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第11回日中韓少子高齢化セミナー(概要、少子化関係のみ)

令和5(2023)年7月19日・20日、韓国ソウルにおいて、第11回日中韓少子高齢化セミナー(The 11th Population Policy Forum 2023)が開催され、こども家庭庁の職員が参加した。概要は以下のとおり(敬称略、先方未確認)。

□基調講演:

イ・ソニョン(韓国保健福祉部人口児童政策官職務代理)、陈国良(中国国家衛生健康委員会副局長)、浅野敦行(こども家庭庁長官官房審議官(総合政策等担当))

□Evaluation of Low Fertility Rate Policy, Effectiveness of Feedback System, and Control Tower

「こども家庭庁とこども関連施策」佐藤勇輔(こども家庭庁長官官房参事官(総合政策担当))

こども家庭庁は、日本のこども政策に関する司令塔機能を担う新しい省庁である。2030年代に入るまでが少子化傾向を反転させるラストチャンスであるという認識。日本の少子化の原因としては、未婚化・晩婚化の影響が大きいといわれている。少子化対策として、「加速化プラン」のもと、若い世代の所得を増やす・社会全体の構造や意識を変える・全てのこども・子育て世帯をライフステージに応じて切れ目なく支援するという3つの基本理念を踏まえて、具体的な取組を行っている。また、年内の策定に向けて「こども大綱」の検討も進めている。


「中国の少子化状況及びそれに影響を及ぼす要因」楊勝慧(中国人口と発展研究センター)

中国政府は、出生率を上げること目標にしており、出産政策として、①時間に関する政策(産休、男性育休等)、②サービスに関する政策(3歳以下のこどもへの託児サービス等)、③手当に関する政策(出産保険(出産と関連する出費への保険適用)、所得税の減免(小学校、幼稚園に通うこどもがいる家庭には所得税の減免が受けられる)等)をとっている。しかし、このような政策に関して、30%以上が、「政府が政策を変更しても子供を産みたくない」旨回答したデータがある。
中国における出生率の推移(減少傾向)は、日本の出生率の推移と非常に似ている(2021年で1.15)。都市と農村部を比べると、都市部の方が出産意向のこどもの人数が農村部と比べて少ない。また、高所得者より低所得者の出生率が低い。
出生率低下の直接的な要因は、晩婚化と人口構成の変化(出産適齢期の人口数が減少) である。間接的な要因は、女性の価値観(結婚観・出産観) の変化と出産に関する現実的な負担である。


「韓国の人口政策ガバナンス:挑戦と発展方向」イ・サンリム(韓国保健社会研究院)

韓国では、2001年頃から、急速な少子化が進んだといわれている。2016年からは出生率が1.0を割り込み、2022年は0.78となった。
韓国は、世界で最も長い育休期間を法定しており、21時まで無料で子を預けられる養育インフラが整っているが、少子化の背景には、雇用問題、居住費問題、学校外教育費の問題といった構造的要因があり、改善しているとは言えない。 この構造的問題を解決しないと少子化は解決しないと考えられている。
また、人口減少と高齢化の度合いには強い相関があるとともに、地域間の人口不均衡も顕著である。
韓国では、高齢社会基本法を制定し、人口政策の方向性と推進の仕組みを規定するとともに少子高齢社会基本計画で中長期目標と方向を設定している(現在第4次計画)。
大統領や関係部署や民間の専門家が人口政策の主要事項を審議する少子高齢社会委員会も設置
されている。
人口政策を政策評価すべきだと声もあるが、種々の政策が同時に取られている上、出生率は社会状況や文化的な認識の影響を受けるため、一つの政策を取り上げて評価するのは難しい。
人口政策はいつ成果があがるか見積もるのが難しいうえ、効果が出るまでに時間がかかる。
政策評価をする場合には、定量評価につき中間指標を作る等の分析方法の高度化、質的な側面(利用者満足度等)で評価をするなどの手法をとるべきである。
また、少子化については、政策だけでなく、民間の動きも影響するため、少子化については、社会一丸となって取り組むべきである。


□MOCの改訂手続

5年に1度改訂しており、改正が行われた。(2018年調印の更新)

□次回(2024年)は、日本開催予定。日時や議題等の詳細は、今後調整予定。