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未就園児等の把握、支援のためのアウトリーチの在り方に関する調査研究 検討委員会(第3回)

概要

  • 開催日時:令和5年1月27日(金)14時00分から16時00分まで
  • 開催形式:オンライン・対面開催

議事

  1. 当事者ヒアリング結果について
  2. 報告書の目次および今後の取組の考え方・方向性について

配付資料

議事要旨

1. 開会

2. 議事

(1)当事者ヒアリング結果について
〇 事務局より、前回委員会での意見やヒアリング結果概要について説明。委員からの主な意見は以下の通り。

  • 「就労していないのに保育サービスを受けていいのか」というコメントがあった。外国人の保護者でも、「就労したいがこどもがいる、こどもを預けないと就労できないが、就労していないのに預けて良いのか」という不安を抱えている母親が多い。就労していなくても保育サービスを誰でも受けられる仕組みに変えていく必要があるのではないか。
  • 心身に困難を抱える保護者は、国籍に関係なく、孤立に陥る可能性がある。自分から能動的にサービスに繋がれない保護者・家庭についても、訪問によって繋がることが出来ると良い。一方で、訪問に対して抵抗を感じる保護者については、訪問以外のサービスが提供できるようになると良い。孤立している家庭の実態把握が不十分な面も感じた。住所変更があっても状況を継続して把握できる仕組みが整えられると良いのではないか。
  • 就園の際の送迎に対するサービスの不足は、田舎に行くともっと割合が増えると思われる。また、地域子育て支援拠点からお手紙を貰えてよかったという声があったが、電話はストレスを感じる、手紙の方が良いという声は確かにある。また、今回はヒアリングの対象に祖父母と別居していて孤立している世帯が選ばれているが、祖父母や家族がいても孤立している場合もある。他の家族がいることで、ホームスタートなどの訪問型のサービスに対して利用そのものに抵抗がある場合や、利用に際して注意・配慮が必要なケースもある。訪問型サービスの利用に関する注意点などの意見もあれば含められると良い。
  • 行政の窓口に対するハードルを下げる必要があると感じた。オンライン申請や匿名の電話への対応も可能にしている自治体もある。また、委託業者が訪問を行い、行政への申請の支援をしている自治体もある。自治体ごとに差があるのではないか。また、オンラインの活用に対する希望が強調されていたが、対面して初めて気づくこともあるので、様々な手段を柔軟に活用できると良い。
  • 支援者の側からは見えない、保護者の複雑な気持ちや切羽詰まっている気持ちがあるということを理解する必要があるだろう。就園の効果やメリットについて、こども側の視点でのメリットを聞けているのは良かった。支援者が支援する際もこどもの視点を意識する必要がある。また、今回はたまたま3名とも心身の疾患があったが、バイオ・サイコ・ソーシャルの3つの視点を持って支援することが重要だと改めて感じた。
  • 地方では車を持っていない人が、行政機関に行くこと自体が大変であるため、行政機関に足を運ばなくても手続きができるようになると良い。今回のヒアリング対象者は、困っていることを言語化出来て支援を受けられる人たちであったが、自分から困っていることを発信できない人にも支援を届ける必要がある。市町村の担当者や支援者に支援の情報を聞いても、欲しい情報を教えてもらえなかったり、聞く相手によって持っている情報が違ったりすることがある。
    これは相談しても必要な支援に繋がらない原因にもなっているため、平等に支援を受けられるようになるとよい。資料の情報量が多く、必要な情報を自分で探さないと見つけられないという声もあったが、分かりやすい資料があると、忙しい保護者やメンタルヘルスに課題を抱える保護者だけでなく、幅広く皆にとっても助けになるのではないか。
  • アクセシビリティの問題については、「働いていないのに就園して良いのか」という言葉に代表されるような、メニューはあるが、様々な心理的障壁があり、それが届かないという状況も起きていると認識した。
  • ヒアリング対象の方は、偶然 3 名とも心身に疾患を抱えていた。支援を届けたい対象に支援が届いているということではないか。大分でも、7 歳の女の子を母親が殺害する事件があり、悩みながら子育てをしている人が多くいることは他人事ではないと感じている。どこかに繋がりを持てることの重要性を改めて感じている。

(2)報告書の目次および今後の取組の考え方・方向性について
〇 事務局より報告書の目次および今後の取組の考え方・方向性について説明。委員からの主な意見は以下の通り。

【目次案について】

  • 異論なし。

【① 基本的な考え方について】

  • 「保護者以外の大人と関わる機会を創出していくことが重要」とあるが、大人と関わる機会に加えて社会資源も記載してはどうか。
  • 「幸福な生活を送る」とあるが、どんな生活を指しているのか。また、「こどもの良質な成育環境」についても何を指すのか。最近、小中学生で情緒不安定なこどもがおり、情緒不安定がゆえに問題行動を起こしている。その背景について皆で話し合う中で、乳幼児期の愛着形成が幸福な生活を送る上で重要ではないかと感じている。貧困でない家庭であったとしても愛着形成が上手くいっていないケースもある。親・こどもの愛着形成を促すため、親の養育力を適切に引き出すようなアウトリーチが必要ではないかと感じた。
  • 「お母さんが元気ならこどもも元気」という声が当事者ヒアリングでもあったが、こどもだけでなく、家族全体の幸福や元気が大事なのではないかと感じた。
  • 末尾の「※」に記載の通り、未就園児であること自体が批判につながる表現や記載にならないよう留意いただきたい。未就園の背景は様々であり、保育所に入りたくても、言葉の壁などによって就園できない事例もある。「無園児」といった言葉が一人歩きすることや、未就園児=虐待家庭等のイメージが広がることで、更なる孤立を生まないか懸念する。
  • 未就園児等のこどもや家庭に対しては、丁寧に支援を行う必要がある。集団の中で育つ重要性等については、養育者に圧力なく伝わるような情報発信を地域でも行っていきたい。

【② 孤立や不適切養育の予防について】

  • 外国ルーツのこどもや家庭への支援について、行政窓口に通訳を配置したり、多言語版の書類を用意しているところはあるが、通訳が必ずしも常にいるわけではない。そういった場合に備えて、やさしい日本語での対応を研修に含めるとよいのではないか。外国人ルーツの方でもやさしい日本語であれば理解できることは多い。
  • 「地域の居場所や子育てサービスを充実させる」点は重要である。民間団体や当事者同士の繋がりの活動が重要と考えられるが、そのような活動を継続的・持続的に運営できるような支援や立ち上げ支援が必要ではないか。
  • 継続性という観点では、地域の資源やサービスについて「一回来たら二度目は来ない」とならないよう、来て得るものがあることが重要ではないか。特に親にとっては、こどもとの関わり方が学べるような居場所・子育てサービスがあると良いのではないか。高齢者や障害者支援ではこれまで当事者ができないことを代わりに行う支援が多かったと考えるが、養育に関しては代わりにやってあげることで親が力を失ってしまう恐れがあるため、関わり方が身に付くように支援するような施策が必要なのではないかと感じた。
  • 関わり方を教えるというのは大変良いと思う一方で、マニュアル化された内容を「教える」やり方だと負担に感じる保護者もいるように感じる。それぞれの親子に合った関わり方を「一緒に考える」ような柔軟なサービスがあると良いのではないか。
  • 制度があっても利用できない環境もあるのではないか。自分で調べないとアクセスできなかったり、支援を受けたくても窓口で歓迎されていないと感じる対応を受けることもあると聞く。平等にサービスにアクセスできるような環境が整えられるとよい。
  • こどもに発達の課題がある家庭について、家庭の中でも発達のことを他の家族や親戚に伝えられないという場合が多くある。他の家族に代わりに伝えてくれるような人材が必要だと考える。
  • 予防の観点が②で取り上げられているが、把握・支援も含めてさまざまな一連の取組を行い、振り返って対策を立てることがその後の予防策の改善にも繋がる。全国の支援者同士で取組について情報交換できるような仕組みや場を構築し、皆で関わりを高めることも、大きな意味で予防に繋がると考える。
  • 未就園児を連れて外出しにくいという意見を耳にする。地域の人に「今日は園に行っていないの?」などと言われると、地域に出にくくなってしまう。
  • 当事者ヒアリング結果で、社会資源等の情報提供のあり方について意見があったが、事後フォローが重要だと考える。丁寧なフォローをする体制を構築することで、養育者も相談しやすくなるのではないか。具体的には、「相談があったら来てください」というメッセージを発信するだけでなく、身近な場所で専門的な相談が受けられる体制が必要ではないか。長期間にわたってこどもや家庭と繋がり関わり続ける人が増えると良いが、行政の担当者は数年で異動があり継続的支援は難しい。利用者支援事業、地域子育て支援拠点、ファミリーサポート、病児保育等が活用できるのではないか。また、その実現に向けては人材育成が必要である。

【③ 支援対象児童の把握について】

  • 伴走型の相談支援は必要であるが、伴走は難しい業務でもある。当事者に近づきすぎることが却ってトラブルの原因になる場合もあり、必要な対応は様々である。人材育成において考慮が必要な点だと考える。また、妊娠期からフォローして家庭を把握することが必要ではないか。
  • 今後行政の中でも、データ連携やデジタル化が進んでくる中で、自治体間のデータ共有・連携についても今後進む取組があるのではないかという期待感はある。伴走型支援についても当事者アンケートのデータを蓄積する中で、新たな課題を見つけたり、地域の実情の把握や分析に繋げていくことも必要なのではないか。
  • 乳幼児健診を受診しなくなったという話が当事者ヒアリングでも挙げられていたが、発達障害のこどもを持つケースで同様の話を多く聞く。そのような家庭でも民間の病院や支援センターに通っている場合が多いため、関係機関間で情報共有ができるようになると良い。
  • 伴走型支援については、支援者が生命保険の担当者のように関わりを継続的に持つイメージを持っている。普段からアンケートを継続して取るなどして状況を確認していると、当事者も困ったことを言いやすい。また、発達障害のあるこどもの親の会の仲間から「『行政とけんかして絶対に相談しない』と本人は言っているが、どうにか助けてほしい」と相談が入ったこともあった。当事者グループのようなコミュニティから繋がるような仕組みもあると良い。
  • 外国ルーツの保護者は、妊娠期の体重管理などで外国との文化の違いを感じる経験や、場合によっては差別のようなことを言われるなど、不安の中で妊娠・出産・子育てを経験する。妊娠期から行政と繋がりを持ち、医療機関以外で相談できる場所が必要ではないか。また、転居時に市役所に相談すると思われるが、その際に市内の社会資源をうまく案内できるような仕組みも必要である。
  • 支援においては情報共有が必要である一方で、共有された情報を当事者に話してしまうと「なぜこの人が知っているのか」と更に不信感を持たれることもある。情報の共有は必要だが、その上でどうアプローチするのかについても同時に考える必要がある。
  • 基本的な考え方の中で、未就園児であることだけを問題視しない旨について記載されているが、未就園であることだけを以て関係機関と情報共有するのも必ずしも適切ではないように思う。虐待通告は必要だが、未就園については、それがスティグマになると孤立が更に進んでしまう恐れもある。リスクアセスメントのツールや、どういった視点でこどもを見ていくのかの考え方が、虐待のアセスメントとは別のものとして地域で必要になると考える。また、各関係者が自分たちで対応できることもあるため、全て情報共有するということではなく、アセスメントの中で、自分たちで対応できること、情報共有すべきことの整理が必要なのではないか。
  • 乳幼児健診未受診だけでなく、未就園児の把握も重要である。その際のフォローには転出入等のデータのアップデートも重要になってくる。時間が経つと状況が変わっていることがよくある。

【④ 支援が必要な家庭やこどもとの関係性の構築、⑤支援の実施、⑥再度の孤立の防止等について】

  • 誰にでも情報共有した方が良いわけではないという意見に同意するが、特に注意やフォローが必要な家庭については意識して情報共有を行う必要がある。外国ルーツの保護者は転居が発生する機会も多い。情報共有によって、転居先でも途切れないような支援を行う必要がある。また、外国ルーツの家庭で保護者がメンタルヘルスの課題を抱える場合もあるが、言葉の壁もあってカウンセリングや支援に繋がらないケースもあるため、言語面での支援が必要である。また、地方に行くと移動手段がないこともあるので、その点についても対策が必要である。
  • 地域の人に相談したくないという人もいる。P.9 に記載されているように地域の人以外の相談相手がいると良いというケースはかなりあるのではないか。今後の取組の考え方・方向性で、「行政等への相談に抵抗感のある家庭に対する関係性構築」とあるように、全てを行政の施策で解決するのは難しい。行政・地域の中で完結しなくてはいけないというものではなく、助けてくれる人のところに繋がってほしいというメッセージを発せられると良いのではないか。今後事例を集める中で、行政・地域以外の支援に繋がって助かったという事例も紹介できると良い。
  • 行政の制度やサービスに繋がった後で、その人がどうなったのかという情報が少ない。サービスメニューに繋がった後でどのように助けられ、生活が変わったのかがイメージできるような情報を発信していくことは、利用の後押しの観点から重要である。
  • 夜間対応、24 時間対応についても触れられると良い。日中忙しくしている家庭にとって、落ち着いた夜に相談できるところがあると良い。有人対応にこだわらず、チャットボットなどでも構わないので、夜間に相談できるようなところがあると孤立の解消の一助になるのではないか。情報を調べた後で「次の日に必ず返信するので、なにかあったらここにメッセージを送ってください」と、支援に繋がるような動線もあると良いのではないか。
  • ヤングケアラーの支援でも、オンラインサロンを 24 時間対応しているところがある。困った時に書き込むと、数時間後にメッセージが返ってくるような場がある。
  • 「信頼を得ながら支援を行える人材の育成」「複合的な課題に対応できる人材の育成」等とあるが、どのような人材が必要か。資格がなくても支援ができている人もいる。資格のあり方について前回も意見が挙がったが、なかなか難しい検討事項であると考える。
  • 子育て支援は、一度当事者への関わり方を間違うと拒否されるのが常である。社会資源も失敗を繰り返し、学ぶことで力がつく側面がある。しかし行政の立場としては、やりたい意欲のある団体に任せられるかというとなかなか手放しでは任せることができず、難しいと感じる。
  • 外国ルーツのこどもへの理解促進について、振り返ると 20 年ほど前に自分のこどもが園に通っていた時には外国ルーツのこどもや精神障害を持つこどもも同じクラスにいた。今でも対応ができている保育所はあるが、そこまでの力が伴わない園も増えているという状況なのかもしれない。力のある園が増えてほしい。事例に出した保育所は公立の保育所で、特別な取組をしているわけではない。当時は職員も定着しており、長年勤めるなかで対応のノウハウが培われたのであろう。しかし最近は、待機児童対策で若手の保育士が増えているため、ノウハウの不足によりできないことが増えているのかもしれない。
  • 外国ルーツ等のこどもの受け入れについては、いろいろな取組をしている園も増えているが、園による差、自治体による差があるのが実情である。モデルになるような取組が分かるような情報提供があると、どうしたら良いか分からない自治体にとって助けになる。具体的な情報が共有される、プラットフォームのような仕組みがあると良いのではないか。
  • 外国ルーツや障害のある子への理解を促進するためには、保育士等を養成する大学等の協力も得る必要があるのではないか。
  • 保護者にメンタルヘルスの課題があり送迎に困難を抱えるケースについて、ファミリーサポートセンターや障害福祉サービスとの連携にも触れられているが、料金や書類の多さ、手続きの煩雑さからハードルを感じる家庭も多い。送迎に困難を感じて支援を必要としていても、手続きのために家から遠方の窓口に行く必要があるなど、サービスの周知だけでは解決できないこともある。
  • 行政の予算編成においては、利用者が少ない事業の予算が削られやすい。また、少子化対策の観点から「この事業でこどもが増えるのか」と問われることもある。今回の調査で、支援の必要性がクローズアップされていると想定するが、今後、取組によりどのような成果があったのかをフォローアップし、可能であればエビデンスを示していくことで、新たな取組に繋がっていく可能性もある。国と地方が一体となって取組を進めていく必要があるだろう。今後、未就園の家庭も含めて社会の一員として支えあっていく必要があるが、支援の必要性があるがニーズの絶対量が少ない部分であるため、自治体の財政状況が厳しい中でも取組が継続できるような仕組みを考えていく必要がある。
  • 前回の検討会で多くの委員が発言していたが、当事者の信頼を得ながら支援を行える人材の育成が必要になる。コーディネート力等も必要になる。国も、人材育成を行うための体制整備に力を入れていただきたい。

〇 事務局より、欠席の小川委員からの意見について、紹介(小川委員の意見についても上記議事要旨の中に記載している。)。

3. 今後の予定、その他

〇 事務局より今後の予定等について、説明。

4. 閉会