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こども政策決定過程におけるこどもの意見反映プロセスの在り方に関する検討委員会(第3回)

概要

  • 開催日時:令和4年12月16日(金)14時00分から17時00分まで
  • 開催形式:オンライン・対面開催

議事

  1. 実施結果報告:国内先進事例調査、諸外国の取組、有識者ヒアリング、モデル事業(概要報告)
  2. 報告書について
  3. 議論

配付資料

議事要旨

1. 開会/自見政務官挨拶

  • こども基本法制定に関わった者として、こどもの意見反映の重要性を訴えてきた。
  • 行政で実現に向けて進められ、こうした場で丁寧な議論を進めていただいていることに感謝している。
  • こどもの声をしっかり聴きながら、こどもたちを対等なパートナーとし、その声を聴いていきたい。

2. 実施結果報告

事務局より、資料1、資料2-1,資料2-2、資料3、資料4の内容について説明があった。続いて、内閣官房より、「就学前のこどもの育ちに係る基本的な指針」に関する有識者懇談会やこどもの居場所づくりに関する調査研究、こども政策の推進に係る有識者会議における、関連内容について報告があった。

各委員からの主な意見と回答は以下の通り(順不同)。

  • 国内外の失敗事例について調査で聞いていれば共有してほしい。
    • 国内調査では、小学生でのグループワークにおいて、グループワーク自体難易度が高い上に、テーマ設定も任せたところ混乱が生じたことがあり、運営側がテーマを設定するところから始めるよう変更したという事例があった。(事務局)
    • 海外調査では、フィンランドのオンラインプラットフォームについて、自由に意見を言う形式で設計したところ、限られた若者だけが発言する場となり、広がらなかった。また、発言内容もマクドナルドを近所に作ってほしい等、政策に影響を与えるような議論にはならなかったとの話があった。(事務局)
    • 海外調査で課題として聞かれたのは一般の若者に対するコミュニケーションである。アイルランドではユースカウンシルが全国の自治体に設けられており、12 歳から 17 歳のこどもや若者が熱心に取り組んでいることで知られているが、20 年続けている良い取組であっても、必ずしも若者層に知られていない。そこで、SNS を含めたコミュニケーション担当を採用してこれから取り組む予定という説明があった。(事務局)
    • 有識者ヒアリングでは、事務局側の大人が張り切って企画をしてイベント自体は大いに盛り上がったものの、振り返ってみると企画の場にこどもがほとんど参加しておらず、大人主導の取組であったことを反省したというエピソードを聞いた。(事務局)
  • 様々なヒアリングでの共通した意見や取組、相反する意見や取組について紹介してほしい。
    • モデル事業についてはまだ分析途中だが、こどもや若者の意見として共通していることは、意見の言いやすさは相手側の姿勢によるところが大きいこと。異なる点は、意見交換のグループの年代について、自分に近い年齢の方が話しやすいという声もあれば、様々な世代の意見を聴いた方が多様なアイディアや意見が出やすいという声もあった。また、同じ場に知り合いがいた方が言いやすいという意見と、話しにくいという意見があった。意見を伝える方法について、オンラインの方が言いやすいという人もいれば、対面の方が言いやすいという人もいた。(事務局)
    • 国内調査では、意見をどこに反映するか、あらかじめ設定している場合と、内容に応じて様々なところに反映させる場合があった。目的による違いという印象である。(事務局)
    • 海外調査について、すべてのこどもが意見を聴かれるべきというビジョンを共有することが国の役割だとして国家戦略や政策フレームワークを策定している点が共通している。また、こどもや若者をその経験においてエキスパートとして意見を聴く場が設けられているという点も共通している。加えて、声をあげにくいこどもについての課題意識を持っており、声が聴かれにくいこどもの属性を明らかにして取組を進めている点も共通している。異なる点は、アイルランドやフィンランドは地方自治体や市民団体が主な役割を果たしているが、ニュージーランドは調査した範囲では国がリーダーシップをとってこども参画を進めているようである。また、アイルランドのようにこども参画
      においてコアの年齢層がある場合とそうでない場合がある。(事務局)
  • 就学前のこどもの意見を聴くことは重要だと感じた。特に、無理に意見を言わせるのではなく、こともが声や気持ちを表明するのを大人が「待つ」ことが大事だと思う。
  • 国内外の取組において、こども参画の影響や参加したこどもの変化について評価指標が設けられているのか。
    • 海外調査については、資料 2-1 の各取組の個票に「政策への反映や参画の影響」欄を設けているのでご参照いただきたい。若者議会については、調査対象国のレポートを確認したが、民主主義教育の一環での教育目的と位置付けており、政策への反映を目的とはしていないようである。若者議会単体の取組による変化については評価指標の設定はないが、国家戦略の評価指標にはこども・若者参画や意見表明に関連するものとして、アイルランドは市民参加率や社会、環境への意識、ニュージーランドでは他者のための活動割合や総選挙の投票率が含まれている。(事務局)
  • こども・若者の意見表明や参画について、市町村からボトムアップで聴いていく在り方と、国が直接アンケートなどで聴く方法があると思うが、日本にはどういった仕組みでやるのが望ましいと感じているか。
    • 国内調査では、市でも県でも同様のことに取り組んでいるというケースがあった。活動の重複感があり、こどもの視点では同じことを何回も聞かれるという課題を感じた。(事務局)
    • 海外の事例で、学校や関係団体など既存のチャネルを通じて案内していることは、参考になるのではないか。(事務局)
    • モデル事業で行ったチャットを活用した意見収集では、1週間という時間をかけて意見を聴いた。その場で考えをまとめる必要がなくじっくり考えを整理できることで話しやすいこどももおり、意見表明の場の選択肢として有用だと感じた。(事務局)
    • 有識者ヒアリングを踏まえると、多様な意見表明の方法があるべきだという点に尽きる。ひとつの正解があるというよりも目的に合わせて様々な方法を選択できることが大事である。その上で、日本の場合は意見を言う土壌がまだ十分でないという背景があるため、身近な場で日常的に意見を言う、聴かれる、反映される機会は増える必要がある。(事務局)
    • モデル事業に参加したこどもから、こどもの意見表明の取組をできている学校とできていない学校があるが、全国で標準的にできるようにするのが国の役割ではないかという意見が挙がっていた。(事務局)
  • こども・若者会議が全国的に広まると良いと感じた。また、ニュージーランドの Hiver の例のように、若者に政策のことを楽しく伝える人たちが日本にも増えると良い。
  • オンラインプラットフォームや啓発メディアとして、アニメや漫画などが活用されると良いのではないか。
  • ファシリテーターについては基準などがあると良いのかもしれない。改正児童福祉法の「意見表明支援員」は誰でもなることができるが、イギリスでは意見表明支援員(アドボケイト)の全国基準があると聞いている。同様に、「こども・若者の声を聴くファシリテーター」の基準があることが大事だと思う。
  • ファシリテーターの資格化に関しては国内でも様々な意見があるようだ。

3. 報告書について

事務局より、資料5-1、資料5-2の内容について説明があった。

4. 議論

(各調査結果のまとめ方について。特に、自治体が実施する上で参考になるノウハウ共有の視点)

  • 報告書の読み手の一つとして、地方自治体の職員が想定される。「こども基本法によりこどもの意見反映が義務付けられるが、自治体で何をやるべきか」を考えて報告書を読んだ時に、何から始めれば良いかが分かる、参考になる報告書になると良いのではないか。
  • こども参加に取り組めていない自治体にとって、先進事例が羅列されるとハードルが高くなるだろう。報告書の冒頭に、こどもは誰でも意見を表明する権利があること、大人の在り方を変えていくことを書いてはどうか。
  • 失敗事例のエピソードがあると取組のハードルが下がると思うのでコラムのような形で記載するのはどうか。また、先進事例の職員の葛藤や、異動への対応等の経験が共有されることも有用ではないか。
  • 国内事例について、担当課の情報があると良い。自治体にとって他の自治体ではどの課・係・担当がこども参画を担当しているのかは参考になる。
  • 様々な形で報告が発信されるべきと考える。イラスト中心のものや、紙だけでなくアニメ・動画を用いた報告もあると良いのではないか。

(提言について:意見聴取)

  • これまでの調査結果を聞いて、①参画や意見を聴く場にファシリテーターを置くこと、養成すること、②デジタルを活用すること、③多様な参画の場を作る、参加のグラデーションを作ることが重要ではないか。
  • 児童の権利条約第 12 条の意見表明権の「意見」とは「views」であって「opinion」ではない。まとまらなくても、安心して思っていることや感じていることを言えることが大切。
  • こどもと若者を一緒にして検討して良いのかは議論が必要ではないか。
  • 意見を言う権利だけでなく、聴いてもらえる権利も大事である。聴いてもらう安心感について書き込むと良いのではないか。
  • 意見を聴こうとする聴取者とこどものパワーバランスの影響も大きい。専門家の中にいきなり立たされて、心理的安全性が保たれていないこともある。
  • 特定のテーマにおいて当事者がある種の専門性を持つという視点もあり、当事者が尊重されることが重要である。
  • こどもの意見表明が大事だという考えを専門家や関係者だけでなく一般に広める必要がある。
  • こどもが意見を言えるという前提で話が進んでいるが、こどもが意見を言えるようになるための取組についても報告書に含める必要がある。
    • こどもが安全に意見を言えるような能力開発の機会、日常の中でこどもが安心して自分の考えを言葉にしたり他者と言い合えたりすることが重要である。
    • 障害を持つこどもが意見を求められても意見を言いづらい背景には、障害があるために日常的に意見を言う場がないという側面もある。
  • 障害児、医療的ケア児については、本調査では体制上や技術的・時間的な制約の都合上、当事者へのヒアリングを行うことが難しく、有識者・関係者へのヒアリングにせざるを得なかったという面がある。その点に言及がないと、報告書が全国に広まった時に、「こういう人たちは有識者・関係者から意見を聴くだけで良い」という誤解が広まることを懸念している。今回の調査やモデル事業の中で「何が聴けていないのか」についても報告書で触れるべきだろう。

(提言について:聴いた意見の反映やフィードバック)

  • 意見を聴いたからには大人には応答義務がある。意見聴取は意見の反映やフィードバックまでセットであると記載すべきである。
  • 国内事例や海外事例の政策反映の実例も記載してほしい。
  • こどもは国への意見のつもりで発言していてもその内容を実行するのは自治体であることもある。意見を聴く側(国)が自治体に繋ぐこと、両者が連携・調整することが必要だろう。また、反映できなかったこどもの意見についても、その理由や検討内容を伝える必要がある。
  • 国がこどもの意見を聴くと、学校に関係することなどが出てくると想定される。関係省庁との調整などを報告書でどこまで扱うのか検討が必要だろう。
  • 政策に直結しない声が集まった時に、政策にこだわってこどもの声が振り落とされることを懸念している。政策に直結しない声であってもその背景を考えるなど、広く政策決定に取り入れる考え方が必要ではないか。
  • こどもや若者の意見を集約して政策に反映するというやり方もある。
  • 政策に反映する際の評価方法も論点に加える必要がある。インパクト評価は事業ごとに異なると思うが、意見反映の評価ではプロセスの評価も必要ではないか。イギリスでは、事業終了後に、参加したこどもたちに「自分の声がどれくらい聞かれたと感じたか」を聞いているケースがある。
  • 評価は大事だが、独り歩きすると取組のハードルが上がってしまうという側面もある。バランスについては留意が必要である。

(提言について:こども家庭庁で今後取り組むべき事項)

  • こどもの意見反映は継続的な調査研究が必要である。今回の調査で積み残されたことや見えてきた今後の課題についても報告書に記載があると良い。研究者や学生にとっても参考になり、研究が活発になるのではないか。
    • 第2回の会議資料において本調査研究の到達目標として示した通り、本調査研究ではどうあるべきか国に提案するとともに今後の課題を示すことにしている。今年度の調査では様々な制約で聴けなかった声もある。ステップバイステップで今後も調査を積み重ねていく。令和4年度の補正予算では「多様なこども・若者の意見反映プロセスの在り方」、「ファシリテーターの養成プログラム作成」、「行政職員向けガイドライン作成」についての調査研究経費を確保した。(内閣官房)
  • こどもの意見反映に関するこども家庭庁の体制(人員・予算)をいかに充実させるかが重要である。
  • 重度障害のこどもはかなりのマイノリティである。意見を言えるための技術開発について支援が必要ではないか。
  • 学校現場で児童の権利条約についてあまり知られていない。教職課程コアカリキュラムに入るだけでも大きく変わると思う。
  • 報告書で記載することではないかもしれないが、児童の権利に関する条約について文部事務次官通知が 1994年に出されているが、こどもの意見表明権についての解釈が限定的になっているのではないか。検討してもらいたい。
  • 並行して行われている「未就園児」や「居場所」の調査研究におけるこどもの意見の反映はどういう扱いになるのか。

(こども向け版の報告書作成について)

  • 概要版の形式の方が Q&A 方式と比べて、こどもだけでなく、自治体職員等にとっても理解が進みやすくて良いのではないか。
  • イギリスの若者支援サービス「コネクションズ・サービス」のホームページは知りたいことから読める形式になっている。そのような仕組みもあると良いのではないか。
  • 各地のこども会議などの場では読まれるような工夫があると良いのではないか。
  • 動画などのメディア、こどもが使用する物(下敷きなど)、すごろく、学習ノートなど、様々なアイディアが考えられる。

(モデル事業の分析や取りまとめについて)

  • モデル事業に参加してみて、媒体によってコミュニケーションの形が変わってくると感じた。
  • 本調査研究のモデル事業は「実証事業」の位置づけである。明らかになってきた課題を抽出することが目的。今回のモデル事業が成功したかどうかという1回限りの結果としてまとめることは避けてほしい。
  • こうすると失敗するというネガティブリストがまとまっていると使いやすい報告書になるのではないか。「ファシリテーターを入れた方が良い」よりも「ファシリテーターを入れないとこういう失敗が起こる」という書き方ができると読者の参考になる。

(自由発言)

  • この分野においては今回のような網羅的な調査は初めてである。報告書公表で調査終了ではなく、その後も継続的に議論や勉強会のようなものができると良い。ヒアリングを受けた有識者も期待していると聞いている。
  • 一般的に報告書の読者は限定的になりがちである。多くの人が読まなければこどもの意見反映は進まないため読んでもらうための工夫が必要である。

5. 自見政務官より閉会の挨拶

  • 民主主義の基盤としてこどもの意見、opinion だけでなく views も含めて意見を言いやすい環境を整える必要があるだろう。こどもの意見を聴くだけでなく、聴いた結果を反映し、聴いた後の決定を含めたプロセスを透明化することが重要。
  • 学校教育との連携、また、民間も含めて、こども基本法の下で、機運を高めていく必要があるだろう。

以上