ高齢者の増加を背景に、重度要介護者になっても自分らしい暮らしが出来るよう、医療・住まい・生活支援等が包括的に確保される体制である地域包括ケアシステムの構築や住民主体の通いの場の推進などについて発表がありました。
中国は、フ・ポンフェイ中国人口開発研究センターデータ情報ネットワーク部門シニアエンジニアより、中国における人口の高齢化のデータに基づき、「身体機能障害者」数の現状と今後の見込みについて説明がありました。また、国によるデジタル技術を運用したサービスの提供や全国への展開が見込まれている介護保険計画についても発表がありました。
 韓国は、ユ・エジョン韓国医療保険総合研究所 社会福祉学准研究員・博士より、今後、療養型病院で長期療養が必要となるハイリスク群の支援を目的に医療とケアの連携を強化する「医療・ケア統合支援事業」に関する説明がありました。更に、自治体の責任性強化や在宅医療・ケアサービスの拡充、関連インフラの再構築など、今後の事業推進にあたる課題についても言及がありました。

【意見交換の様子】
第12回日中韓少子高齢化セミナーの様子

第12回日中韓少子高齢化セミナーの様子