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こども政策決定過程におけるこどもの意見反映プロセスの在り方に関する検討委員会(第2回)

概要

  • 開催日時:令和4年9月16日(金)14時00分から16時30分まで
  • 開催形式:オンライン・対面開催

議事

  1. 前回の検討委員会での指摘事項について
  2. 諸外国調査について
  3. モデル事業について
  4. 本調査研究の到達目標について
  5. 自由討議

配付資料

議事要旨

1. 小倉こども政策担当大臣挨拶

  • こども家庭庁はこども政策の司令塔として、常にこどもの視点に立ってこどもの最善の利益を第一に考え、こどもに関する取組・施策を我が国社会の真ん中に据える「こどもまんなか」への社会変革を進めるところである。「こどもまんなか」とは政策の対象としてこどもを真ん中に据えるだけではなく、政策決定プロセス自体もこどもの意見を聞いて、こども中心に変えていくということでもある。
  • これまで我が国では、政策決定過程において、こども・若者の意見を十分に聞いているとは必ずしも言えない状況。大変重要、かつ大胆なチャレンジになると思うが、しっかりと取り組んでいきたい。
  • 私自身も、今後こども基本法に基づく「こども大綱」の検討に向けて、こどもまんなかフォーラムを開催し、こどもや若者から直接意見を聴いていく。このフォーラムの内容を広く社会に発信することを通じて、こどもや若者をはじめ、大人の方々にも、こども・若者の視点に立った政策決定の重要性を知っていただきたいと考えている。
  • 先日「こども政策の推進に係る有識者会議」に出席したが、その場でも「こども・若者」にいかに議論に参画していただくかということについて、大変重要な知見をいただいた。意見を言うためには心理的な安全性を十分に確保する必要があること、校則をはじめとする身近なテーマから若者たちに参加をしてもらって参加をすることの有用性を感じてもらうことなど、学ぶことが多かった。
  • みなさんと一緒に学び、議論をして、これまでになかったような政策決定プロセスをこども家庭庁で実現していきたいと思っている。この会議でもみなさんに闊達に議論いただくことを期待している。

2. 前回の検討委員会での指摘事項について

事務局より、資料1について説明があった。続いて、内閣官房より、資料2・資料3の内容について説明があった。主な意見と回答は以下の通り(順不同)
(資料2について)

  • フィードバックをしたということだが、こどもたちの反応はどうだったのか。また、SNSで動画を使って今後発信していきたいということだったが、こどもや若者が一番見るのは Instagram と TikTok らしいので、こども家庭庁でもアカウントを作ってはどうか。
    • フィードバックについてはこれまでの取組が不十分という課題感としてご説明した。今後実施する際は、しっかり フィードバックをしていきたい。また、大人向け、世の中に対しても、こどもや若者の意見を聴くことの重要性を訴えていきたいと考えている。(内閣官房)
  • 行政が何かを進めたい時にこどもの意見を聴くことが多いが、行政の枠組みに入らない意見が聴かれないことになる。こども家庭庁設立後は、省庁横断で解決すべき課題や担当が決まっていない課題に対して対応することも検討する必要がある。また、行政が設定したテーマに答えるだけでなく、こどもから声をあげ、提案できる形も必要だと考える。
  • こどもたちから聞いた意見が具体的にどのように反映されたのかというリスト、一覧表を作成していただきたい。また、こどもたちにどのようなフィードバックやフォローをしたのかについてもリストにまとめてもらえると今後の参考になる。

(資料3について)

  • モデル事業に関して、<公募>と<出向いて意見を聴く>により、意欲的に意見を言いたいこどもと声をあげにくいこどもの声はある程度反映できそうであるが、その間にいる、政策に対して意見を言うことに特段興味・関心がない多くのこどもの意見が把握されにくいのではないか。一つの提案として、児童館や放課後児童クラブ等、日常から多くのこどもが過ごしているこどもの居場所でヒアリングを行うことができないか。また、SNSやweb アンケートの周知についても、児童館や放課後児童クラブへの協力の打診を検討してはどうか。
  • 令和5年度以降の課題の中に、保育園・幼稚園・小中高校などにおけるこどもの参加(学校を介した参加を含む)について触れなくて良いのか。今年度の事業に含めることは難しいが、来年度の課題の中には含めても良いのではないか。
  • ファシリテーターの養成について、ゼロから養成することも重要であるが、ファシリテートを担える人材は既に地域にいるのではないか。例えば、児童館の児童厚生員や放課後児童クラブの放課後児童支援員はこどもの権利に関する研修も受けており、こどもの参加についても実践をしている。このような地域人材の協力も得ながらこども参加を進められないか。
  • 意見が出にくい層、意見を出す場に立ちにくい層に対しても十分な配慮が必要である。
    • 公募の際は関係省庁の協力も得ながら、様々なルートでモデル事業について知ってもらいたい。(内閣官房)

3. 諸外国の取組収集について

日本ユニセフ協会より、資料4の内容について説明があった。主な意見と回答は以下の通り(順不同)。

(取組事例について)

  • イギリスについての報告で、国連こどもの権利委員会に対して政府報告書を作成する段階でのこどもの意見聴取という事例があったが、総括所見が出た後の受け皿としても機能しているのか。また、その他の国でも同様に国連こどもの権利委員会の審査の時点でこどもの意見表明・参加の事例はあるのか。
    • イギリスのこの取組について、詳細は確認できていない。今年政府報告の提出があったと思うが、現時点ではこども政策担当大臣からこどもたちに対する「声を聴かせてくれてありがとう」というレターが公表されている程度。報告書を取りまとめる段階でこどもの参加があったのは確かだが、総括所見はこれから先の話と認識している。網羅的に把握しているわけではないが、こどもの権利委員会では、各国の審査において、あらゆる段階でのこどもの参加を重視している。国によっては審査の場でこどもが話したり、総括所見のこども版を作成するにあたってこどもが参加したりと、いろいろな段階で参加している事例があるということは聞いている。(日本ユニセフ協会)
  • ファシリテーターの役割は重要だと思うが、養成についてのアドバイスがあれば教えていただきたい。また、脆弱な立場のこどもたちの意見を聴くことが日本で課題になっているが、イギリスとスウェーデンに視察に行った際に質問したところ、両国でも同様の課題があるということであった。参考になるような取組があれば教えていただきたい。
    • 声をあげにくいこどもたちについては、別の手立てを設けている国が多い。同じような内容について、声をあげにくいこどもたちからも丁寧に聴くことによって、多様なこどもたちの意見を聴くことに尽きると思う。(日本ユニセフ協会)
  • 必ずしも日本が遅れていて海外ではうまくいっているというものでもない。声をあげにくいこどもたちについては訪問ヒアリングのような形態も試みられている。例えば、イギリスにはかつてコネクションズという仕組みがあり、丁寧に聴き取りをしていた。
  • スウェーデンの取組として、キャンププログラムに参加して仲を深め、楽しみながら声を聴く場面を作るということをしていた。また、声をあげにくいこどもに対しても、遊びやワークショップに参加してもらい、その中で声を聴くという団体もあった。
  • 町田市の市民参加型事業評価を初めて聞いたときは高校生には難しいのではないかと感じていたが、参加をした学生は「参加してみたら面白かった」と言っていた。そのような経験をしたことが、現在の自分の問題意識とつながっていると言っていたので、非常に良い取組だと思う。

(子どもにやさしいまちづくり事業(CFCI)について)

  • CFCI は素晴らしい取組で全ての自治体で取り入れるべきとも思うが、日本でCFCI に取り組みたい自治体がある 場合、財源をどうするのか。
    • CFCI の10項目の中に「こどものための予算を確保すること」という項目が明確に位置づけられている。各部署それぞれがこどものための予算を新たにつけるというよりも、CFCI を進める部署横断的な体制づくりを重視している。例えば道路を整備する際、「こどもの通学路に関係するかもしれないから、こどもの意見を聞いてみよう」とするなど、大きな予算措置を取らなくてもできることはある。(日本ユニセフ協会)
    • 昨年から5つの自治体が実践自治体として取組を始めている。新たにCFCIに取り組むことを決めた自治体には、申請書を提出いただき、現状の取組をチェックリストで確認することや体制づくりから始め、2年程度の準備期間、第三者評価を経て3年目から本格的に実行していただくことを考えている。CFCI の実践にあたり、 自治体から日本ユニセフ協会への費用の支払いはない。(日本ユニセフ協会)
  • CFCI について、自治体でチェックリスト作りをする際は、どれくらいユニセフが伴走してくれるのか。
    • 年間に 3,4 回の委員会を開催し自治体と有識者が意見・情報交換をする場を設けている。これにより、自治体のニーズに対応できている。(日本ユニセフ協会)
  • CFCI のやり方はHPで公開しているのか。ユニセフで自治体の取組に対して認証をしているのか。
    • チェックリスト等様々な資料を公開している。基本的にはまずは自治体に自己評価をやっていただき、その結果を公開して市民からも意見をもらうことを大事にしている。「子どもにやさしいまち」としての認証の形式は取っていない(ユニセフの基準に基づき子どもにやさしいまちづくりを実践していることを承認している)。(日本ユニセフ協会)

事務局より、海外の取組収集(文献、オンラインヒアリング等による情報収集)について資料5を用いて説明があった。 主な意見は以下の通り(順不同)。最終的な調査対象国の決定は、座長に一任された。

(調査事項について)

  • 2点検討してほしい。一点目は予算規模であり、意見を聴取する段階や反映する段階において、予算がどれくらい用意されているのかという規模感を知りたい。もう一点は、成果について KPI や目指す項目(意見を反映できたかや、経験したこどもが市民・民主主義の担い手として成長したかなど)を調査いただきたい。今後日本で検討する際に何をゴールとして考えるか、指標を検討するための参考になる。事業評価に結び付く KPI 以外にも、例えば、 日本では「自分は社会を変えられると思う」という項目に「はい」と答える若者の割合が低いということも言われており、そのような指標も成果として意識されているのか調査してほしい。
  • 調査対象国の社会背景についても把握しておくべきである。こども・若者だけでなく、市民参加が当該国でどれだけ根付いているか、民主主義がどれだけ肯定的に捉えられているのか、政府に対する信頼度がどれほどあるのかなどを把握してほしい。日本ではそもそもこども・若者の政府に対する信頼度や期待度が低いが、それは社会背景が異なることと関連がみられるかもしれない。

(対象国について)

  • 調査対象にアジアの国を入れることを検討いただきたい。例えば韓国では国の政策へのこどもの意見表明・参加の仕組み、自治体レベルの仕組み、青少年施設の中での仕組みといった重層的な仕組みがあると聞いている。
  • フィンランドや EU に関しては国内でも研究が進んでおり、既に視察や交流事業も多く行われている。本事業でそれらを深掘りするか、韓国のようにあまり国内に紹介されていない取組をこの機会に調査するか、本事業でどちらが望ましいのか検討いただきたい。
  • 福祉国家と日本では背景が異なるので、日本にとって必要な情報という視点は十分に考慮する必要がある。

4.モデル事業について

事務局より、資料6について説明があった。主な意見と回答は以下の通り(順不同)。最終的なモデル事業の設計については、座長と事務局に一任された。また、希望する委員はモデル事業に参加・同席することが座長より提案された。

(モデル事業の全体像について)

  • <全体像>のスライドで、図としては「広く公募し、こどもや若者から意見を聴く」取組に困難を抱えるこどもや若者も含まれるように見えるものの、説明を聞くと分かれているように感じた。「不登校のこどもや児童相談所のこどもには個別に聞くから良い」、「医療的ケア児については有識者からヒアリングするから良い」としてしまうならば問題である。 本来は医療的ケア児や不登校のこども、児童相談所のこどもでも自由にアクセスできる状況になっていれば、全員を一つの枠組みの中に含めて意見を聴けるはずである。現在のところはこうせざるを得ないということは前提にしておきたい。医療的ケア児から直接意見を聴くことは難しいと考えられがちだが、難しさは医療的ケア児の側ではなく、教育システムや医療技術、環境整備、人材育成などの課題である。それらが整備されるまでの間に限り、関係者・有識者へのヒアリングでやむを得ず代替させてほしいということがしっかりと伝わるようにすべきである。
  • ある種の課題に対しては、こどもたちこそがエキスパート(当事者)として意見を聴かれるべき存在でもある。

(実施方法について)

  • 公募すると、意見表明について意識の高いこどもの声が集まりがちである。結果的に、恵まれた家庭に育ったこどもの意見が集まりやすい可能性がある。親の経済状況や通学している学校が私立か、地域性なども含めて参加者のこどもたちの背景についても調査を行ってはどうか。それにより、モデル事業にどのような層が参加しているのか、日本社会全体と比べた時にどれくらい偏りが生じているかを検証することが考えられる。
  • オンラインのグループの人数について、社会的養護の全国交流会を実施した経験では、10人以下のグループで同じテーマで45分2回実施しても時間が足りないと感じた。意見を出すことはできるが、フォローに回ることができなかった。
  • こども若者総合調査で web 調査と紙での調査を併用したところ、小学生でも回答の半数以上が web 調査で寄せられており、デジタルに対する抵抗感は大人と今のこども達は異なると感じた。また、調査結果についても web と紙で大きな差異は見られなかった。
  • 「意見」だけが目的化してしまうと、こどもたちの自由な発想や経験を共有しにくくなることが懸念される。編集や分析 は別途必要になるものの、意見に限らず色々な声や経験について広く聞いても良いのではないか。広く聞く場合と 「意見を聴くにはどうしたらよいか」と目的を絞って聴くのでは、聞こえてくる声の性質も異なるはずである。
  • 意見を言いたい、言える、言いにくいこどもは議論の対象になっているが、その間のボリュームゾーンのこどもについてあまり触れられていない。児童館や放課後児童クラブ等、こどもたちのいる場に行って意見を聴くようなことも必要ではないか。
  • 自分のPCやスマホも持っていないこどももいる。例えば、GIGA 端末も使って回答しても良いということができると参加ハードルを下げられるのではないか。
  • 保護者の許諾ページについて、こどもがなりすましで押すおそれはないか。一方で、保護者の同意を取らなければいけないという点が参加のハードルになる可能性もある。親の状況次第では許諾が得られない場合があるため、施設職員なども許諾できる方法も検討してほしい。

(SNS を用いた意見交換)

  • 中学生が対象に含まれているが、保護者向けの SNS リテラシー教育では、中学生はオープンチャットに参加できないようにフィルタリングが推奨されることもある。保護者の立場からは、LINEはこどもの友人とのコミュニケーションツールであっても、知り合いではない人と繋がる可能性があるとは認識していない可能性があるため、保護者への説明や同意確認はきちんと行うべきである。また、オープンチャットが抱えるこどもの健全な育成に関する問題点についても様々な指摘があるため、公的な機関が意見聴取のために使う場合は慎重な検討や説明が必要だと考える。
  • LINEのオープンチャットをこどもが使う場合は、意見表明をするよりも居場所やコミュニケーションを求めることが多いようにも感じている。オープンチャットを何のために使っているのか、利用しているこどもの意見も聞いた方が良いのではないか。
  • SNS を用いたモデル事業について、LINEオープンチャット以外のツールについて検討する余地はあるか。
    • こどものインターネットの安心安全な利用については、こども家庭庁が取り組む重要な業務のひとつである。報告書の中では当然、安心安全な利用という観点にも配慮することが大事ということについてはしっかりと記載をする。また、こども家庭庁設立後も、そのような観点で取り組んでいきたい。(内閣官房)
    • 本事業では、手法の比較の意味合いでテキストベースのチャットを「SNS」と表記している。SNSの媒体同士の比較検証については今回のモデル事業の検討範囲には含まれていない。今後こども家庭庁で本格的に取り組む際には課題になってくると考える。(内閣官房)

(今後の意見聴取のツールとしての SNS について)

  • LINE のオープンチャットの利用について、今回はいいが、今後、こどもの意見を聞くツールとして現実的なのか検討が必要。LINE のアカウントを持つことが参加の前提となるが、1人1台のデバイスを持っていること、自分専用の電話番号を持っていることが必要となる。他の SNS であれば兄弟や親のデバイスを借りて参加することができる。
  • 今後に向けて、LINE 以外でどのようなツールがあるのかぜひご提案いただきたい。(内閣官房)
  • 匿名性があってよく若者たちがディスカッションに使っているのは Discord。あるセグメントの若者には利用が多いと思われる。
  • 中学生については LINE オープンチャットよりも Discord の方が利用率は高いかもしれない。一方で、Discord は LINE オープンチャットと比べて管理が難しいという懸念もある。
  • Instagram と TikTok の利用率が高い。ダイレクトメッセージのやり取りになるので 1 対 1 のコミュニケーションにはなってしまうが、それでも構わないのであれば検討の余地があると思う。
  • SNS では Instagram、Twitter、TikTok の利用率は高いが、国の事業のために国がアカウントを作ってもほとんどフォロワーがいない。行政のアカウントをフォローしているこどもは少ない。国が情報発信してもほとんど届かず、国の 意見聴取や広報に SNS が機能していないという状況がこれまでに起きている。既にフォロワーがいるインフルエンサーや中高生がフォローしている団体等と連携して実施する方法も考えられるのではないか。
  • インフルエンサーは特定のゾーンの人を対象にする性質もあるため、そのインフルエンサーに意見が引っ張られる懸念がある。
  • SNS 上で意見を聴くのではなく、web アンケートのリンクを SNS に貼るなど、あくまで窓口・入口として SNS を捉えても良いのではないか。
  • web 広告に予算を割くことも重要である。フォローしている人にしか届かないような発信の仕方をせず幅広く意見を 聴取することが重要である。

5.自由討議

  • こども・若者の参加・参画について、今日のような議論が日本で始まったことに感動している。これまでヨーロッパや海外で起きていたことについて、本格的に国内で議論が始まったのだと感じている。
  • この会議も含めて、世論を喚起するのが大事だと考える。この場だけで議論をしていても限界があるため、国内で研究が進むためにどうしたら良いかの検討や啓発も併せて本事業の中で取り組む必要があると考えている。
  • こどもの立ち位置やこどもに対する考え方が変わってきたと感じる。これまでこどもは概して保護の対象と考えられてきたが、こどもが社会の参画者として並立的に大人と仕事をするという発想は、過去にはあまりなかった。それが、現在では政策的な問題、政治的な問題を含めて検討の俎上にあがってきている。こども観、「こども」の見方を変えなければならなくなってきていると改めて感じた。

以上