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こども政策決定過程におけるこどもの意見反映プロセスの在り方に関する検討委員会(第4回)

概要

  • 開催日時:令和5年2月3日(金)14時00分から16時30分まで
  • 開催形式:オンライン・対面開催

議事

  1. 実施結果報告:モデル事業
  2. 報告書骨子案
  3. 議論

配付資料

議事要旨

1. 開会

事務局より開会の挨拶。今後は、事務局にて進行することとする旨説明。

2. 実施結果報告

事務局より、資料1-1の内容について説明があった。続いて、内閣官房より、資料1-2の内容について説明があった。各委員からの主な意見と回答は以下の通り(順不同)。

(場の設計について)

  • モデル事業に参加したがその場で言いきれなかったことについて、事後に伝えられる仕組みは用意したのか。
    • 事後フォローまで今回は行っていないが、モデル事業終了後のアンケートは実施している。意見交換の際に言いきれなかった内容を書く参加者もいた。また、意見交換終了後のファシリテーターや板書係との雑談の中で参加者が本音を語る様子も見受けられたため、そのような場の設計や事後のフォローについては検討する必要があると認識した。(事務局)
    • こどもと関わる団体等との日ごろからのつながりが重要。
  • 現在「こども向けファシリテートの専門家」はそれほどいない。今後は、養成、自治体職員やこども支援専門職への研修に加え、ファシリテート実施後にこどもの権利の視点からの振り返りを行って力量形成していくことも必要である。
  • 児童館からオンラインで参加していた様子を見た他のこどもが、「自分も参加したい」と興味を示すケースがあったという。今回の取組のインパクトは大きかった。
  • オンラインでカメラオンを強制しないという事務局の配慮に同意。顔を出さずに参加できること、後から発言を取り消せることは重要。
  • こども家庭庁についての大事な説明などをする場合は、視覚で分かるような資料があると良い。周りの子に伝えたかったのにと、紙の資料がないことを残念がる参加者もいた。

(若者について)

  • 資料 1-1 の課題(p.26)にも言及されているが、20 代の参加者は「こども」と言われて自分のこととは捉えなかったのではないか。
  • こども(18 歳未満)だけでなく、若者の意見も聴きたいので、仕組みの設計上は「こども」と「若者」を分ける必要があると思う。

(多様性への配慮、インクルージョンについて)

  • ジェンダーへの配慮は大事ではないか。男女一緒に参加することで意見が言いづらかったという声も出ていたので、今後の検討に取り入れてほしい。
  • ファシリテーターには「聴く」という高度な相談援助技術が求められる。また、特定の属性の人から話を聴く上での必要な配慮はそれぞれ異なるため、個別に習熟を図る必要がある。さらに、同じ経験をした人同士だと話しやすいこともあるため、今後はそのような場を設けられると良いし、こどもがファシリテーターを決められるような仕組みもあると良い。
  • 対面やオンラインの会に参加したがその場では意見を言えなかったこどもがいたという話を聞いた。その子は、自身が公立校に通っていることをグループ内の他の参加者に驚かれたことで、「自分は場違いかもしれない」と感じて発言しにくくなってしまったという。多様な参加者がいる点について、大人が配慮する必要があるのでは。
  • こどもから「身近に話を聴いてくれる人がいる場」という発言があった時に、ファシリテーターが「おうちだね」と先入観で発言しているケースがあった。家庭の状況やこどもの背景は様々。多様なこどもが参加していることについて、ファシリテーターは意識を払う必要がある。ファシリテーターの切り返しや言葉が、時としてこどもの声を奪ってしまうこともある。
  • Web アンケートは英語版もあると良かったのではないか。

(Web アンケート(公募)について)

  • 暮らし向きの結果(資料 1-1 p.62)について、一般的な統計では中の下と答える日本人が多いということを見たことがある。今回は中の中以上の回答者が多い。回答者の暮らし向きの属性に偏りがあった可能性について検証が必要では。
    • 一般的な統計の傾向と比較してどうかという点は改めて確認して対応する。この質問については、意見表明権の認知度や意見を伝える意欲、意見を伝えやすい方法や手段等とのクロス集計を行うことで、暮らし向きによる回答傾向の差があるかを検証する目的があった。(事務局)
  • 国や自治体に意見を伝えたいとした割合が、既存調査と比べると非常に高い傾向があるように見える。意見を言いたい人たちが集まったのでは。(資料 1-1 p.65)
    • この結果がそのまま公開されると「日本には声をあげたいこどもが多い」というメッセージを与えかねない。公開の際には、参加者の層に一定の偏りがあることが考えられるという点についても触れるべきである。

(個別に出向いて意見を聴く取組)

  • 個別に出向いて聴く取組について、丁寧な設計や工夫、配慮をしたことでよく聴けていると思う。今回は直接声を聴くことができず有識者ヒアリングとせざるを得なかった属性のこども・若者についても、丁寧なヒアリングや専門家との連携ができれば、次のステップでは出向いて意見を聴けるようになるのではと期待している。
  • こどもたちの意見が文字にまとめられているが、出向いて意見を聴いた職員として、こどもたちが実際に感じていることとの間にはギャップがあると感じる。実際、聴いた意見の確認・フィードバックのために後日再訪した際には、こどもから「ちょっと違います」、「こうしてほしい」と言われることが多々あった。「views」が「opinion」になるプロセスで、こどもたちが言葉にする段階で削がれるもの、我々が文字にする段階で削がれるものがあり、様々な要因でこどもの声は変質していると考えられる。工数はかかるが、一回限りで意見を聴くのではなく、対話を重ねて合意を形成していくことが大事であり、また意見の変質の過程にも焦点を当てていけると良い。
    • 出向いて意見を聴く取組は、手間暇はかかったが実施の意義はあった。多様な声を漏らさず聴くための取組の検討や実践については別途予算を計上しており、こども家庭庁の元でさらに推し進めていきたい。(内閣官房)
    • こどもから聴いた意見をどう報告するのか、文章にまとめるのかについては、苦慮した。こどもたちは文章になることを考えて話しているわけではないため、それをどう文章にしていくのかは悩ましい。また、後日発言内容の確認を求めた際には「他のこども達が読んで気にするかもしれない」と表現の訂正・削除を求められたこともあり、聴いた意見は丁寧に取り扱う必要があると改めて感じた。(内閣官房)
    • 「こどもの政策にこどもの意見を反映すること」が議論の出発点であるが、意見を反映させる大前提として、こどもが意見を形成していくこと、参画していくことの意義を強く感じた。意見を聴いた結果を見せることだけを意識していると、手間暇がかかる割に見える成果が少ないように見えてしまうが、結果を示すことに限定せず、こども・若者の声を聴くことそれ自体の意義を共有していくことが大事ではないか。また、昨年秋に発出した自治体向け Q&A(※)にも記載しているが、特別な場を常にしつらえるというより、日常の施策の中で現場に赴くといった機会に、積極的にこどもや若者からも声を聴くという取組も考えられ、手間暇のハードルを一つ下げるアプローチでもある。(内閣官房)
      ※https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kodomo_seisaku_suishin/ikenhanei/index.html

(周知について)

  • 意見を届ける場について、それを知らない、知っていても意見を届けにくいという側面がある。こども家庭庁の SNS による広報を通じた意見募集やパブコメの文化が広がると良い。

(全体)

  • 本事業の整理・分析は、こども家庭庁としてどう受け止める予定なのか。
    • この後議題として取り上げるが、報告書第6章にしっかりと書かれる内容。報告書は、それを読む他省庁や自治体の方にも、重要なポイントや留意点を知ってもらえるようにしていく。(内閣官房)

3. 報告書骨子案第 6 章(政策決定過程におけるこども・若者の意見反映のあり方)について

内閣官房より、資料2の内容について説明があった。各委員からの主な意見と回答は以下の通り(順不同)

(全体)

  • 全体像がややつかみにくいため、一連の流れが分かるよう、冒頭にイラスト等で全体像を示すと良いのではないか。
  • 今は意見を聴く取組も場当たり的なので、政府としてこの取組の全体像をどう作るかという点も考えなければいけない。スウェーデンでは傘のように組織で全体を覆う仕組みがあるが、それを日本でもやるのか。
  • こどもの声を聴くことは多くの部署、省庁にまたがることである。以前の委員会で提示したプロット図(第2回検討委員会参考資料:土肥委員提出資料の7頁)のように、意見聴取・反映には身近なことや都市計画なども含めて幅広い範囲が含まれることがイメージできるような図があると良い。
  • 哲学を記載するⅠのパートで大事なことは、法律の前提があること、社会の側が変わる必要があること。「大人社会の意識を変える必要があることを認識する」(資料 2 p.2)とあるが、もっと前に書く方が良い。
  • 権利学習の話に関連するが、意見を表明する権利だけに限らず、広くこどもの権利について学習の必要があると明記されるべきだと考える。パートⅠに含めても良いのではないか。

(意見聴取)

  • なぜこどもの意見を聴く取組を進めているのか、根拠法のことに限らず背景も書くと良い。こどもの声が聴かれないことで、日本で何が起こっているのかを書くことで、調査研究の意義を具体的にイメージしやすくなるだろう。千葉県野田市では、声が聴かれなかった結果虐待死が起きた。今後、自治体職員が報告書を読む際に、こどもの意見聴取・反映について、義務だから実施するというのではなく、「やるべき大事なことだ」と思えるような内容にしてほしい。
    • 社会を変えられると思っている若者が少ないことや、幸福度が諸外国に比べて低いことも背景に含められると良い。
  • パート II は政策について意見を聴く多様な機会と方法を設けることについて触れているが、その前にまず、日常からこどもの声を聴くような文化を育むことが必要なのではないか。周辺参加も含めて重要であること、意見表明は権利なのだと伝える必要があること、意見を言う・参加する権利を行使できる場が必要であることについても盛り込むべきではないか。
  • 「聴く」以前に、「問いの設定を誰がするのか」ということが入るべきである。問いの設定の場にこども・若者がいなければ、結局大人の目線になってしまう。
    • モデル事業では「意見が言いやすい仕組み」にフォーカスしたが、参加者からは「こども家庭庁に言いたいことがあったのに」という声も聴かれた。こどもたちが自分でテーマを決められる仕組みも必要だと感じた。(事務局)
  • 「大人が聴きたいテーマについてだけでなく」とあるが、「大人が聴きたいタイミングだけでなく」という点についても触れられると良い。大人が聴きたいタイミングは必ずしもこどもが意見を言いたいタイミングではない。24 時間 365 日いつでも伝えられるような仕組みも必要なのではないか。
  • 都市計画や大型の公共施設をつくる時にも、こども・若者の意見を聴いてほしい。ロングスパンで使うものをつくるときに、将来的な利用者となるこども・若者の意見を聴くのは当たり前だと思う。
  • こども家庭審議会へのこども・若者の参画について(資料 2 p.19)、「とりあえず傍聴させる」というような形だけの参画にならないよう、例えば委員として登用するなど、と具体的に例示すべきである。
  • モデル事業はおそらく想定以上に手間暇がかかったのではないか。こどもや若者の意見を丁寧に聴くこと、また取組の広報には時間やお金がかかることであり、必要な資源を投入すべきだということも今回の学びとして盛り込み、他の省庁にも伝える必要がある。
  • 困難な状況に置かれているこどもの場合などは特に、政策提言のためのアドボカシーだけでなく、今の状況を変えてほしいという要望への対応もあるだろう。政策には反映されるかもしれないが結局自分の状況自体は改善されない、ということがないよう、政策提言とソーシャルワークとは両輪で対応を考える必要がある。
  • こども・若者を分けて聴く取組と、地続き的に聴く取組、両方必要だと思う。例えば未就学児と若者は一緒には語れない。
    • こども・若者を分けるという意見もあるが、例えば審議会委員就任時に「若者を委員にすれば良い」と安易に考えないようにしてほしい。こどもの委員も置くべきと書いても良いのではないか。
  • モデル事業ではたくさんの大人が Web アンケートに回答したケースや施設の方が意見を言うケースがあったようだが、大人も国に対する意見を言えていないということだろう。こどもを取り巻く大人が意見を言えるようにするにはどうするかという点も提言に盛り込めると良い。
  • こどもの意見の聴取や反映の取組を自治体や省庁で進めるために、こども・若者と関わる行政職員の理解や意識をどう醸成していくか、という点は重要ではないか。

(一定の配慮が必要なこどもや若者)

  • 声をあげにくいこどもや若者の例示(資料 2 p.11)として「海外ルーツ」も含める必要がある。
  • 「一定の配慮が必要なこども・若者」「声をあげにくいこども・若者」「脆弱な立場にあるこども・若者」など、多くの表現が使われているが、使い分けの意図があるのか。統一できると良いのでは。
    • アイルランドでは、「構造的に声が聴かれにくい人たち(seldom heard)」という定義に一本立てし、それに該当する例を 30 以上示している。(事務局)
    • レッテルを貼ってしまうことは良くないと思う一方、読者がイメージを持ちやすくする必要があるとも考えており、悩ましい。(内閣官房)
      • 「脆弱な」はこどもたちが主語。「声をあげにくい」「声が届きにくい」であれば受け取る側が主語になるので、そうした配慮ができると。
      • 資料 2 p.11 で「等」とまとめられている属性には、言語が違うこども、災害に遭ったこども、失業している子、触法少年、へき地在住なども考えられる。「障害」も一口にまとめられているが、種別は多様。どこまでを「等」に込めるのか。LGBT も Q+まで含めるのか。できるだけ想像しやすいように示されると良い。
  • 今回の調査では有識者に聴くにとどまっているこどもや若者についても、直接聴くことに向けて何をしていくのか、できるだけ具体的に、次のステップを想像できるような内容を記載できると良い。

(政策への反映)

  • 「政策に反映する」とあるが、どこまでが政策に含まれるのかが分かりにくい。例えば学校の校則は含まれるのか。校則は含まれるべきだと考えるが、「政策」と書かれていると、学校の先生や教育委員会は含まれると考えないだろう。
    都市計画や公園、通学路といった身近なことも政策に含まれるはずである。それが分かるような書き方をしてほしい。
  • 本調査研究とこども大綱との関連、またこども大綱の作成に当たってもこどもの意見を聴くということをしっかり記載すると良いのでは。

(評価)

  • プロセス評価だけでなく、そもそもどのような評価指標を策定するべきかについても重要な点ではないか。

(関係者連携、他省庁や地方自治体での取組に向けて)

  • 他省庁や学校との連携についてもきちんと触れるべきではないか。
  • 自治体が今後策定する「こども計画」について、より実行力を高めるため、策定の段階に地域の NPO やこども・若者が参画することも盛り込んでほしい。
  • 各自治体におけるファシリテーターの育成は難しい課題である。育成すると書かれているが育成できるのか疑問もある。実際にはそれぞれの地域でファシリテートを担ってきた団体に依頼するケースが多いのではないかと思われるため、ファシリテーションについて継続的に振り返りや改善、研究を行う仕組みが必要ではないか。
  • 地方自治体でこども若者担当の部署をどう置くのかについても考える必要がある。市民協働を例にとると部局ごとに市民協働推進員を置くケース、市民協働課を置くケースの両方ある。こども・若者担当の場合はどのような形を目指すべきか、方向性を示せると良い。
  • 委託事業者の選定基準について具体的に書いてほしい。今後、自治体がこども計画を策定する際や指定管理者制度などプロポーザルを行う際の要件に、「こども・若者の参画に取り組む団体との協働」を入れるなど、具体的に示すと良いのではないか。地域の団体や実践者との連携は今後より必要になってくる。
  • こどもと関わる大人に対する周知や研修機会の提供(資料 2 p.20)の対象には、「法執行機関関係者」も入れるべきでは。

(その他)

  • 報告書にはこどもや若者の声が掲載されると思うが、大人のピックアップによるものである。多くの意見が掲載されているモデル事業実施結果の資料なども併せて読んでもらえるような仕掛けがあると良い。
  • 意見反映の取組に関して、こども家庭庁はいつ頃に何をするのか、具体的な計画が示されると良い。
    • 書けることについては書いていく予定である。(内閣官房)
  • 本事業は「聴く」ことに焦点が当たっているが、こども・若者の活動への支援も必要である(Voice だけでなくAction への支援)。尼崎市でスケートボードパークを作るための実証実験をとした事例など、活動から声になるという事例はある。声を聴くだけだと受け身な印象があるので、こども・若者が主体的に活動することに対しても予算等の面で支援されると良い。
  • この分野の研究をどう活性化していくかについても今後の課題として挙げてほしい。自治体レベルで研究会を設置する動きもあり、そうしたあり方も考えられる。
  • こどもの権利が侵害されたことを評価・検証、勧告できるような機関も本来必要ではないか。こども自身が異議申立てをできる仕組みが今時点ではない。踏み込んで書けるなら書いた方が良い。
    • こども基本法の立法過程では、その役割をこども家庭審議会が担うことが法案審議で話された。第一ではこども家庭審議会が担うことになり、まずはこども家庭審議会でしっかり行っていかなければならない。(内閣官房)
      • こども家庭審議会は権利侵害に対してこども自身が異議申し立てできる仕組みか。そうでなければ、例えばこども家庭審議会に具申できるような仕組みを置くべきだというようなことを本事業の報告書で書くことも考えられる。あるいは、こども家庭審議会に限らず、そのような機能を持った機関を置くべきだという書き方も考えられる。
  • 本調査研究での検討委員会委員の位置づけについて、事務局に対するアドバイザーとしての立ち位置なのか、こども家庭庁設立に向けて準備室に対して意見や助言を行う立ち位置なのか。アドバイザーの位置づけであれば踏み込んだことも言えると思うが、どこまでの期待がなされているのか。
    • 本検討委員会は調査研究内に位置づけられているため前者である。いずれにしても、本報告書が今後のこどもや若者の意見反映の議論・検討に当たってベースとなるものと考えている。(内閣官房)
    • 委員会の中で議論しきれなかったことについて、委員意見として報告書に書くことは考えられるか。
      • 委員意見を掲載する方向で、内閣官房と調整する。(事務局)
    • 行政の話と政治の話は両輪である。日本は被選挙権の年齢が高いためこどもや若者が政治に参加できない。この年齢を下げていく取組も必要だと思う。

4. 今後の予定、その他

事務局より、第 4 回検討委員会の議論を踏まえて調査研究報告書及び概要版、やさしい版の作成をすること、やさしい版についてはモデル事業に応募したこどもや若者から意見を募り、できる限り反映していく予定であることを説明した。

以上